822 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:音速爆砕] 投稿日: 2006/12/27(水) 03:26:59

ブーストした魔力を刻印の中で待機させたまま、連射可能なように威力を抑制した魔力をガンドとして放つ。
音速で迫る相手にダメージなど期待出来ないだろうが、真正面に炸裂したガンドは視界を遮り、回避運動を誘発するだろう。
元より回避など狙って出来る速度ではない。
これで駄目なら回避も出来ず真正面から攻撃を受けて彼女は死ぬ。
そんな、一か八かの賭け。

一か八かの賭けは、五分に終わる。

シャルロットは思わず目を瞑り、自らの魔術の制御に失敗し、炎すら撒き散らせず軌道の制御を失う。
その軌道は凛へと激突し、そのまま空中へ飛び去る。
見ることなどできなかったが、その様は吹き飛ぶといった方が正しいほど無様な物だった。

凛の表情が苦悶に満ちる。
咄嗟に左腕で衝撃を逃がし、骨や内臓へのダメージは殆ど無かったが、代償として腕はバラバラになりそうなほどの衝撃を受けて関節が外れ、身体は吹き飛ばされた後落下し地面に転がる。
もう一方のシャルロットも似たような状態で空中を転がる。

転がりながら、ある詩人の言葉を思い出す。
「ひとりの囚人は壁を見た、もうひとりの囚人は 鉄格子からのぞく星をみていた……私は一生の間、絶対に星を見続けてやる!」
そう、遠坂凛は第二魔法という高みを目指している。
高みを目指し続けなければ、現状の維持すらできないとも考えている。
高みを目指し続けているのだから、このような場所で死という沼にはまりこむわけにはいかない。
『かつての魔法』という血統が所有する財産にしがみつく彼女などに、負けるわけにはいかないのだ。

吹き飛び、転がった勢いは花壇の積み石に全身をぶつけて止まる。
意図した物ではないが、とにかく勢いは止まった。
「あいつは……!」
失せそうになる意識と視界を振り絞り空中を見渡すと、空中でふらふらと無防備を晒しながらも、必死で制御を取り戻そうとしている姿を見つけた。
対応するかのように転がったままの姿、伏せ撃ちの体勢を取り狙いをつける。
外れた肩を無理矢理戻し、魔力を込めると左腕全体にこれ以上ないほどの激痛が走る。
激痛で悶えそうになるのを右腕で左腕を掴んで補助する。
それでも震えの止まらぬ腕の制御を、腕力と魔力で無理矢理行う。
歯を食いしばり、全身に走る激痛に耐え、それでも敵を見据え、完全に『指差し』
「――取った!」
極大のガンドが超高速で放たれた。
直後に制御を取り戻したシャルロットが音速に向かい加速を始め――

シャルロットの背後に命中し、今度こそ完全に制御を失ったシャルロットが音速のまま空中に投げ出される。
その姿は、瞬間を見たわけではないのに、空中で爆散する航空機を凛に連想させた。


823 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:音速停止] 投稿日: 2006/12/27(水) 03:27:58

音速で迫るセイバーの突きの連打はプレストンに追い切れる物ではない。
繰り出されるレイピアの一撃は、それだけでプレストンの守りを呆気なく崩し、殺すはずであった。
突きは剣術の中で最も点に近い領域を侵犯する。

だがプレストンは拮抗する。
サーヴァントで最速であるというランサーをも凌駕するであろう音速の連打を、防御一辺倒とはいえ凌いでいる。
振るう腕も、その速度を生み出す足をも全てを捉えきることが出来ていない。
それを防ぎきるのは、己の『ガン=カタ』に全てを委ねたからに他ならない。
確かに全貌は見えぬ。
だがその姿の一部は見える。
踏み込む足先、突く寸前に一瞬溜めを作る瞬間の肘先、この僅かな距離をも遅れてやってくる足音。
そこより最も理想的な敵の全身像、その各部位の現在位置を計算し、そこより振るわれる一撃に対する最適解を導き出し、それに対する

最適解を導き出し、対応する。
音速をも超える突き、その虚手には目もくれず、己を抉る一撃のみ峰で弾き、次の手に備える。
セイバーも、弾かれる殺意に速度や重さが乗る前に戻し、次の一手を繰り出す。
どちらかが一手でも応じ損なえばそこで勝負は終わるであろう。
片方は貫かれ、あるいは片方は頭を撃ち抜かれて。

かつてのリブリアでの戦いですらこれほどの速度、これほどの効率を持って体術を駆使した経験はない。
第一級クラリックであった彼をして脳内での演算内容とその結果を理解することは出来ていない。
ただひたすらに演算の高速化に努めた彼の脳内は感情の存在を拒絶した。
全ての感情に付随した想いは消え去っていた。
常に心の中にあったはずのメアリーやパートリッジへの贖罪の想いも、感情を取り戻すための戦いは正しかったのかという苦悶も、全て消え去り、ただひたすらにその手に握る双銃に万事を委ね、投げ渡す。

それは、皮肉なことにかつてセイバーが最期に相対した男の最期と同じ物であった。

それを分かってしまったが故に、セイバーはプレストンの存在を許すことが出来ぬ。
両者の戦いは、音速を超えたまま停止した。


伏せ撃ち体勢のまま、凛は空中へ投げ出されたシャルロットが教会の壁の向こうに墜落する様を見届けた。
このまま頭を地面に突っ伏して倒れてしまいたいところだが、それは出来ない、まだ為すべき役割は残っている。
そう考え、危険な状態になっているであろう左腕を庇い、火傷を負っている両足には魔術を施して立ち上がる。
無事な右手でポケットを探り、使い捨ての宝石を幾つか握りしめ――


襲撃:シャルロットを倒すべく教会の壁の向こうに歩き出す
方針転換:プレストンの援護に向かう
警戒:行動を起こす前に全身に魔力を巡らせる

投票結果

襲撃:3
方針転換:1
警戒:5 決定

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最終更新:2007年07月19日 17:48