715 名前: 371 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/08/13(日) 23:28:28


「壊れたものを直すのは楽しいしな」

 達成感、と言うのだろうか。
 昔は義務感に似たものに駆られてやっていたこの作業も、
 最近は素直に楽しいと思えるようになってきた。
 これもひとえに、新しく増えたこの家の住人たち日々を過ごしてきたためだろう。

「俺にとっちゃ、ここは墓場どころじゃない、大切な『工房』なんだ」

「『工房』……」

 もう一度土蔵を見回しながら、水銀燈が複雑そうな声で言う。
 ……そうか、水銀燈も人形なのだから、どこかの工房で生まれたのかもしれない。
 となると、工房という言葉にはなんらかの愛着があるのだろうか。

「……さっきは聞きそびれてしまったんだけどぉ」

「ん?」

「ジャンクを直してるあなた自身は、自分のことをイカレてると認めてるのぉ?」

 さっき聞きそびれたこと、とは、恐らくセイバーがやってくる前のことだろう。
 確かに、俺は言った。

 ――イカレた奴にだって、憧れたものは――。

 新しい日常の中で、変わってきたものもあるが、変わらないものもある。
 俺という存在の在り方は、恐らく相当に歪なんだろう。
 故に、この身体は、きっと……。

「そうだな。俺は多分、どこかが壊れたままなんだろう」

「……自分でイカレてる、って言うなんて、あなた本当にイカレてるわぁ」

 ふん、と鼻を鳴らしたきり、水銀燈はそっぽを向いて黙ってしまった。
 そのまま長い沈黙が降りる。
 水銀燈はガラクタを観続けているし、俺は所在無くラジオを持て余している。

 ……埒が明かない。
 こうなったら、俺のほうから水銀燈に質問してみよう。


α:どうして玄関に落ちてたんだ?
β:下僕ってなんなんだ?
γ:薔薇乙女《ローゼンメイデン》ってなんなんだ?

投票結果

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2006年09月03日 17:56