258 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:足枷] 投稿日: 2007/01/30(火) 05:07:36
「う……」
突然、建っていたビルごと真横に吹き飛ばされた。
そして瓦礫と化したビルごと別のビルに叩き付けられた。
こんな圧倒的な力を前にしては為す術などあるはずがない。
「士郎君――!」
視界の中央に、幾つかの階が抉れ飛んだビルの屋上で倒れ込んだ衛宮士郎。
そして視界の隅に、瓦礫の影で立ち上がろうとするバーサーカーが見える。
……最悪の想像が頭をよぎった。
「……くっ!」
二人の間に立ちはだかり、意識の失せた士郎を庇う。
隣のビルからの全速の跳躍は、獲物を見つけたバーサーカーの飛翔とほぼ同時。
バーサーカーの右腕が士郎の脳を抉る直前、セイバーは自らの左腕を貫かせ、軌道を逸らす。
続くのは士郎の首を狙う蹴り。
その一撃は左足で受け止める。
「これ以上は……!」
機を制する体当たりで間合いを開けさせる。
その一撃は喉を打つ一撃だったが、その一撃を受けてなお口元には笑みが浮かんでいる。
その笑みは狂気に彩られながらも、行動は狡猾であった。
それは生存本能であると同時に、己が消えることを受け入れた上での、道連れを求めるようでもあった。
「士郎君! 目を覚ましてください! 士郎君!」
続く連撃を受け止めながら、振り返る事も出来ず呼びかける。
だが、ビルが折れ飛ぶほどの衝撃を受けたのだ、恐らく気絶はビルの分断と同時。
それでもなお双剣を握りしめているのは大した物だが、意識が無ければその剣を振るうことなどできはしない。
間合いが詰められる前に詰め、機を制し続ける。
だがそれを続けることは出来ない。
一対一の状況ならばそれも出来よう、だが、気絶した人間を庇っての戦闘には縛りが多すぎる。
バーサーカーは衛宮士郎を狙うことを全く躊躇せず、むしろ無防備の人間を殺すことに喜びすら見出している。
撃ち出される光弾の弾道を見切り、放たれる直前に腕を攻撃して軌道を逸らす。
声が聞こえる。
音が聞こえる。
戦っている。
……呼んでいる。
だが、起き上がることが出来ない。
脳が、神経が馬鹿になってしまったかのようだ。
起き上がってくれ。
勝てないのは良い。
だが、足手まといになるのは駄目だ。
その為には、立ち上がらなければ。
動かない身体は無理矢理に動かせ。
普通の神経が駄目なら、魔力回路を神経代わりにして動け。
無理が通れば道理は無視できる。
そして、それが当然だと思えれば、次の無茶が出来る。
それで良い。
握ったままの双剣を握り直す。
激痛が走る。
指先を僅かに動かすことも出来ない。
危険だと、脳も神経も身体も訴えている。
――うるさい、黙れ
心臓の動きを確かめると同時に呼吸を再開する。
全身に痛みが走る。
――この身体は、俺の身体だ
左足へのダメージは深刻、大静脈より出血。
――だから、動け、言うことを、聞け
「グ……ウウウウウッ!」
一気に立ち上がる。
同時に、穴が開いている、出血の止まりかけていた左手からも血が再び噴き出した。
「士郎君、無事ですか?」
「……なんとか」
咳き込みながらもどうにか返答する。
飛んできた光弾を倒れるように回避する。
頭の上を掠めて光弾は消えた。
「逃げてください! ここは私が抑えます!」
頸動脈を抉る一撃をバックステップで回避する。
「……逃げ、る?」
「そうです、まだこの近くに生きている人が居るはずです、その人を連れてここから離れてください」
脳が役割を放棄した状況でそんな声を聞いた。
足手まといにならないために、ふらつく全身を制御し――
DEAD RISING:バーサーカーに斬りかかる
Medal of Honor:握ったままの双剣を投げつける
Silent Hill:この場所からなんとか逃げ出す
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最終更新:2007年05月21日 17:51