726 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage interlude「二人のアサシン」] 投稿日: 2006/12/19(火) 03:00:11

interlude――

S市・住宅街

二人の対峙はそう長いものではなかった。

「失礼、貴君、何者か」
ただ座っているだけの姿に、ただそれだけの姿に驚異を感じ取り、声を掛けた。
「私か? アサシンさ、歴史の影で生きたという意味では、似合っていると思うがね」
石垣に座ったまま、ワイングラスを傾けて男が言った。
「ほう、奇遇な事だ、実は私も、歴史の影に生きたアサシンなのだよ」
雅な和服に身を包んだ男が言った。

「……それは予想外だ、その姿に長尺刀、表の世界に生きる者、それもセイバーと思っていたよ」
「なに、些か厄介な身の上でな、この身は剣の英霊となれぬ外道に過ぎぬ……」
「なるほど、外道か、それにしては……な」
その姿は典雅に過ぎた。
「応よ、四季折々の花鳥風月を愛で、研鑽したこの身、典雅でなければ話にならぬだろう……それが例え偽りであろうとな、立ちたまえ同士<<アサシン>>」
彼からすれば無粋この上ない戦闘機も空を去り、月が地上を照らしている。
典雅な着物姿は月下に映えた。
「……お互い主には秘密な行脚だろう、勝ちも負けも手早く終えようぞ、同士<<アサシン>>」
「そうだな……そうしよう」
その言葉と共に、座ったままの姿勢で跳躍した。


「大道芸か……驚くがそれだけよ」
呆れたような思考のまま首を狙い刀を一閃する。
敵となったアサシンは素手。
対する長尺刀の射程は比べるのもばからしいほどだ。

その一閃は、二本の指で受け止められる。
受け止めきれぬ衝撃が、僅かに皮膚を割くが、ダメージはそこまでだ。
「当然そう考えるだろう、だが、それは予想がついたよ」
続いたのは耳に響く呼吸音。
まるで声を発するように声帯を震わせるその独特の呼吸は、まるで光を放っているように見えた。
「銀色の波紋疾走<<メタルシルバーオーバードライブ>>!」


――interlude out


727 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:音速を超えて] 投稿日: 2006/12/19(火) 03:02:36

かくして舞台は教会へ移る。


目前で誰かが死ぬ。
そう"感じた"刹那、両手首のフラップを解除する。
射出される二丁拳銃はこれ以上ないほど手に馴染んでいる。

この銃こそ彼の生涯を象徴する武術の為の武装である。
格闘拳銃の感触を"感じる直前"、少女めがけて白い閃光が振るわれるであろう距離まで接近するまでコンマ5秒。
その軌道は単純な突きの一撃。
音速に迫る、あるいは凌駕するであろうその動きも、確率統計弾道解析の前に晒されればその動きは明瞭。
しかしその動きは極めて速い、彼の格闘拳銃、その"峰"と呼ばれる部分を持ってしても支えきることはできない。
それ故に拳銃を持って挟み込み、軌道と垂直に力を加えることで一撃を逸らす。
そう『計算』し、計算通りの動きを持って少女の安全を確保した。

この刹那の計算こそ彼の生涯を証明する武術『ガン=カタ』の一端である。


突き出された白刃。
走馬燈が見える中、遠坂凛はそれが何かによって逸らされるのを見た。

「ほう……やるではないか」
少し遠くから聞こえるその声は、実に楽しそうである。
背後でヒステリックに喚くシャルロット<<マスター>>とは一線を画する冷徹さ、そして相手の存在を見透かすような冷徹な瞳を持った男である。
プレストンはそう判断した。

「な、何故私を……?」
地面に崩れそうになるほどの驚きを押し殺し、凛が問うた。
「役目を果たせ、と言うことだ」
それ以上は語らず、感情を殺した表情のまま、敵を見据える。
その返答は簡潔で、それでありながら多くの意味を含んでいた。

「貴方は最強だと私が確信したの! 確信した以上貴方は最強でなければならないの! さっさと奴を殺しなさいよ! セイバー!」
ヒステリックに叫び、命令するシャルロット。
「やれやれ……難儀な人だ、想像を逞しくしすぎれば家名どころか命が滅びるぞ、マスター」
「五月蠅い! さっさと殺しなさいと、滅ぼしなさいと言っているでしょう!」
口元に笑みを浮かべて、セイバーが目標を男へと変え、再び音速で迫る。

頭脳が演算処理を再開し、プレストンの意識の外で戦闘における最適解を導く。
初手は接近する際の速度を利用した突き、先程のように左腕で軌道を逸らす。
逸らして引きつけ、続く動作で右の拳銃を腹部に突きつける。
だが拳銃の発砲はしない、当然こうなれば相手の最適解として勢いに任せて内臓破裂を狙う蹴りが来る。
耐久力、速度、その他全ての身体能力としては敵が確実に上、腹部内臓を撃ち抜こうと、その後の蹴りを回避できず、続く一撃で敗北する。
故にその蹴りを回避し、その突き出た無防備な足を左の拳銃で撃ち抜き、戦闘初期の優位性を確保する。

一対一の対人戦に於いてここまでの計算、判断で許されるのは0.04秒。
これを超過するようならその時点でクラリックとしては破門の対象となる。
計算の中で思考を打ち消し、プレストンはコンマ三秒後の戦闘開始を待ち受ける。


言われた言葉の意味、それを咀嚼し、反芻する。
彼が言う『遠坂凛の役目』とは何かを思考する。
見るに、彼の、プレストンと名乗った男の戦闘能力は途方もなく高い、何しろ音速に迫る動きのセイバーと互角に渡り合っている。
名乗りはしないが、サーヴァントであろうことは予想がつく、真名こそ不明だが、拳銃を使う以上、近代の英霊に他ならない。
つまり、召喚時のクラス特性として設定された最低限以上の対魔力はないのだろう。
ならばこの場における役割とは、敵マスターの排除にあるのだろう。

二人の激突する戦場を迂回し――


魔術戦:ガントで攻撃する
格闘戦:魔術を使わせないため、近接戦を挑む

投票結果

魔術戦:2
格闘戦:5 決定

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最終更新:2007年05月21日 02:11