904 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/08/16(水) 21:55:50


「古い鏡?」

「そう。姿身くらいの大きさがいいわ」

 姿見、というと、着付けを調えるような等身大の鏡か。
 それを欲しがるということは、やはり水銀燈も身だしなみを気にしたりするのだろうか。

「この三日間、様子を見ていたけど。やっぱり待っているのは性に合わないわぁ」

 ん……?
 どうも、水銀燈の言葉から鑑みるに、どうやら身だしなみとかそういう話では無さそうだ。

「様子を見ていた……って、なにがさ」

「決まってるじゃない。他のドールたちが動くのかどうか、よぉ」

「……それと鏡と、何の関係があるんだ?」

「知りたいの? ……そうねぇ、持って来たら教えてあげるわ」

 むぅ。
 相変わらずこちらの知りたいことははぐらかされている気がする。
 俺の功夫不足なのか、それとも水銀燈が一枚上手なのか。
 それにしても……。

「薔薇乙女《ローゼンメイデン》、か……」

 俺はこの数日で水銀燈から聞いた彼女の生い立ちを思い出した。
 薔薇乙女《ローゼンメイデン》。
 人形師ローゼンによって造られたドールシリーズ。
 七体の人形からなる彼女たちは、ローゼンの求める究極の少女『アリス』を形にするために造られたという。
 水銀燈はその中の第一ドールであり、もっとも優れたドールである……と。

「最後のはちょっと怪しい気が……」

「何か言ったぁ?」

「い、いや、なんにも?」

 味噌汁を啜りながらジト目で睨んでくる水銀燈に、即座に否定で応える。
 ……水銀燈と契約してから、時々俺の考えていることが水銀燈にも伝わるようになったようだ。
 おかげでうかつなことは考えることも出来ないが……
 もしかしたらそのうち、セイバーの時と同じように水銀燈の夢を見るようになったりするのだろうか?

「そう……? とにかく、鏡を用意しなさぁい。なければあなたの夢からねじりこむわ」

 い、一体なにをねじりこむと!?

「わかった、鏡だな?
 確かこの中にあったような気がするから、帰ってきたら探してみよう。
 それまでは大人しくしていること」

 とりあえずねじりこまれるのは嫌なのでガクガクと頷く。
 そこへ、


α:「シロウ、もう学校へ行く時間ですが」という声がした。
β:「士郎? もたもたしてると遅刻するわよ?」という声がした。
γ:「先輩、そろそろわたし行きますね」という声がした。
δ:「士郎、桜が出かけるようですが」という声がした。
ε:「士郎―、おねえちゃんもう行くねー」という声がした。

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最終更新:2006年09月03日 18:21