860 名前: 運命夜行  ◆ujszivMec6 [sage 審判の逆位置] 投稿日: 2007/03/20(火) 03:33:34

「……ま、別に今すぐ士郎を呼びに行く必要はないわな」
 今頃掃除中だろうし。行ったら手伝わされるのは目に見えてる。
 何? 数話前で特別サービスで手伝うとか言いかけてなかったかって? そんな昔の事は忘れたな。
 まあ、遅くなっても帰ってこないようなら、迎えに行ってやるか。

「それはそうと……腹が減ったな」
 考えてみれば、今日は授業が終わってすぐ、遠坂と追いかけっこをして、その後バゼットをみつけて、なんだかんだで昼飯を食いっぱぐれてる。
 バゼットも今まであんな所に押し込められて腹を空かせてるだろうし、ここは一つ、久しぶりにオレ自ら腕を振るうとしますか。
 冷蔵庫の中には……お、ピーマンがあった。

「……というわけで、青椒肉絲なんぞを作ってみたワケだが」
 ちょっと怪我人相手にはキツいんじゃないかなー、なんて思ったりもしたが、バゼットはカツカツと平らげてしまった。
「ごちそうさまでした、アンリ」
「……なあバゼット、今の美味かった?」
「量はそこそこでしたね。後、少々辛かったでしょうか」
 ……まず量かよ。つーか、麻婆ほどじゃないとはいえ、泰山風青椒肉絲を少々辛かったで済ませるのか。
 いや、怪我人相手にそんなの出すオレもオレだけど。
 でも仕方ないだろ、何故か泰山仕込みの中華以外はまともに作れないんだから、オレ。

 ―――さて、時刻は夜の八時。
 実はまだ士郎は帰ってきてなかったりする。
「……いや、遅すぎるだろ、いくらなんでも」
 どうせまたいつもの悪い癖で、『どうせだからとことん掃除してしまおう』とかいって、年末の大掃除並みに徹底的に弓道場の大清掃をやってるに違いない。
 そろそろいい加減、士郎を連れ戻しに行かないと、アイツなら明日の朝まで弓道場の掃除をやりかねん。
 ちょっくら弓道場まで行ってくるとしますか。

「というわけでバゼット、オレはこれからちょっと士郎を迎えにいってくるわ」
「士郎、というのは貴方の家族ですか?」
「ああ、オレの兄弟。だから、留守番頼むな」
「わかりました。外敵の排除はお任せください」
「……あー、そんな排除するような外敵は襲ってこないと思うから、気楽に待っててくれ。なんなら寝ててもいい。アンタ、怪我人なんだし」
「いえ、これぐらいの事はさせてください。命を救っていただいたせめてもの恩返しです」
「……わかった、好きにしてくれ」

 我が家から穂群原学園までは徒歩で約三十分。
 自転車を使えばもっと早く着くんだろうが、帰りに野郎で二人乗りするのもアレなので、歩いて迎えに行く。
「……まったく、士郎も慎二から頼まれた掃除なんて適当にやればいいのによ、律儀というか、几帳面というか―――」

 ―――っ!?
 なんか、今、心臓に妙な痛みを感じたような。
「……気のせいか?」

861 名前: 運命夜行  ◆ujszivMec6 [sage 審判の逆位置] 投稿日: 2007/03/20(火) 03:34:20

 さて、やってきました弓道場……って、あれ? 弓道場に明かりがついていない。
 中を覗いてみる。……誰もいない。
「おかしいなー、士郎と入れ違いになっちまったかなー」
 ぼやきながら弓道場を出ると、校舎から人影が。
 あれは……遠坂じゃねーか!
 慌てて物陰に身を隠す。
 遠坂はなんだか気が抜けた様子で、オレに気づかずに行ってしまった。

 遠坂の様子は気になったが、それよりも士郎だ。
 弓道場に居なかったとなると、校舎の中だろうか。
 士郎のことだ、弓道場の掃除のついでに、生徒会長殿に頼まれたストーブの修理を……とかやってるに違いない。
 オレの黒色の脳細胞がはじき出した推理に基づき、校舎に向かう。

「……おいおい、何の冗談だよ、コレ」
 まさか一日に二度もこんな光景に出くわすとは。
 濃密な鉄の匂い。
 真っ赤な水溜り。
 学園の廊下には、べったりと血の海ができていた。

 壁際にもたれかかったまま、動かない人影がある。
 おそらくは、この血溜まりはコイツの血液によって作られたものだろう。
 近づいて、ソイツの顔を見る。

「…………なんでだよ」
 なんで、オマエがこんな所にいるんだ。
 ナンデオマエがコンナに血をナガシテいるんだ。
 ナンデオマエがシンデイルンダ。

「………………士郎」
 ソイツは、この十年で見慣れた、オレとそっくりな顔をしたヤツだった。

 ダレダ
 士郎ヲコロシタヤツハ
 オレの家族ヲコロシタヤツハ
 オレノ日常ヲコワシタヤツハ

 ―――ニクイ
 ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ――――!

 モウイイ
 ガマンスルヒツヨウナンテ、ナイ
 コロソウ
 コロシテ、オカシテ、コワシマクロウ


 この夜、一匹の怪物が冬木市に産まれた。

 BAD END

 虎の正位置:タイガー道場でアドバイスを受ける

 女帝の正位置:遠坂神社でアドバイスを受ける

 教皇の正位置:言峰教会でアドバイスを受ける

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最終更新:2007年03月23日 03:18