759 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:それぞれの世界が目指す物] 投稿日: 2006/12/22(金) 03:10:47

互いは無言のまま、先の展開を、一方は予測し、一方は計算した。

力点を変え、白羽取りしたままの拳銃を、白羽取りを継続したまま刀の持ち主へ向ける。
僅かに刀が下に向かって沈むが、この速度ではダメージは与えられない。
その判断が膠着した状況を一気に動かす。

刀身を弾き飛ばすように二挺拳銃が火を噴き、銃弾がセイバーの肩口を掠めた直後に振るわれる薙ぎ払いの一撃はバックステップで回避する。
体勢の関係で払いを中断しての突きは無い。
続く三度の剣戟は囮だと結論が出ている、回避する必要はない以上、バックステップで僅かに乱れた体勢を立て直す事と次の行動への計算に用いるが上策。
ただし四度目の剣戟は本命、回避し損なえば胴体であろうと鉄板だろうと確実に分断される。
二度目の払いが振るわれるまでに体勢は立て直される。
そして三度目、最後の囮が振るわれる直後のディスアーム攻撃で刀を奪うべく二挺拳銃で両の腕の終着点を狙う。
だがその払いは最後まで振るわれることはない、払いは中断される、足の運びでそう結論し、後方へ下がる。

必殺の意志を持って繰り出した剣先は何の感触もない、その事にセイバーは遂に驚愕する。
三度の払いによる目眩まし、当然予期される四度目の払いを裏切るような突きの一撃を見切ったのは、プレストンの技量故だろう。

総計しても僅か数秒の激突だったが、互いに敵の強さとその在り方に驚愕していた。

セイバーの剣術、『誰かが選択を間違った世界』にて戴天を名乗る流派の真骨頂は『敵の意を討つ』事にある。
攻撃には人の意志が伴う。
そしてその意志は実際の攻撃に先んじて発せられる。
その意志を察知し、その攻撃を待ち受けてさえしまえばどれほど早く、重い一撃だろうと必ず凌ぎ、倒すことができる。
一方、攻撃を意より早く放つ事ができればどのような存在であろうと攻撃を防ぐことはできない。
それを可能とするのが戴天の極意であり、その極意を得た者の前に立つことは死を意味する事となるだろう。

プレストンの戦術は、セイバーとは違う『誰かが選択を間違った世界』にてガン=カタを名乗る流派の真骨頂は『数式を持って戦う』事にある。
人という種の動きには限界がある。
それは例え間接を捨て、神経を捨て、思考を捨て、他の何を捨てようと、『人』という種から派生した以上必ず存在する。
そしてその限界を持った動きの中には特定のパターンが存在する。
算出されたパターンから己の安全圏、そして敵の移動予測位置を計算し、安全圏へ回避しつつ敵の移動予測位置へ発砲する。
その事によって最大限の殺傷効率を維持しつつ最も効果的な攻撃を可能にし、最も反撃を受けにくい位置へ移動する事が可能となる。


互いに全く異質ながら、背筋に冷たい物を感じ、互いの強さを認めるに至った。
その強さは、セイバーの脳内に僅かであったが、捨て去ったはずの生存本能を呼び覚ました。
その生存本能という感情に、プレストンは敏感に過ぎた。

それ故か、プレストンから全ての感情が完全に消え去った。
その直前、プレストンはあの時に戻っていた。
――反逆者に浄火の紋章を
そう思っていたあの時に。


760 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:堕ちた魔法] 投稿日: 2006/12/22(金) 03:11:58

爆風が起きた瞬間、視界が防がれる。
そう感じると同時にバックステップで退避し、そして爆風の先へガントを掃射する。
だが乱射されたガントは唯の一発も捉えることはなかった。
「よくも……」
声は空から。

見上げれば、シャルロットは宙に浮いていた。
「よくもやってくれましたね……この『魔法使い』の私を好き放題に!」
「魔法、使い……!?」
魔法使い。
現代技術では再現不可能なただ五つの神秘。
その使い手。
だが、『浮く』『飛ぶ』などというのは既に人類はダ・ヴィンチの時代、ライト兄弟の時代に到達している。
故に彼女は魔法使いではない。
「そう、我が家系はこの戦いに勝利して文明を滅ぼし、魔法使いの家系に戻る! その為に、消えなさい遠坂の魔術師!」
相手は魔法使いの弟子の家系であり、自分は魔法使いの家系。
つまり自分は魔法使いであり相手は魔術師なのだと、相手よりも格上なのだと彼女の自尊心が叫ばせた。
それと同時に上空より炎を撒き散らしながら飛来する。
凛本人は気付いていないがその速度は殆ど音速。
そこから撒き散らされる着弾時の爆発力はグレネード弾に近い。
「くっ……堕ちたとはいえ近代に堕ちた魔法だとすると……厄介なことこの上ないわね」
身に纏った氷結魔術は爆風から抜け出す直前に切れ、赤い服が僅かに焦げ落ちる。
「ああっ……このっ、高かったのに、これ……!」
言いながらガントを空中を自在に飛び交うシャルロットには掠りもしない。
「ハハハ! 形無しじゃないの!」
再び飛来し、炎を撒き散らす。
だがその狙いは先程と変わらず、凛に命中することも、教会内に炎が突入することもなかった。
「狙いが甘い……? 夜とはいえさっきよりは炎がある分狙いやすそうだけど……」
視線を離さず、それでも思考に没頭する。
その結論が出るまでの時間は極めて短い。
「もしかして……自分の魔術を使いこなせていない?」
そうなのかもしれない。
魔術の秘匿は大前提だ。
まして魔法ともなれば一族通して隠し続けたのだろう。
魔術回路は相続させられても経験までは相続させられない。
魔術そのものを完全に使えたとして、身体がそれを操りきれなければそれは使いこなせないことと同じ。
「だったら……」
再び強い意志で見据える。
使いこなせていない魔術相手なら、勝つ手段は幾つかある。

すぐに思いついたのは次の三つ。
消耗は極めて激しくなるが、真っ正面から宝石魔術で吹き飛ばす。
消耗を押さえつつ、敵の消耗を誘いながら接近を許さずガントで撃ち落とす。
近接戦の能力差と、魔術的な消耗をゼロにすることを考えるなら、敢えて接近を許し、目眩ましをくれて動きを止めてから拳を強化し、接近戦に持ち込めば今度こそ倒す事もできるだろう。

上空でシャルロットが反転し、向かってくるのが見える。
変わらずスピードは極めて速いまま。
機動力で劣る以上、作戦はすぐに決め、それに専念しなければならないだろう。


シャーテンブルク:宝石魔術で吹き飛ばす
レンテンベルク:ガントで撃ち落とす
ガルミッシュ:格闘戦に持ち込む

投票結果

シャーテンブルク:1
レンテンベルク:5 決定
ガルミッシュ:1

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最終更新:2007年05月21日 02:12