76 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2007/03/26(月) 23:02:03
とりあえず、コペンハーゲンの新しい店員というのが気になった。
何しろ自分のバイト先だ、これから関わることも多いだろう。
「バゼット、新しい店員って、知り合いか?」
知り合いと書いて危険牌と読む。
バゼットが店員になっただけでもメンタンピンドラドラの満貫状態なのだ。
コレに更に知り合いが加わったりしたら、裏ドラが乗って跳満になりかねない。
「いえ、初めて見る方でしたが」
だが、意外にもその危険牌はあっさり通った。
「え、違うのか?
じゃあ、普通の人?」
「そうですね……私も挨拶程度しかしていませんから、よくわかりませんが」
そう前置きしてから、バゼットは自分の所感を述べた。
「眼鏡をかけた、線の細い若い男性でした。
性格的には、割と軽い方で、オーナーたちともすぐに打ち解けていました。
あまり力仕事に向いているようには見えませんでしたね。
むしろ、バーのカウンターで接客をしているほうが似合いそうな雰囲気でした」
つまり……少し悪い言い方をすれば、優男、ということか。
女なのに力仕事が得意なバゼットとは正反対だ……げふんげふん。
「ふうん。普通の人みたいだな。
大丈夫なのかバゼット?
一般人の前でカウンターとか破壊しちゃったら絶対引かれるぞ?」
主に給料とかな。
「だっ、だから好きでしているわけではないと言ったじゃないですか!
……本当に、こういうところだけ似ているんですから……」
ああ、そうだそうだ、そっちの人のことも聞こうと思ってたんだ。
続けてバゼットをからかった人について尋ねようとした、が……。
「……士郎、そろそろいい加減に……」
ふと隣を見れば、腕組みしている水銀燈のジト目が。
マズイ、もう時間切れか。
「わかった、悪い、水銀燈。
……バゼット。俺はもう行かなきゃならないから。
バゼットは……これから俺の家に?」
「あ、はい。そのつもりでしたが」
「じゃあ、悪いけど、家で待っててくれ。
用事が済み次第、俺もすぐに戻るから」
「わかりました。では、お邪魔させていただきます」
頷くバゼット。
それに軽く手を振って、背を向けて走り出……そうとして、いきなり踏み止まった。
「っと、そうだ、肝心なことを聞き忘れてた。
そのコペンハーゲンの新しい店員さん、名前はなんていうんだ?」
いかんいかん。
よりによって一番大切なところを忘れるところだった。
振り返った俺に、バゼットは相手の名前を告げた。
「白崎、と名乗っていましたが」
「白崎か……わかった、ありがとう」
白崎。
次にバイトに行く時は、その名前を覚えておこう。
そう心に決めてから、俺は再度、水銀燈を伴って走り出した。
走ることしばし。
俺と水銀燈は、眼前に遠坂邸を仰ぐ場所に立っていた。
「……ふう。着いたか」
「ここが真紅のハウスね……」
走り詰めで少し息を切らせる俺と、どこかで聞いたようなフレーズを呟く水銀燈。
そんな俺たちに――。
α:「……来たか小僧」不意に、屋根の上から声が降ってきた。
β:「あら、士郎」扉を開けて、中から私服の遠坂が出てきた。
γ:……おかしいな? だれも出てくる様子がないぞ。
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最終更新:2007年03月27日 00:44