365 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:穏やかな来訪者] 投稿日: 2007/02/12(月) 04:08:50
そんな中来客を告げるベルが鳴らされた。
警報ではなく、来客を告げるだけの音だ。
「こんな朝早くから、誰だろ?」
多少疲れは残っているが、幸い目は覚めている。
顔も洗ったし、誰が来ても一応平気だろう。
「どうぞ」
その声と共に玄関の戸が開けられる。
「朝早くから済まないね」
昨日家を訪れた、ヴェルナーと呼ばれた男性だ。
「あの……いくら何でも早すぎませんか?」
この時間に起床するのは良くあるだろうが、人を迎えに来るにしては早すぎる時間だ。
「うむ、そうは思ったのだが、老人の朝は早い、と言うことで許していただきたい」
そう言って軽く微笑みかける。
そこに昨日のような怒気は感じられない。
「……不思議かね?」
疑問を察したように口にする。
「え、ええ、まあ……」
曖昧にしか答えられない。
何故怒ってないのか等と言えるはずがないのだから。
「簡単な事よな、イリヤスフィール嬢が信頼しているならば信頼できる、それに昨日の戦い振りも、甘いところはあるが中々の物であった」
うんうんと頷く。
……気付きはしなかったがあの戦いを見ていたのか。
見ていたのならば助けて欲しかったとは思ったが、事情もあるのだろうと察し、それは表情にも出さなかった。
「まあ、早いというのならば庭で待たせて貰うが」
そう言って踵を返そうとする。
「ちょっと待ってください、イリヤはすぐに城に返さないと行けませんか?」
「ん? ああ……別に日が沈むまでならば構わんよ」
溜息混じりにそう言う、すぐにその意図を察知してくれたらしい。
「やれやれ……私は責務を果たそうとしているだけなのだが嬢へのその溺愛振り、これでは私が悪者のようだな」
腕を組んで含み笑いを漏らす。
「あ、それと待つなら家の中で……」
「いや、遠慮しておこう、若者が何人もいるようだし、そこに老人が居ては気を遣おうからな……気にせんでくれ」
玄関の靴を見渡して言った。
「そうですか……わかりました」
「うむ、それで良し」
そう言って戸が閉められる。
「シロウ……ありがと」
ふわりと背中にイリヤが乗ってきた。
突然のことに驚いたが、別に気にすることでもあるまい。
「気にすることはないぞ、それよりも、城に帰るのは夕方で良いって事だから、今日はみんなで遊びに行かないか?」
こっそりと耳打ちする。
「朝起きてからの思いつきだから、どこに行こうとかそう言うことはまるで考えていないけどな」
「……うんっ!」
それでも、イリヤは笑ってくれた。
そうこうしているうちに居間に全員が集まっていた。
さすがにこの人数になるとテーブルが小さすぎるのでどうしようかと思っていたら藤ねえが「土蔵にテーブルがあるはずよ」なんて言ってくれた。
ちなみに知らぬ間に藤ねえがどこからか手に入れてきた代物のようで、少し埃を被っていたが問題なく使うことが出来るようだ。
「しかしどこから持ってきたんだこういうの?」
大きさはそれほど大きくはないが、どこかから運んでくるのは一人だと辛そうな代物だが。
……まあ、前に畳の半分くらいある鯛焼きの鉄板もあったしなぁ。
深く考えるのはやめよう、足を畳めるタイプのテーブルだし、きっと畳めば運べるんだろう、重いけど。
「よいしょっ、と……あ、そっち持って上がってください」
「うむ、心得た」
一緒に運んでくれたのはジェネラルだった。
ひょいと持ち上げて縁側からテーブルを入れる。
足を展開して、雑巾で拭いてから、濡れ布巾で軽く拭う。
「これで良し、っと……」
ふうと一息。
実に久々に土蔵の中身が役に立った例である。
さて、これでスペースの問題も解決したし――
ラヴォーチキン:朝食の用意を手伝えなかった事もあるし、配膳位は手伝うことにしよう
ミヤシシェフ:居間でゆっくりしていよう
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最終更新:2007年07月19日 18:44