669 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/12/15(金) 04:23:05
何かが切れ。
瞳に意志が宿る。
記憶から生まれる人の意志、それを思い知らせると。
<<A.C.S stand by>>
その意志に呼応してレイジングハートが展開する。
「アクセルチャージャー起動!」
レイジングハートから瞬間突撃システム『Accelerate Charge System』、その六枚羽が展開される。
「ストライクフレーム!」
続いて半ば実体化したような魔力刃が展開する。
「エクセリオンバスター! ACS!」
薬莢が排出され、瞬間的に魔力がブーストされ。
「ドライブ!」
ブーストされた魔力を推進力に突撃した。
「来るか!」
展開されたままの影から弾幕が放たれる。
空へ向けて放たれる面による魔力の弾幕は空戦を終え帰投を始めた航空機からも、地上で戦う者達からも見えた。
回避しきれぬ弾幕がバリアジャケットに直撃し、爆発する。
「墜ちろおっ!」
「まだまだあっ!」
なのはの瞳にも、コスタスの瞳にも闘志の衰えはない。
右からの弾幕で右足が爆発する。
錐揉み回転を始めながらも突撃を止めない。
「まだ来るか!」
二人の間に影の壁が出現し、その壁からも弾幕が放たれる。
「そんな影……撃ち抜く!」
影は瞬時に貫通し、霧散する。
「くっ……おおおっ!」
握られたイデアシードから膨大な魔力が拳に集う。
「だったら、直接叩き付けてやらあっ!」
「それは……こっちも同じいっ!」
接触の瞬間。
コスタスの左腕から放たれる膨大な魔力がACSの羽の一つを吹き飛ばす。
「はあああっ!」
魔力を放った直後、無防備なコスタスの左腕にストライクフレームが突き刺さる。
「があっ!」
貫かれた激痛によってなお闘志は消えず、再度の魔力放出でなのはの軌道を逸らし、その代わりにコスタスは吹き飛ばされて地面に転がる。
空に向けて軌道を逸らされ、弾幕に晒される。
「くうっ……!」
背面に光弾を受け、バリアジャケットの一部が損壊する。
「まだ……終わってない!」
投げ出された軌道そのままに、頂点でスナップロールしながら宙返りし、弾幕を回避する。
「んなっ……ハートループだと!?」
地面に転がったまま、そんなことを口にした。
弾幕が数発命中するがなのはの勢いは止まらない。
それ故回避も、壁による防御も間に合わず、ストライクフレームがコスタスの身体に突き刺さる。
「捕まえたあっ!」
「こんのっ……!」
穴の開いた腕に再び魔力が集中する。
だがそれは数秒遅い。
「ブレイク……シュート!」
零距離で炸裂し、爆発と衝撃波が全方向に拡散した。
670 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/12/15(金) 04:23:50
ブレイクシュートが巻き起こした衝撃波がフェイト達を襲う。
「やるな、お前の仲間は」
巻き上げられた砂煙の中、悠然と言う。
「違います……なのはは私の、友達です」
フェイトも静かに応える。
「なのはか……お前は?」
「……フェイト、フェイト・テスタロッサ」
セイバーの口元に笑みが浮かぶ。
「そうか……とはいえな、なのはとやらはやり過ぎだ……奴に死なれると、俺の目的が果たせぬ」
「目的……なんなんです、貴方が聖杯に求める物は」
聖杯。
手に入れた者のあらゆる願いを叶えるという願望機。
この作戦で回収するべき聖遺物<<ロスト・ロギア>>
彼女が知ることはそれだけ。
願いを叶えようという事柄は彼女の中にはない。
……そう、叶えてはいけないのだと思う。
今生きているこの世界があるから。
叶えた先の世界がどんなに幸せでも、今この世界で彼女を知り、必要としてくれる人が居る以上、この世界を裏切ることは決してできない。
「……答えてやろう」
その理由は、気まぐれではなく、戦士と認めたからだ。
そう、例えどうなろうと、どれほど摩耗しようと、この男は戦士なのだ。
「俺の目的はな――消滅することだ」
「消滅――」
「そうだ、俺はかつて神に、世界に願った、全ての敵を倒すだけの力をな――そしてその代償に、妻子を奪われた」
それはどれほどの感情であったのだろう。
後悔し続けたその先にあって、逆に全ての感情が失せていた。
「俺はその罪の消失を願い、神の先駆となった、その先に消失があると信じてな……」
無表情のまま武器を手元へ戻す。
「だがその先にあったのは『罪を許された』という絶望だけだ! 死ぬことすら許されず!」
一瞬で距離が詰まる。
その速度は、高速戦闘を得意とするフェイトをして反応しきれぬ速度であった。
「戦いだけがあったんだよ!」
剣を振り下ろす。
遅れた反応だけ、バリアジャケットを超えて切り刻まれる。
「くっ……」
肩口から血が吹き出る。
「大丈夫……腕はまだついてる、内臓も無事」
切り裂かれたバリアジャケットを再展開して表面からの出血を止め、距離を取る。
「だからこそ残されたのは、完全消滅の機会だ! その為ならば、世界がどうなろうと知ったことか!」
そう言って取り出されたのは、首だ。
「首?」
反応できる物ではない。
一瞬の光で、フェイトが石化する。
「ゴルゴンの首<<Gorgon Flash>>……少しの間だ、石になっていろ」
動けないと気付いたのは、そう言われてからだ。
――なのは!
動かぬ口で、親友の名を叫ぶ。
最終更新:2007年05月21日 02:10