107 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:血跡] 投稿日: 2007/01/18(木) 04:21:25

影がぶつかり合う。

一つは音にも迫らんばかりに一直線に空を駆ける。
対する一つは、耳障りな哄笑と狂気を散らしながら虚空にて待ちかまえる。
……それは幾度となく繰り返された光景だ。
今現在切った札は互いに少なすぎる。
だが、それとて『空を飛ぶ』という一点でもって圧倒的なアドバンテージを有している。
クラスとして最優であるセイバー。
英霊であるその身をして、飛行するという力を持たぬ身である以上、虚実入り乱れる攻勢など不可能である。
その差をして拮抗しているという事実こそ奇妙。
バーサーカーは新たに札を切り、それをして攻めることは幾らでも可能なはずであった。

「くっ!」
セイバーはまたも一撃をいなされ、爪をその身に受けた。
だがその爪の先、腕を右手で掴み、腹部を狙う一撃。
半ば牽制ではあるが、無防備に受ければ肋骨を砕いて余りある威力だ。
その一撃を、セイバーの身体ごと回転して回避する。
バーサーカーは空中であることのアドバンテージを、これ以上無いほど生かしている。
その回転と同時、開いた左腕を突き出し、肩へ掌底を叩き込み、その反動を利用して再び足場へと戻る。

空中に、しかも足場から遠い場所に居る限り優位は動かないと認めたのは既に過去。

だから認めた段階で、作戦を変えた。
彼の『宝具』さえ使えばその状況も動くだろうが、消耗は極めて大きく、何よりこれ以上ないほどに目立つ、それこそ大地を、街を抉る光の剣が如く。
故にその使用は不可能。
そうであるが故に、バーサーカーが動いた瞬間こそが好機。

その瞬間を、息の殺して待ち続ける――



「……よし」
少し不安ではあるが、相手も所持している以上、拳銃の攻撃性能は無視できるモノではない。
莫耶をベルトに挟み、拳銃を両手で構えて消え始めた足跡を追跡する。

勿論、罠の可能性もあるため警戒は必須だが、ただ体勢の立て直しのために逃げているのならここで倒さねばならない。
外の敵――バーサーカーと呼ばれていた――は紛れもない殺人鬼であり、そのマスターも確実に殺人を肯定し、それどころか罪があるのかと問うた。
そのような在り方であるが故に、衛宮士郎は、正義の味方を志す者はその在り方を否定しなければならない。
彼は人を犠牲にしない為に、戦っているのだから。

ビルを抉り取るように大きく開いた穴から先の部屋を覗き見て警戒する。
姿勢は出来るだけ低く、血痕を追跡する。

一つめ、二つめの部屋には特に何か置いてあることはなさそうだ。
血の跡を追い、続けて三つ目の部屋を覗き見る。
「……ん?」
部屋に血が広がっている。
溢れた跡と言うよりも、結果として溜まったような跡だ。
「後ろを警戒して立ち止まったのか? それとも何か……」
物陰から出て、血溜まりに触れる。
埃や破片で白く汚れているが、やはり乾いては居ない。
ふとその先を見る。
抉り取るような穴は変わらず、だが。
「血痕が、途切れている?」
突然すぎる出来事に、咄嗟の思考が追いつかない。
罠? だとすればこうして注目して動きが止まった段階で何かをされているはずだ。
周囲を見渡すが爆発物や細いワイヤーのような物は……ない。
「だとすれば……なんだ?」
バックトラック?
いや、そうだったとしても血痕は残るだろうし、そんな元気があるならやはり攻撃をしてくるのではないだろうか?
あの時使われた魔術は防御のみという事から、防御のみに特化しているという仮定の下で、さらに武器が無いとすればその疑問は解消できる。
「とはいえ、血の跡が消えたことの説明にはならないよな……いや、待てよ」
今夜の衛宮邸での戦いで、桜が腕に影を巻き付けて止血処理をしていた事を思い出す。
防御魔術の応用で、似たような事が出来るのか?
追撃を警戒しながら止血すると同時に、その処置の際に生じる自らの血の跡に注目させ、警戒させて距離を稼ぐ。
……ありえるな。


強襲:そうはさせない、一気に追いかける
警戒:いや、そう考えさせるのも罠だとしたら?

投票結果

強襲 4
警戒 5 決定

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最終更新:2007年05月21日 17:27