575 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/12/09(土) 00:06:36
塞がれた進路、空中で止まるなのは、狙って飛び出したコスタス。
「くっ!」
迫るナイフは驚異ではない。
問題は、身体から次々と沸き立つ影だ。
一度沸き立った影は身体から離れても尚消えることはない。
獣が沸き立ち、更には触手をも生み出したのを彼女は見ている。
もし触れてしまってはどうなるか予想もつかない。
あの影は可能な限り避ける、なのははそう判断した。
その判断までの数秒、コスタスがナイフの射程に侵入した。
「レイジングハート!」
<<All right! Flash move>>
瞬時に退避しつつ後方に展開されたスフィアからシュートを乱射し弾幕を張る。
「うおおおっ!?」
空を切ったナイフの先から飛んできた光弾の直撃を受け、落下を始める。
その弾幕を防ぐように、そして身体を受け止めるように影が浮き上がる。
「まだだ……仕切り直す!」
「逃がさない! カートリッジロード!」
レイジングハートから薬莢が排出される。
<<Divine>>
弾幕を展開させたまま、なのはの周囲に魔法陣が展開する。
<<Buster!>>
展開された魔法陣からなのはの主砲が発射された。
影が彼を守るように展開し、そのまま突風の前の埃のように吹き飛ぶ。
「なっ!」
影の防御性能を過信していたのか、顔が驚愕に歪む。
それでも咄嗟に腕をクロスさせて防御する。
だがそのような防御など彼女の魔砲の前に意味はなく、為す術無く吹き飛んだ。
確実にセイバーへのダメージは与えた。
息は切れている。
体中から煙が立ち上り、僅かに膝が笑っている。
だがそれだけ。
無防備に倒れているわけでも、膝をついてすらいない。
瞳の鋭さはまるで変わらず、闘志も萎えていない、それどころかより鋭く研ぎ澄まされたようだ。
「やるではないか……」
クロスされた双方の腕には双剣が握られている。
「くっ……」
大魔法を使った彼女自身も息が荒い。
カートリッジによる強化も含め、かなりの魔力を消費している。
凛からの魔力供給は滞りなく行われている、相当な負担だろう。
だがそれを持ってしても連続して大魔法を使うことはできない。
彼女はまだ幼い。
いかに高い資質を持っていようと、連続で使うだけの体力<<回路>>はない。
それ故に、回路を休ませるだけの数分の時間が欲しい。
魔力を節約して戦える相手ではない、それは分かっている。
「でも……凌ぐくらい……やってみせる!」
<<Harken form set up>>
薬莢が一つ排出された。
「ほう……いいだろう」
クロスさせた腕を下げる。
「いくぞ」
第一歩が踏み出された。
最終更新:2007年05月21日 02:07