63 名前: ブロードウェイを目指して ◆bvueWC.xYU [sage] 投稿日: 2007/03/26(月) 15:10:01

 繁華街の混雑具合はピーク一歩手前といった風で、人という人が立ったままの俺とレンを邪魔者のように追い抜き、去っていく。

「さすがにこの人込みの中で人を探すのはなぁ」
「(コクコク)」

 ちらとレンを見やると無言で(いつもそうだが)頷いている。とにかく動いてみなければ始まらないと俺は思い直して歩を進めた。

「とりあえず裏路地に行ってみようか、レン」
「…………」

 後ろについてくる気配を確かめてから俺は歩く速度を速めた。



「レンは二人が行きそうな場所とか分からないか?」

 ふとレンが弓塚とシオンと仲がいいのを思い出して尋ねてみる。

「……(フルフル)」

 一度じっと俺の顔を見つめてから首を横に振る。もしかしたらと思ったのだがそううまくはいかないようだ。

「そういえばレン、どうして今日の稽古に来てなかったんだ?」

 もう一つ思い出してついでに聞いてみる。あの時誰か数え忘れていたと失念していたのはレンだった。

「……?」

 急に立ち止まりレンは首を傾げて俺を凝視してくる。特に怒っているとか悲しんでいるようではないから、
恐らく何を言われているのかよく分かっていないのではないだろうか。

「あのな、レン。この前から皆と演劇の稽古をやっていて、レンも参加してるだろ?」
「…………」

 瞳の奥で何か思い出したのか、よく見ていなければ分からないくらい目を見開く。が、すぐにどこか咎めるような視線へと変わる。

「……もしかして、『俺はどうなんだ?』って言いたいのか?」
「(コク)」

 自分だけ説教をされて不満に思ったのか、更に視線は痛いものへと変わっていく。

「俺は……相方の弓塚がいないからまともに練習できなくて…………だから俺は探しにいこうと」
「…………(じぃ~)」
「そ、それに! シオンもいなくて二人とも何かあったのかとも思ったし……あ、でもレンの事をすっかり忘れてたわけじゃないからな!」
「…………(じぃぃ~)」
「……ほ、ほら。こうやってレンとは会えたんだから問題はないじゃないか」
「…………(ぷい)」
「あ」

 俺の弁明という名の言い訳を聞くのに飽きたのか、レンはそっぽを向いて俺を追い越して先を歩いて行ってしまった。
 俺はすぐに振り返り背中しか見えないレンに声をかける。

「おいレン! 怒ったなら謝る……」

 数歩先にいる使い魔の先にいる「彼女」を見て俺は心臓が跳ね上がった。
 暗がりで顔はよく分からなかったが、「彼女」に間違いないだろう。

 そう、すぐそこには……


薄幸の佳人:弓塚が俺たちの前を横切っていった

不運の麗人:シオンが俺たちの前を横切っていった

禁忌の妹君:え、何で秋葉がここにいるんだ?

混沌の狂獣:猫アルク!? っていうかアレは「彼女」か!?

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最終更新:2007年03月26日 20:11