749 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:格闘戦] 投稿日: 2006/12/21(木) 02:56:56

最初の一歩を踏み出す直前、ちらりと後ろを振り返る。
倒れ込んだままのキャスターの表情は苦悶のままだが、消失する兆しは見られない。
クラス特性故か、『唯の女子高生』であっても普通の人間の魔術で消失することはなさそうだ。
そうなれば、正面の敵さえ排除すれば問題はない。
「すぐ終わらせるから、待ってなさい……!」
最初の一歩を踏み出す。

「Destruction……par feu<<炎上>>!」
その動きに漸く反応して、放とうとした魔術を凛の周囲に向けて放つ。
「くっ……」
凛の赤い服が炎に映え、その先ではシャルロットが高笑いを上げる。
石畳の敷き詰められた地面と抜き損ねた雑草が炎に包まれる。
「でもこの位なら……Einfrierung<<氷結>>!」
身体の周囲に薄い氷の膜を張り、そのまま炎の海に突入する。
「そんな……?」
そのような使い道を知らないシャルロットが驚愕する。
腹部に力を込める。
腕は中段構えで、狙いは腹部内臓。
「Bord<<刃>>!」
シャルロットの振り払うような一撃を膝を折り曲げ回避する。
そして屈んだ位置は凛の射程内だ。
「教科書通りの魔術じゃ……」
折り曲げられた足と腕の筋肉が同時に引き延ばされる。
「応用が効かないわよ!」
腹部にめり込む寸頸の一撃はシャルロットを吹き飛ばすに十分な一撃であった。

「ごふ……魔術師が格闘なんて……」
吹き飛ばされ、それでも意識を保って後退する。
シャルロットの驚きは恐らく魔術師共通の物だ。
彼女とて、何も知らぬままこの聖杯戦争に身を投じたわけではない。
極東で行われる大儀式の情報は、金さえ積み、然るべき機関に問い合わせれば幾らかは手に入る。
彼女が手にした情報はそう多くはないが、必要十分と彼女が思えるほどであった。
故に、生存者であり、同時に聖杯戦争を画策した『御三家の生き残り』である遠坂凛の情報もある程度、魔術師としての略歴や顔くらいは握っている。
それ故に、魔術師が最初っから、否、敗退していたとしてもだろう、殴りかかって格闘戦で勝負を仕掛けてくるなど考えもしなかった。
「おあいにく……この戦争は基本の魔術だけで勝てるほど甘い代物じゃないのよ!」
弾き飛ばされ、後退するシャルロットに肉薄する。
足払いの一撃を放ち、咄嗟に跳び上がらせる程に下半身に意識を集中させた段階で足払いを止め、止めた足を軸足にして肘の一撃を放つ。
「!」
喉への強烈な一撃で声さえ停止する。
魔術を使わせぬという目的のため、喉は潰さなければならない。
無論詠唱だけが魔術を使う手段ではないが、主要手段が詠唱にある以上、潰しておかねば話にならない。
喉への一撃に崩れ落ちるシャルロットの頭を両手で掴み、追撃の膝蹴りを放つ。

再び弾き飛ばされ、そこで爆風が起きた。


750 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:音速格闘戦] 投稿日: 2006/12/21(木) 02:57:51

初撃は計算通りの突き。
それを捌き、続く一撃への体捌きを開始する。
だがその体捌きに対応したのは外套の裾。
それを振り、プレストンの視界を覆った。

再計算。
続く一撃は外套の先からの蹴り、回避至難。
同時に後方へ跳び、ダメージを軽減し、敵の蹴りの勢いを利用しての正面からの追撃を含めた予測位置12カ所への射撃を行う。
その結論に対し、僅かに感情が現れる。
幾ら視界がないとはいえ、予測される位置が12とは、予想以上の手練れだと。
果たして蹴りに対する弾幕射撃の向こうでは真正面からの追撃を選択した敵セイバーが外套を蹴散らすように追撃するのが僅かに見えた。

4発まで撒き散らした弾幕の向こうでは外套へ弾丸を受けつつも身を捻り正面への一撃を回避した敵セイバー。
残りの8発を中断して再び再計算へ没頭する。
足を突き出すように後方へ飛んでいる状況からでは行える軌道パターンはたかが知れている。
追撃が来れば今度こそ致命的なダメージを覚悟しなければならない。
突き出たままの足で地面を蹴りし一回転し、そこに生まれる隙を弾幕斉射で6発を撒き散らして補う。
数歩ほどの距離を保ったまま、体勢を立て直し着地するプレストン。
だが立て直すための着地の瞬間動きが止まり、それは音速を超えるセイバーにとって絶対の隙となる。
それだけの時間があれば肉薄し剣の一撃を放つ事が可能なのがセイバーの技。
その隙を逃さぬ袈裟斬りは回避不可能な一撃であると、プレストンが結論するまでには数瞬の時間を要した。
それだけの時間があって尚、出遅れぬのが遺伝子にまで刻み込まれた彼の技。

出遅れぬが、それでも尚全身を動かすには時間が足りない。
その結論故に、起こした行動は二挺拳銃による白羽取り。
直上から振り下ろされた一撃に対した左右からの白羽取りは、その勢いを完全に止めた。

互いに負けぬと信じていた戦いは、意外なほどの膠着でその幕を開けた。


銃の障壁:「動けぬな」「互いにな」言葉は簡素に、戦闘は続行する。
疾風怒濤:互いに無言のまま、示し合わせたように互いが離れ、戦闘は続行する。

投票結果

銃の障壁:1
疾風怒濤:5 決定

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最終更新:2007年05月21日 02:11