351 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:夢と目覚め] 投稿日: 2007/02/10(土) 05:15:14

トンデモナイ夢を見た。
もうとにかく支離滅裂で、トンデモナク楽しい夢だったのか、トンデモナク怖い夢だったのか
それさえも確かじゃないぐらい、ごちゃごちゃした夢を見た。
『歌月十夜』

夢を見た。
それは、自分の恋人を殺してしまった男の夢であったり。
陰謀の糸を引く策略家の夢であったり。
世界から悪であれ、善であれと押しつけられた不幸な二人の夢であったり。
――君はやることが変わらないね、いつもいつも、そんなに彼が気に入ったのかい?
突如戦争に巻き込まれた少年の夢であったり。
恋人を殺された復讐者の夢であったり。
狂気に走ってしまった男の夢であったり。
――それは君もだろう? いつもいつも人を愛してばかりだ
勿論のこと女性の夢もあった。
神に反逆し、遂には神を討ち滅ぼす夢もあった。
守る物をして破壊し、破壊する物をして守る夢もあった。
異質なるものの夢もあった。
自分が殺される夢もあった。
自分が人を殺す夢もあった。
絶望的な夢もあった。
希望に満ちた夢もあった。
とにかく沢山の人生を夢見た。

とにかく、支離滅裂だった事だけしか覚えていないだろうと確信できる。
そう、見ているままに夢だと確信できるような、トンデモナイ夢。


その夢は、心地よい重みで中断された。
目を開ければ、既に太陽は昇りきっている。
日差しが目に眩しい。
どうやら、思っていた以上に深く眠ってしまっていたらしい。
その視線を体の方へ、上から下へ向ける。
「おはよう、シロウ」
「ああ……おはよう、イリヤ」
さらにその先を見ると、握り拳を悔しそうに見つめるノインの姿が見える。
……察するにジャンケンで負けたらしい。
だがその姿には和まされる。
昨日の今日で、少なくとも桜やイリヤとは打ち解けてくれたらしい。
それは底抜けに嬉しいことだ。
「朝ご飯、そろそろできるって、サクラが」
「ん……分かった、ありがとな、イリヤ、ノインも」
ノインの顔がパッと華やいだ。
イリヤの手を取ってぱたぱたと走り去っていく。
ああ、その姿は見ていて楽しい。
今日は二人とどこかへ行く、と言うのもありかもしれないな。
起き上がろうとして、昨日のままの服装で眠ったことを思い出す。
「あ……そうか」
上着の胸ポケットに手を突っ込む。
「こっちも、確かめた方がいいかもしれないな」
取りだした鍵を握りしめて考える。
「とりあえず、着替えるか……」


352 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:社会的反応を受けて] 投稿日: 2007/02/10(土) 05:16:23

『続いて地方のニュースです、昨夜未明、M県S市にてテロ事件が発生しました、詳細は不明ですが、市街地の一部が爆破されるなど……』
『自衛隊や在日米軍報道官の発表によればその時刻M県近郊での飛行記録はないとされ、政府は……』
『えー、こちら現場です……見えますでしょうか? 立ち入り禁止区域の先にあります倒壊したビルが……』
カチャカチャとチャンネルを変え、一通り見終えてテレビを切る。
「やっぱり大事件になってるわね、昨日のは……」
寝起きで余り働かない頭を必死で動かして、最悪の想像に近い社会の反応に絶望気味に言う。
もう一度思い切り昼過ぎまで不貞寝をしてしまいたいと本気で思った。
「そうですね、さすがに教会の情報操作も限界があったと言うことでしょう……とはいえ、全国ではテロ事件らしいとしか報道されていないようですよ?
 この全国紙はそれも疑わしく、何かを隠すためのでっち上げじゃないかという論調のようで、情報操作は効いていると言えるでしょうね……」
新聞を読みながらセイバーが言った。
「そうなの? ……その論調の新聞貸して貰える?」
「はい、どうぞ」
三紙の内の一つを手に取り手渡す。
一面を一通り読み終え、あとはパラパラと捲っていく。
「……そうみたいね、もしそうだとすれば深夜に警官の大量投入とかは無いって事かしら」
もし警官の大量投入などという状況になれば人目を避けて戦う為には人払いの結界のような魔術が必要になる。
そうなれば他の魔術師から補足される危険がある。
「そうですね、そんな事態は避けたいところです……とはいえ、私達は暫く怪我の治療が必要でしょうけど」
「……そうね」
昨日の戦い、バゼットは行方不明なままだが、それ以外に脱落者はなかった。
しかし、バーサーカーと交戦したセイバーは、外見や物腰こそ平素と変わらないままだが撃破に成功する物の致命傷になりそうな大怪我を幾つも負った。
別の場所で別のセイバーと交戦したフェイトもかなりの重傷だった。
それどころか重傷を負って尚長時間にわたって無茶をした為に何らかの後遺症が残る可能性すらある。
少なくとも一晩で完治するような怪我では無かろう。
二人以外にも、全くの無傷だった者は居ない。
比較的軽傷なのは全身打撲や軽度の火傷を負った凛や、魔術の一撃を受けて気絶したままだったキャスターであるというそりゃあもう笑えない状況であった。
そりゃあもう、溜息の一つだってついてしまうというものだ。

