795 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:二つの超音速] 投稿日: 2006/12/26(火) 01:37:26

振るわれるグリップの一撃をレイピアで受け、零距離から反撃の体当たりを敢行する。
まるでここで下がれば敗北すると言わんばかりの気迫を纏う体当たりはプレストンを数メートル吹き飛ばす。
肩から胸へと与えられた衝撃はプレストンの呼吸を止めるに十分なほどであった。
だがそのダメージにすら頓着することなく、一瞬で銃身からグリップへ持ち替え、動きが止まったセイバーに発砲する。
意志のない一撃は目視してから回避する他ない。
だがほぼ零距離から放たれた一撃は、回避しきれる物ではない。
頭部を狙った右の一撃は寸前で回避したが、プレストンの本命である左の一撃は膝を撃ち抜いた。
プレストンは衝撃に任せて後方に着地する。
拳銃で胸を押さえ、呼吸を整えようとするが、苦悶の表情は晴れることはない。
セイバーは膝を撃ち抜かれた物の、その表情が曇ることはない。
当然のことだ、何しろ、今の体当たりで肋骨の一つが折れているのだから。
「やるな……プレストン」
セイバーはその賛辞と共に、構えらしい構えを取る。
プレストンは知ることはないが、その構えの名は貫光迅雷。
肉薄した状態から刹那の隙を見抜き必殺を見舞うこの構え、剣の間合いの外で、まして銃を相手にしているというのに、セイバーは敢えてこの構えを取った。
「確かに意志は失せている、失せた意志の中、統制された演算によって最適解を生み出すのが貴様の技か」
セイバーはこの短時間の激突でプレストンの技の本質を見抜いていた。
だがそれはプレストンも同じ事。
感情の失せたまま、声を放つ。
「……ならば、攻撃に先んじて放たれる意志を読み、その意志を凌駕するのがお前の技だろう……それを知って、どうする」
「どうもしないさ、ただな、この戴天の技は意志を読むが故、人のことを知ってしまうと言うことだ……何を迷う、ジョン・プレストン……僧の英霊<<クラリック>>よ」
その言葉に、プレストンは僅かに感情を戻す。
「――答えたくはないか」
感情が戻って尚、プレストンは口を開くことはなかった。
そう見えて、その言葉の後、プレストンは口を開く。
「ならば問おう、剣の英霊、何を悲しんでいる……何故そうも虚ろに存在する」
その言葉に、セイバーは表情を変え、構えた刀さえ取り落としそうになる。
「不思議では無かろう? 感情を読む事は俺にもできる……戦いたくなければ剣を引け、中立を敵とすることは得策ではないだろう」
剣を握り直す。
「――互いに心に踏み込むのは無粋であったな」
「……そうかもしれん」
銃を構え直す。
「征くぞプレストン、全ての想いを抱いて眠れ」
剣の英霊が、音速を超えた。


上空より迫る炎を纏う者。
それはこれまでで最高の精度と気迫を持って迫る。
その力と精度は、勝利の天秤を彼女の側に傾けるに足る力であった。
「ッ――!」
周囲に広がる隙さえなく、帯状に長く炎の壁が出来上がる。
その速度は亜音速、如何に堕したとはいえその力は魔法の域。
足へ強化すら施しての全力での回避だったが、完全にはしきれず、氷結魔術の上から片方のブーツが焼け焦げる。
焼け焦げるブーツの上から氷結魔術を更に施して応急処理を行うが、それは気休めに過ぎない。
焼けた左足は、少なくとも全力を振るう事ができない。
「これ以上は回避しきれない……できてあと一、二回……なら次がラストチャンスか」
そう、残念だが死の危険が迫っている以上、これ以上の軌道予測の精度向上は期待できない。
とにかく、片方が焼けた足で音速に至るほどの降下突撃を回避し、最大のガントを予測される退避ルート上に発射し、背後から叩き付ける。
継承され、使い慣れた刻印に、詠唱によるブーストを追加する。
「手数と威力を、限界まで高めてやれば……」
その一撃は必ず当たるはずだと、自分に言い聞かせるように。

「次で終わらせる……!」
自分で発したその言葉に、シャルロットは歓喜する。
冬木聖杯、その御三家の一人を倒した。
今求めている物が冬木聖杯でなかったとしても、その自信は、己をより強固にし、彼女が魔法使いへ『戻る』為の偉大な一歩となるだろう。
継承した『魔法』を使い始めた今の彼女は絶好調だ。
身体に刻み込まれた魔術刻印が、継承以来初めて魔術を流され、本来の力を取り戻しつつある。
負ける要因など何一つ無い。
そう、少なくとも彼女の側には、負ける要因など何一つ無い。

その天秤を狂わせられるとすれば、それは遠坂凛の魔術しかない。
「ここで……決着をつける!」
音速を超えたシャルロットが、上空より迫っていた。


回避運動:突撃を回避し、背後から狙う
牽制射撃:ガントによる牽制で相手の動きをコントロールする

投票結果

回避運動:3
牽制射撃:5 決定

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最終更新:2007年07月19日 17:43