285 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:戦闘終結] 投稿日: 2007/02/02(金) 04:52:30

己の剣を解放する。

幻想の柄、幻想の刃を、招喚する。
錬気されたのは炎。
燃えさかる巨大な刃を招喚する。

「天よりふりそそぐもの――」
セイバーの手には何もない。
途方もない気を纏い、無手のまま虚空より来たる。

「オオオオッ!」
超重力の檻の中、ただ一人囚われざる狂者が絶叫する。
消滅を始めた全身を黒く染め、自らを蛇と化して虚空へと突撃する。

その姿を、彼は偶然目にした。
その戦いは、余りにも過酷でありながら、途方もなく美しく映った。

致命的なまでに両者は交錯するその直前、刃が出現する。
巨大すぎる炎を纏う刃がバーサーカーの体を二つに分断し、霊核をも完全に破壊した。
縁が消えていたバーサーカーは、交錯の一瞬で消滅した。
僅かに間を置き、ブラックホールも力を失い、飲み込まれ、消失を免れた物体が重力に従って地面に次々と落ちていく。
セイバー自身は、バーサーカー最後の一撃で虚空に投げ出され、飲み込まれることは免れた。


「……先生、無事ですか?」
士郎のその声で目を覚ます。
技の直後、一撃を食らった直後、魔力不足で気を失ってしまっていたようだと自己分析をする。
自身を再び省みれば、結界が解除されたのか、魔力は僅かに補充されている。
「……私は大丈夫、掠り傷です」
セイバーはそう答えたが、誰の目にも重傷は明らかだった。
「そんな、さっきので頭は打ってないと思いますが、それでもあの高さから落ちたんです……どこか痛いところとかそう言うところだって」
それ以上は言わせなかった。
「それよりも……先程言ったようにこの辺りに誰かが居たはずです……探してください、私は意識をしっかり持っていますから」
「は、はい!」
士郎が走り去っていく。
「あの状況では生きている可能性は極めて薄いでしょうが……」
それでも一縷の望みはあるはずだ。

全身の状況を改めて診直す。
浅い負傷や打撲は除外し、痛む地点を軽く触診する。

頭蓋骨同士を繋ぐ筋肉が切れ、頭蓋骨が外れかかっている。
頚椎捻挫。
内臓……位置からすれば膵臓まで達した鉄骨による刺傷。
左腕動脈裂傷。
右鎖骨骨折。
肩から腹部に……

途中で重傷を数えることさえ止めた。
改めて診てみれば相当に酷い物だが、幸い足のダメージで歩けないほどの負傷はないようだった。
溜息一つ付き、立ち上がる。
士郎の走っていった方向とは逆の方向に気配を感じたからだ。

複数人。
武装し、武器を向けているが敵意の類はなさそうだ。
少しだけ気を抜くと、僅かに立ち眩みがした。
「生存者確認、負傷している模様、指示を」
通信機に向かって何事か話す。
「わかりました、収容します……おめでとう、君がこの現場の生存者第一号だ」
各員に武器を下ろすように指示し、歩み寄ってくる。
「ありがとございます、まだ生存者はいるので収容はもう少し待ってから……」

「先生」
後ろから声を掛けられる。
振り返るとそこには――


殷の紂王:困った表情の士郎と、士郎に抱きつく少女の姿があった
秦の始皇帝:安らいだ表情の士郎と、抱きかかえられた少女の姿があった
隋の煬帝:焦った表情の士郎と、抱きかかえられた少女の姿があった

投票結果

殷の紂王 5 決定
秦の始皇帝 1
隋の煬帝 2

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最終更新:2007年05月21日 17:56