252 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:浮雲] 投稿日: 2007/01/29(月) 04:23:25

同時刻・S市教会
『え――?』
二人は同時に声を発した。
「今の気付いた? キャスター」
凛のその問いに、彼女は無言で頷く。
「良くは分からないけど……繋がりが切れたような感じが」
「私もよ、セイバーとのリンクが切られたわ……」
「まさか、二人に何か……」
「分からない、なのは……キャスター達とのリンクは繋がってるみたいだけど……」
二人は異常を察知したが、その理由を理解することは出来なかった。

「市街地か、わかった」
話を聞くと、神父は武装部隊を調査に向かわせた、目的は戦うことではないが、戦えなければ逃げることも出来ないからだ。
「……君達にとって幸運かは知らぬが、丁度後始末を終えた部隊が近くにいる、数分後には到着出来るだろう」


互いの気が衝突し、霧散し、消失する。
「はあっ!」
「シャアアッ!」
直後に繰り出されたのは互いの拳。
鋭く研ぎ澄まされた爪は既に刃物であり、対する鍛え抜かれた達人の技は拳を刃物の領域へ昇華させる。

肩口を抉る、頬を抉る。
「セイイイッ!」
「死ッ!」
セイバーの、目を狙う手刀を回避し、バーサーカーの掌から撃ち出される光弾を回避する。
撃ち出された光弾がビルの屋上に食らい込み、粉砕した。

攻撃を重視し、回避すら殆どせず、ただただ致命的な一撃だけを避け、次々致命の一撃を繰り出す。

戦いは、バーサーカーのペースで進んでいる。
乱打戦による力押しの戦い。
外界から隔絶し、元より少ない供給すら絶たれたセイバーと、人の魂を食らい、さらに主の死を持って極大にまで、魔力を供給されたバーサーカー。
その二者による消耗戦が行われれば、結果は明らかだった。
だが、そこで行われているのは消耗戦ではなかった。

狂化したサーヴァントの一撃は途方もなく強い。
だが、その実変化に欠ける。
大英霊となれば話も変わろうが、目の前の存在の連撃には幾つかのパターンが見え隠れしていた。
そしてそのパターンを、見切る。

セイバーは、敢えて隙を大きくした大振りの一撃を放つ。
それは至近の戦いに於いて致命的な隙となる事を理解した上で。
「ヒャアッ!」
バーサーカーは歓喜の声と共に心臓を抉る。
その為に繰り出された爪の一撃が空を切った。
途中からセイバーは攻撃を上半身のみに絞っていた。
その為バーサーカーは下半身の防御を無意識下で怠っていた。
さらに拳の大振りによってバーサーカーの動きはコントロールされた。
その動きにあわせて放たれた足払いを回避することなど出来はしない。
足払いは完全に決まり、バーサーカーは無防備を曝した。
その隙を逃さず、地面との僅かな隙間にその身を潜り込ませる。
「掌ッ!」
地面という支えを己の味方とした渾身の掌底を真下より叩き込まれ、バーサーカーが宙を舞う。
近接戦に没頭していたため、空に逃げることさえ瞬時には出来ない。
宙を舞ったバーサーカーに追随する。
地面に叩き付けるのは容易だが、叩き付けるべきは地面ではなく、給水塔だ!
その判断は跳躍と同時。
胴体を分断させるような渾身の回し蹴りを受け、バーサーカーは幾つも鉄骨の突き出た給水塔へ吹き飛ばされ、激突する。
貯水槽に穴が開き、夥しい量の水が流れ出す。

着地し、一瞬だけ錬気し、バーサーカーの元へ跳躍する。
まだ生きていると確信があった。
「ガ……アアアアアアアッ!」
腹部を貫通した鉄骨を意に介さず、バーサーカーが腕を振るった。


「え?」
ビルを降りていく最中に、真横へと吹き飛ばされる感覚を覚えた。


振るわれた腕の先で、ビルが折れ瓦礫と化して、セイバーへ向け、二人の戦うビルへと放たれる。
「なっ!」
巨大な瓦礫に潰されれば、悪ければ即死、生きていようと戦闘続行は極めて難しくなる。
その判断と同時、バーサーカーの目前で全く別方向に跳躍する。
「なんて非常識な……!」
空中で思わず怒気を溢す。
自滅覚悟で放たれたであろう一撃は瓦礫とビルの衝突を生み、その埃が生み出す煙と生み出された大小の瓦礫が視界を奪う。
「くっ……」
そのまま地面まで落下しかけるが、手近な壁面を蹴り別のビルに着地し、油断無く煙の先を見やる。

数分の後、煙が晴れる。
抉れ、吹き飛び、無惨な姿を曝したビルの屋上には――


そして誰もいなくなった:誰もいなかった
運命の裏木戸:衛宮士郎が倒れていた
暗い鏡のなかに:傷だらけの姿で笑みを浮かべるバーサーカーの姿があった

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最終更新:2007年05月21日 17:51