626 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/12/12(火) 04:47:41
「ククク……ならば……」
そう言いながらコスタスが胸ポケットに手を入れる。
「俺がより強くなれば良いって事だあッ!」
瞬間的に巨大な魔力が放たれる。
<<Wide Area Protection>>
それは問題なくレイジングハートが防ぐ。
「うわっ……」
だが、防御と魔力の接触で発生する光の眩しさに思わず目を閉じる。
目を開けたとき、なのはの視界にあったのは煙。
そして深夜の今にはあり得ないはずの光だ。
「煙……!」
周囲を見ても、あるのは煙だけ。
「魔法? ううん、これはただの目眩ましと、明かりの筈……」
数個の発煙手榴弾と照明弾。
魔力を放った直後、胸ポケットから『切り札』と同時に取りだしたモノだ。
切り札の発動には時間がかかることを理解している。
だからその為の目眩まし。
飛行して上から見ようとも思ったがそれは断念する。
照明弾は地面に転がされる物だけでなく落下傘を使って上空を漂っている物もあるのが煙の中からでも分かる。
下手に上空を飛んでしまえば下から狙い撃ちにされるかもしれない。
その一撃を回避してその位置へ撃ち返す事を考えても、最初の一撃をほぼ無防備で受けるリスクは大きいだろうと判断し、地面に張り付く。
忍び足で足音を絞りながら移動し、息を殺して気配を探る。
周囲の光が乱反射して
煙の向こうで影が動くのが見えた。
「……そこっ!」
光弾を発射し、その一撃が空を切る。
「嘘っ? 当たったはずなのに……!」
<<It's phenomenon of brocken spectre>>
ブロッケン現象。
霧の中で何かの影が霧に投影されて別物に見える現象。
狙った影はなのは自身の物だ。
「まず……」
姿勢を下げて転がるように位置を変えつつバリアを展開して防御する。
だが当然あると思っていた追撃はない。
防御を解いて訝しげに周囲を見回す。
煙は晴れ始め、煙の先にコスタスの姿があった。
手に持つのは宝石のような種、種のような宝石。
それは、彼女はどこかで見た事がある代物。
ジュエルシードに近い姿をした『それ』は紛れもなく――
「古代遺産<<ロスト・ロギア>>――!」
「――しまった!」
一瞬の緩みをついて絡みつく鎖。
その緩みを作るために足の筋肉を分断させたという事実に、戦慄する。
「バリアジャケット……!」
バリアジャケットをパージして逃れる、そう考え実行するまでの間に、フェイトの身体は宙に浮いていた。
その衝撃に思わず思考が止まる。
「オオオオッ!」
獣の雄叫びのような叫び声と共に地面に叩き付けられる。
「あ……ぐっ……」
咄嗟に結界魔法<<フローターフィールド>>で足場を作ったが、それはあっさり貫通され、その衝撃で再び宙を舞う。
「こ……のおおっ!」
背中に走る激痛を食いしばり、バルディッシュを掴み直し、空中を蹴るように飛び出す。
だが鎖は完全に解け切れていない。
再び体勢を崩され、もう片方の鎖剣が振るわれ、フェイトの肩を浅く薙ぐ。
「ッ! ……まだまだあっ!」
<<Blitz action>>
片方は足に絡みつき、もう片方はフェイトの肩を薙いでいる。
ダメージはあったが確実な好機。
振りかぶると同時の超高速移動魔法<<ブリッツアクション>>で後方へジャンプ。
その速度は一瞬だけだが無防備状態を作り出す。
振りかぶったままのバルディッシュを全力で振るい、左脇腹を抉り取る。
『取った!』
最大級の手応えが展開したバルディッシュの刃から伝わってくる。
「グ……ウウウッ!」
だが絡みついたままの鎖によって再び宙を舞うフェイト。
これ以上ないほどの手応え立ったにも関わらず、そこに込められた力は先程宙を舞わされた力と変わりはない、否、それどころか明らかに増している。
「くっ……なんて馬鹿力!」
最初よりは冷静に、叩き付けられるまでに体勢を立て直し、バリアジャケットをパージして鎖から逃れる。
更にフローターフィールド、腕、肘、膝、足を使って衝撃を分散させつつ、追撃されないように距離を開けるように着地する。
それでも立ち上がれば全身が痺れ、衝撃で脳が振動して意識が飛びそうになっている。
最終更新:2007年05月21日 02:08