「あ、姉さん、珍しいですね、こんなに早く起きるなんて」
盆に皿を幾つか乗せて茶の間から桜が顔を見せた。
「桜、もう手の怪我は良いの?」
桜も、掌から肘近くまでを貫く刺突を受けて相当なダメージだったはずだ。
その上教会で治療を受けたわけでもない為怪我の痕だって多少残っているだろう。
「ええ、料理をする分には大丈夫です、痛みもそんなに無いし、握力もありますから射だってできちゃいます」
そう言って袖を捲り、腕に巻いた包帯を見せる。
「そう、それなら良かった……」
安堵の息を漏らす。
「コーヒーでも煎れましょうか?」
「ええ、頼むわ」
「では私にも頂けますか?」
「はい、任されました」


353 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:穏やかな朝] 投稿日: 2007/02/10(土) 05:17:31

一息ついたところで縁側で朝日を浴びる。
温度は低めながら良い天気で、出掛けたりするのに絶好の日になりそうだ。
「んー……」
思い切りのびをする。
眠気が少し飛んでいくような感覚があった。
「あら、遠坂さん、おはよう」
「あ、おはようございます、藤村先生」
「いやー、今日はみんな早起きさんねー、健康健康」
おなかすいたわーと食卓に向かっていく、実にわかりやすく、かつ健康的な行動だった。

「あ、氷室先輩、そのお醤油取っていただけます?」
「ん? これでいいかな?」
ずらりと並んだ調味料置き場からさっと小瓶を手渡す。
「はい、ありがとうございます」
受け取った醤油を少量鍋に入れる。
「すまないな、やはり料理はどうも不得手で……その上こうも見事な手際でされれば皿を並べる程度の事しか手伝えん」
油と卵が鍋の上で弾けると、醤油の香ばしい臭いが台所に充満した。
「いえいえ、助かります」
「ときに衛宮はどうした? 朝は遅いわけではないのだろう?」
「そうですね、少し疲れてるのかもしれませんから、出来上がってまだ起きてこなかったら起こしに行きましょう」
「……それならば私は蒔達を起こしてこよう、決して朝が弱いわけではないだろうが、少し気になるのでな」
「はい、分かりました、お願いします」

「気持ちの良い朝ですわね」
「うむ、そうだな……気候も温かい、過ごしやすい一日になりそうだ」
今日は比較的寒い朝だったが、北欧出身の二人はそう呟く。
「あ……おはようございます、ルヴィアさんと、カールさん、ですよね?」
朝の起き抜けだったため、まだ半分寝ている頭を下げる。
「ええ、そうですわ、ミスサエグサ、よい朝ですわね」
どこからともなく鳥の鳴き声が聞こえてくる。
「そうですねー、いい天気ー」
そう言って目を輝かせる姿は、人を和ませる。
「無邪気で可愛いものだ」
目を細めてジェネラルが笑った。

「……?」
軽く目を擦ってみる。
どうやら見間違いじゃないらしい。
「おはようございます、タイガ」
「……ライダーさんが、二人いる?」
茶の間に同時にライダーが現れた。
双子や姉妹という程ではないが、外見的特徴を列挙していけば二人は姉妹に見えてくると言う物だ。
違いと言えばメガネのあるなし程度しかない。
しかも二人のライダーはお揃いの服を着込んでおり、ますますそれらしい。
「えーっと……姉妹の方?」
「ええ、お恥ずかしながら、昨日からお邪魔しております、シャリフと言います」
軽く頭を下げる。
「はあ、こちらこそ、よろしくお願いします」


穏やかな朝、衛宮邸の時間は流れていく。

平和な朝:程なく朝食が出来上がり、居間に全員が集合する
用件を告げる電話:そんな中電話が鳴った
早朝の来客:そんな中来客を告げるベルが鳴らされた

投票結果

平和な朝 4
用件を告げる電話 1
早朝の来客 5 決定

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最終更新:2007年05月21日 18:26