163 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:夜間屋内戦] 投稿日: 2007/01/22(月) 04:15:45

伏せ姿勢から立ち上がる事なんてできはしない。
元より脆いと言うことを差し引いても、遮蔽物を簡単に撃ち抜いて飛び去るその弾丸は身体のどこに当たろうとその部位を吹き飛ばすことになるだろう。
そんな予感があったから、立ち上がることなく、匍匐状態のまま部屋の外を目指す。
部屋の外から気付かれることなく接近しなければならない。
拳銃があるとはいえ、機関銃と比べれば火力は著しく落ちる。
理想型を言えば、零距離から一撃で心臓を撃ち抜く事。
一撃で倒し、反撃の隙を与えないことだ。

……自分に出来るか?
もう一度、誰かを殺すことが出来るか?
首を振り、考えを打ち消す。
「……できるさ」
自分に言い聞かせ、手にした拳銃を握り直す。


次々と手元の銃から弾丸が発射され薬莢が落ち、目の前の遮蔽物に穴が開いていく。
反撃はない。
倒したのか?
……その保証はない。
糸のトラップには引っかからず、その真上に設置された赤外線のトラップには引っかかった。
つまりまず間違いなくその瞬間までは生きていた。
……右手を失ったのは痛い。
出血は止まっているし、発砲動作そのものに支障はないが、二挺装備は不可能となった。
義手にしたとしても、恐らく元に戻ることはあるまい。
「聖杯に望むことが増えた、な……」
己の望み、『完璧なる存在』になるために、欠け落ちた部分は存在してはならない。
その為に聖杯を望み、願う為に銃火器の取り扱いにも精通したし、魔術の鍛錬も怠らずに続けてきた。
だが右手は切り落とされた。
近接戦闘の技術は未習得だった。
バーサーカーで敵サーヴァントを分断し、防御魔術で防御しつつ敵マスターをトラップと銃火器で攻撃する。
それが彼の想定した必勝となるはずの戦術であった。
だが接近され、右手から切り落とされた。
「実戦経験の差、か……」
防御魔術の突破はしえないようだが、魔術の解除から攻撃、再展開の間に攻撃された。
数度、いや、それ以上の実戦経験があると言うことだろう。
そしてこの必勝戦術を試すのは今夜が初めて。
人寄せの魔術は既に停止し、己の内に魔術を溜めておく。

ちらりと机に立てかけられた銃器に目を向ける。
M16A2。
米軍で正式採用される信頼性の高いアサルトライフル。
今夜このビルに運び込んだ武装はこれで全て。
「確実に殺しきる……!」
完全なる殺意を込めて、隣室へ向けて途切れ途切れに弾幕を張る。
それでも、ベルト給弾式のMG3の弾丸が切れるまであと一分もない。


廊下に出て、発射元を探る。
発砲音が連続してに聞こえてくるので探り当てるのは比較的簡単だった。
「……いた」
ちらりと覗き見ると、左腕で引き金を絞り、先程まで居た部屋へ、今となっては明後日の方向に向けて乱射を続ける男が見えた。
瓦礫が変な風に邪魔をしている上、瓦礫の山を越えてしまえば敵まで障害物はない。
恐らく敵までは30メートル前後。
そして気付かれれば恐らくやられる。
……ここから拳銃で狙撃する。

頭を狙えば恐らく必殺だろうが、扱ったことのない拳銃という武器で小さい頭部に当てられるかは分からない。
攻撃手段を奪うという意味では残った左腕だろうが、否定要素は頭部に同じ。
だとすれば狙うのは胴体か?
胴体を狙えば恐らく当たるだろうが倒せるかと言われれば恐らく否、だろう。
それに、足下には予備の物である火器が置かれている。
持ち運びを前提にして居るであろうサイズの火器を壁に向けて撃つことはないだろう。
……恐らくチャンスは一度。
伏せ撃ち体勢ならば命中精度が上がるだろうが、外して気付かれれば次の動作に移るまでに時間がかかる。
立ったままでは次の動作に移るまでの時間は最速だが、肝心の命中精度は下がるだろう。
折衷案は膝立ち姿勢で、中途半端かもしれないが、即応も取れると言う意味では重要かもしれない。

少し痺れの取れた左手を添え、狙いをつける。


ダブルクロス
1:立ち撃ちの姿勢で――
2:膝立ちの姿勢で――
3:伏せ撃ちの体勢で――

A:頭部を狙う――
B:左手を狙う――
C:胴体を狙う――

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最終更新:2007年05月21日 17:28