879 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:狂人との遭遇] 投稿日: 2007/01/06(土) 04:43:54

かくして舞台は市街地へ。

セイバーとランサーの、衛宮士郎と魔術師の対峙は虚空よりの笑い声によって遮られた。
咄嗟に全員が取った行動は同じ。
後方の遮蔽物へと飛び退き、視線を虚空へと移した。

虚空にあった者。
それは影のような殺人鬼だ。
身に纏うのはライダースーツとも鎧とも、拘束衣とも判断の付かぬ黒であり、対照的に露出された顔や手、髪に至るまでは異様なほどの白。
そして目は血走ったかのように眼球までもが赤く染まり、そしてその手には死体が握られ、口元も赤く染まっていた。
笑っているが、それで見つかることなど気にもしていないようで、視線を彼等に向けることはしなかった。
その視線は美しき月に見入るようにより高き空へと向けられていた。

そのおぞましさに震えた。
その死体には首が無く、四肢が右側二つが失せている。
食らったのか、もう片方の腕に滴る臓物は誰の物か。

「……なるほど、貴方の言い分を信じるべきでしょうね」
セイバーはあくまで冷静にあろうとしたのか、別の遮蔽物に隠れたランサーとそのマスターに声を掛けた。
「私にしても予想外だな、まさかあんな狂人とは思わなかった、とはいえ、信じてくれたのならば無益な争いはするべきでは無かろう?」
「……確かに、そうですね、少なくとも今夜はあの狂人に全力を集中させたい」
即ち、確実に今夜あの敵を倒すと決意していた。
それは衛宮士郎の決意と同じ物だ。
「ならば、我々は退かせて貰おう、今夜は偵察のみのつもりだったし、追いかけてこないでくれよ……くく」
そういうと、ランサーと共に遮蔽物から遮蔽物へ、隠れながら遠ざかっていくのが分かった。
「仕方ありません、いいですね? 士郎君」
殺されかけたことさえ頭から抜け落ち、全てをあの男に集中させる。
「ええ……それで構いませんよ、先生」
だからそう返答して己の内に没頭する。
どのような原理、魔術なのか、男は宙に浮いている。
だがあの程度の高度ならば投擲武器や弓でも十分に狙える。
ゲイボルグなどという高度で、しかも慣れぬ宝具の投影までした以上、魔術的にも回路的にも今夜一夜の投影をこれ以上行うのは危険かも知れない。
ならば、弓と矢ではなく、数度は投擲が可能な……投擲しても手元へ戻るアーチャーの武装が最適だ。
頭痛が襲うだろうが、意に介さない。
「これ以上、犠牲者は出させない……!」
投影のために、名も知らぬ被害者への追悼のために歯を食いしばる。
「冷静になりなさい、あれが召還された存在であるなら、主がいるはずです……士郎君はそちらを探してください、その間あの男は、私が引き受けます」
「探したら、どうするんです?」
「……あれを掣肘することなく存在させている以上、殺戮を承認していると言うことでしょう……ならば、答えは一つしかありません」
それも、頷かざるを得ないだろう。
「このビル街なら隠れる場所は幾らでもあります、気をつけてください」
「ええ、先生も」
セイバーは出来うる限り平静に視線を向け、飛びかかるタイミングを計っている。
恐らく気付かれれば衛宮士郎は虚空で吊されたあの人のように殺されるだろう。
そうならぬように、セイバー……先生が攻撃してくれるだろうが、相手の能力が未知数である以上危険すぎる。
ならば衛宮士郎は、気付かれぬようにマスターを探索し、可能ならば倒さねばならない。
設計図を頭の中に待機させる。
「自分に、倒せるか……?」
実力的にも、精神的にも。
「いや……殺せる、殺せる、はずだ……」
そう、自分は想い出さえもかつて殺したんだ、精神的な迷いなんて、ない。
だから、不安なのは実力的な物だけだ。

その思考そのものが迷いだとは気付かず。
様々な思考と逡巡を頭に入れたまま、行動を開始した。


アヴァランチ:魔術的な痕跡がないかどうか、構造解析で調べていく
バグラチオン:ビルとビルの隙間を、見つからぬように隈無く探索する
ツェルベルス:入り口の開いているビルがないかどうか探索する
チャスタイズ:ビルの壁を蹴飛ばしながら、セイバーが敵へと襲いかかった
バルバロッサ:一方、ランサーのマスターは別の敵と遭遇していた

投票結果

アヴァランチ:5 決定
バグラチオン:1
ツェルベルス:2
チャスタイズ:1
バルバロッサ:1

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最終更新:2007年05月21日 02:15