716 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:学舎を後に] 投稿日: 2006/12/18(月) 04:28:17

勿論のこと、信じ切る事などできようはずがない。
人質という優位性を捨てるとすれば同時でなければならない。
「ならば……同時に離れてください、それが最低条件です」
少しだけ笑う声。
「少女ながらなかなかどうして……当然のことだがな」
振り上げた腕を下ろす。
「あの燃えつきた残骸、アレを使う、いいな?」
「……はい」
そう言うと、一歩だけ残骸へ向かう。
「次からタイミングは同時だ……距離を開けろ」
「分かりました」
距離を保ったまま、じりじりと人質から距離を離す。
互いに残骸を正面に捉える。
無言のまま、残骸越しに擦れ違う。
そして互いの人質の元へ近づいていく。
「さて、どうする? なのはとやら……人質の気にしたまま戦うか?」
「いえ……今日はこのまま、痛み分けと言うことでどうですか?」
「……賢明な判断だ」
そう言うと、セイバーは荷物のようにコスタスの身体を肩に担ぐと、立ち去っていった。

校門の向こうへ消えたのを確認して一息つき、フェイトの状況を伺う。
「レイジングハート、これ、治せる……よね?」
もし戻らないとすれば、後悔は様々な面で途方もなく深くなる。
<<Don't worry>>
「え?」
気付けば、石像にヒビが入り始めている。
「え? え?」
空気の入った袋を潰すような音と共に石像が割れ、中からフェイトが現れる。
「フェイトちゃん!」
崩れ落ちるフェイトを抱きかかえ、二人同時に倒れ込む。
「大丈夫……ちょっと疲れただけ……この石化は魔法じゃなくて物理的な効果がメインだったみたいだから……」
「それだけじゃないよ……肩とか足、血だらけだよ」
再展開されたバリアジャケットの上から血が滲んでいる。
彼女自身気付いていないが、肩の負傷は鎖骨近くまで切断されているし、足の方は、骨や動脈こそ無事だが下大静脈の一部が切れて大きく出血している。
ハンカチを足に巻いて止血処理をするがどの程度有効化は甚だ疑問だ。
「それを言ったら、なのはも、だよ……」
そう言って、フェイトは笑顔を見せる。
フェイトに比べれば確実に軽傷だが、弾幕を受けた箇所はバリアジャケットが焼け落ちて皮膚までダメージを負っているし、ブーストした推進力を全て脚部から噴出していたためバリアジャケットの靴が焼け落ちて半ば裸足となっている。
「二人とも……ボロボロだね」
「そうだね……あの人達、凄く強かった」
コスタスの持っていたロスト・ロギアを回収できなかったと気付くが、後の祭りだ。
「……とりあえず、凛さん達と合流しよっか」
「合流場所は教会、だよね?」
どちらとも無く口にする。
この状態では戦うことなどできはしない。
その判断は、そこに至る時間までも同じだった。
「フェイトちゃん、立てる?」
「うん、大丈夫……」
バルディッシュを杖代わりにして立ち上がる。
だが膝が笑っていて、歩くことは難しそうだ。
「無理、しないで、ほら、肩貸すから……バルディッシュは怪我を治すのに集中させて?」
「うん、分かった……ありがと、なのは」


こうして二人は戦場となった学舎を後にする。
かくして舞台は――

闇夜に舞う:市街地へ移る
音速を超えて:教会へ移る

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闇夜に舞う:4
音速を超えて:5 決定

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最終更新:2007年05月21日 02:10