216 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/08/20(日) 20:58:48


 ――まきますか? まきませんか?

「まきます」

 いや、包帯をなんだけどね。

「幅が余るな……半分くらいに裂いて使おう」

 藤ねえを見送った後、俺は自分の部屋に戻った。
 学校に行く前に、この薔薇の指輪を上手く隠さなければならない。
 幸い、家には応急道具の類は豊富にある。
 とりあえずは包帯でも巻いて誤魔化しておけばいいだろう。

「ん……なんか、薬指だけだと余計に……」

 指輪の出っ張りが目立ちすぎてしまうようだ。
 ここは中指もまとめて巻いてしまおう。
 薬指と中指が固定されてしまうが、大して支障が出ることも無いだろう。

「……よし。こんなもんかな」

 巻き終えた包帯を見て一人頷く。
 時間を見ると、いつの間にか俺も登校しなければならない時間だ。
 応急箱を閉めて片付けると、学生鞄を手に立ち上がる。

 出かける直前に、玄関でセイバーとばったり出くわした。

「シロウもこれから学校ですか」

「ああ。桜と遠坂はもう出かけたのか」

「ええ、桜は部活動のため早めに。凛はつい先ほど出かけたようです」

 と言うことは、俺が一番最後ということか。

「そっか。じゃ、俺も行ってくる。今日は早めに帰ってくると思うから」

「わかりました。お気をつけて、シロウ」

 セイバーの声を背中に受けながら、俺は玄関の戸を勢い良く引きあけた。

217 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [Fateキャラ出てこないねsage] 投稿日: 2006/08/20(日) 21:01:55


「つまりこの歌の訳は、
 人目を忍ぶ私の通い路の守り手は出来れば毎晩眠っていて欲しい、
 ということであって……」

 午前中の授業の間、先生の講釈を聞きながら、俺は別のことを考えていた。
 俺の左手に嵌められている、薔薇の指輪。
 薔薇乙女《ローゼンメイデン》の人工精霊に選ばれたミーディアム、その証。

 水銀燈は今朝、『他のドールが動くかどうか様子を見ていた』と言っていた。
 それはつまり、この現代において、
 水銀燈以外のドールも目覚めている可能性があるということだ。
 薔薇乙女《ローゼンメイデン》が目覚める時期を選定するのは人口精霊だ。
 つまり、人口精霊は、申し合わせたかのように、
 ドールが目覚める時期を合わせている――?
 だとしたら、その理由は?
 ドールが二体以上目覚めるで、何かが起きるというのだろうか?
 関係するのが、恐らくは水銀燈が欲しがっていた『鏡』なんだろうが……。

 水銀燈以外の薔薇乙女《ローゼンメイデン》。
 そして、そのミーディアムもまた、俺以外にも存在するのだろうか。
 いや、もしかしたら、俺の身近なところ……例えば、そう、この学校の中にだって――。

「まさか、な」

 周囲に聞かれないように、こっそりと一人突っ込む。
 仮に契約した人間がいたとしても、それが俺みたいな年齢の奴だとは限らないんだし。
 そもそも七体しか居ない人形の契約者が、同じ町にいる確率は限りなくゼロに近いだろう。

 そんなことを考えている間に、チャイムが鳴った。
 国語教師が教科書を閉じ、教室から出て行くと同時にざわめきが室内に満ち出す。
 これで午前中の授業は終わり、昼休みとなったわけだ。
 教室内では、早くも弁当を広げ始めている奴、
 購買へむけて走り出す奴、
 何人かで集まって学食へ向かう奴もいる。
 俺も教科書とノートを机の中に押し込むと、席を立って廊下へ出る。
 いつもならば弁当を作ってくるのだが、
 最近は水銀燈の朝食のために時間を取られ、
 弁当を作ってくることが出来なかったのだ。
 今日は――というかここ数日も、なのだが――学食か購買で昼食になるな……
 そう考えながら廊下を歩いていると。


α:弓道部の元主将、美綴に声をかけられた。
β:陸上部の三人娘、蒔寺・三枝・氷室に出会った。

投票結果

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2006年09月03日 18:25