8 名前: くとぅるふクロス ◆69.0kY8lhQ [sage] 投稿日: 2007/03/24(土) 23:05:01

日は沈み夜の帳が星空のカーテンを飾っている。
 街灯が人工の光を煌めかせ、天の意向に屈するのをよしとせず路面を照らし出す。
 冬木の街を銀が灯火と闇の合間をくぐって駆けていた。

 銀の正体は少女。柔らかな印象を人に与える銀髪を揺らし、
繊細な造形の顔からは人を惹き付ける朱の瞳が爛々と輝いている。

 「あれはシロウだったよね」

 奇妙な本とただの弓を手に取り???を討った少年は
疾走する少女がこの地に来訪した目的の一つである。

 少女は強烈な存在に圧倒されて纏まらない思考を走らせる。
 アインツベルンの城で老人達に教わった父の養子、兄にして弟のはず。
 私が享受すべき情を全て奪い去った憎い人物である。
 それだけではない。初めてまみえる家族に対する期待もあった。

 ──どんな人なのかな? キリツグの娘だって知ったらどんな反応するかなぁ。

 衝動に突き動かされて足を速める。
 表現しがたい興奮を無意識に自覚して胸が高鳴る。
 赤光に消えてゆく姿は少女の空想に彩りをつけてゆく。
 優しい声で語りかけてきた耳に残る音が、意志の強い事を示す瞳が、
 なによりも官憲と驚愕に囚われた自分の安全を
守り通した時の嬉しそうな表情が少女を焦がしている。

 先ほどの出来事が曖昧になりつつあり、重厚で意義のある一日がかすれてゆく。
 怖れている。今日が嘘に塗り固められてしまうと。
 得がたいモノだったはずだ。霧が掛かって手が届かなくなりつつある。
 手放さないために護ろうとしてくれた官憲を思い出し、
赤毛の少年を追いかけ話しかけて……
 少女は自分が明確な意図も無く背中を追っている事に気がついた。

 とりあえず謝意を伝えるために彼を探そう。戸惑いつつもそう決めた彼女は
小さな公園の入り口付近で目当ての人を発見した。

 「待って、お兄ちゃん」

 少女は冷たい大気の中、走った事を示す白い吐息をつむいでいた。
 振り返った少年は違和感を漂わせて声の持ち主を視界に入れる。

 「危ない所を救って貰い感謝を伝えたく、後を追わせて頂きました。
  イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと申します。よしなに」

 息を整えて白いスカートを細い指先で摘み優雅に一礼する少女を
前に士郎は反射的に礼をする。

 「あ、ああ。
  衛宮士郎だ、どういたしまして」

 挨拶を終えたら話す事が無くなってしまうかもしれないと危惧していたイリヤは
いざ話しかけてみたら気に掛かる事が多々ある事を把握して布ケースを担いだ少年に喋りかける。
 小さめといえど少女より長身の弓を収納した入れ物から金色の文字が飛び出し
緩やかに彼女の周囲を廻りだした。

 「わぁ」 

 「ッ!」

 金色のラインと円を描く軌道でダンスを踊る嬉しそうなイリヤを前に士郎は息を飲む。
 彼女は人気の無い公園で彼が見せた歓迎と勘違いして懐かしい感じのする言語に触れる。
 熱も無く、質量も無い。空虚なソレは其処にあるだけだがそれなりに満足して言葉を紡ぐ。

 「お兄ちゃんは魔術師だよね? 少しお話ししたいの。
  良かったらベンチに座って聞いてくれないかな?」


 A士郎は魔術師の単語を前に逃げ出した(だが捕まった)
 B警戒しながらも少女と共に木製のベンチへ腰を下ろした(出会い)
 C警戒しながらも少女と共にベンチへ腰を下ろした(ペンキ塗りたてチラシは見えなかった)

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最終更新:2007年03月25日 12:58