255 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/28(木) 03:25:11
この際応急修理でも一応形を保っておけばそれでも良いのか……本格的な修理はあとでじっくりと……
いや? 待てよ……
「どうなさいました?」
それはちょっとした思いつきだった。
「えーっと、ちょっと試してみたいことがあるから彼には待ってて貰えるように頼めるかな?」
「え? ええ、その位なら良いですけど」
「ああ、悪いな、ルヴィア」
茶の間に入りキャスターを捜す。
「遠坂、キャスターは?」
「ん? 庭の確認に言ったけど、どうしたの?」
水場の下の道具入れを確認していた遠坂が振り向く。
「いや、夕飯の後の話、覚えてるだろ? キャスターの宝具の話」
「もちろん覚えてるわよ、現実をねじ曲げるって……ああ、そう言う事ね」
「そう言うこと、俺は無理だったけどキャスターの宝具なら、呪いを解呪するとか出来るかもしれないだろ」
直接修理できればベストだけどと続ける。
「それにしても……英霊をこんな事に使うなんて罰当たりね、士郎」
遠坂が笑う。
彼女にしてもかつてサーヴァントをお茶汲みに使った物だったが。
「ああ、そうかも」
つられて笑った。
庭では、キャスターとルヴィアのサーヴァントが談笑していた。
ベテラン俳優とその追っかけ女子高生といった雰囲気で、互いの表情は和やかだ。
「キャスターと……えーっと、なんて呼べばいい事やら、あ、俺は衛宮士郎です」
「ん? ああ、そう言えばそうだったな、家が焼ければあの反応はある意味で当然だろう、私はジェネラルだ」
「ではジェネラルさん、キャスターをお借りしても宜しいですか?」
「ん? 別に構わないが修理の目途が立ったのかね?」
「そう言う訳じゃないんですけど、少し試したいことがあるんです」
「ああ、魔術的な事を試すのかね? 少し興味があるので見学させてもらっても宜しいかね?」
「ええ、勿論、ここは貴方の家になるわけですからどうぞ遠慮無く」
もの凄く気品のある物腰に思わず馬鹿丁寧な反応で返してしまう。
すっかり彼のペースであった。
試して貰いたいことをキャスターに話すと、自信なさげに試してみるとだけ言われた。
「——空間解除」
宝具での解呪実験は簡単に終了した。
「正直難しいわ、下手に消去しようとすると床ごと、壁ごと消し去ってしまいそう、こういう細かいアプローチは難しいわ」
キャスターの言葉は茶の間を覗いて納得いった。
茶の間の畳が一枚無くなって下の床板が出てしまっている。
「この畳……消滅したってことか?」
床板が触れている以上、ワープしたか消滅したかのどちらかだろう。
「……実空間で認識できなくなったみたいだから……多分これを元に戻すのは出来ると思う」
「んー……呪い付きでも無いよりは良いか、戻しておいてくれるか?」
「ん、わかった」
「……何? 今の?」
ぬうっと、恐ろしく不機嫌そうな顔で遠坂が台所から顔を出す。
そう言えば遠坂はまだ召還できていないから空間を展開するとなんだかよく分からない感覚に放り出されてしまうのだった。
「今のが私の宝具で召還する空間です」
「……次からは前もって言っておいて、寝起きみたいに気分が悪くなったわ……」
吐きそうな、そして寝起きのような表情で自室に向かう、寝るのだろう。
「あれ? 姉さんは?」
桜とライダーが土蔵から戻ってくる、手には薬缶と、幾つかの茶碗。
何故か藤ねえに連れて行かれた焼き物教室の成果である。
飲み物を注ぐには不便だが、まあ穴は開いてたりはしないはずだ。
「ああ、遠坂なら部屋に戻ったよ、多分寝るんじゃないかな? 風呂は入り直した方が良いと思うんだが……」
「ふむ、日本式の風呂か、私が『一番風呂』でも構わないかな?」
そんなことをジェネラルが口にする。
「え? そりゃあ構いませんけど」
「よし、決まりだ、では準備をせねば」
急に上機嫌になって。
「ああ、そうだ、明日までにこの廊下とその二部屋は改修しておくから安心したまえ」
そんなことを口にした。
その後、遠坂を含めてそれぞれ風呂に入り直し、睡眠を取ることにした。
翌朝。
全員、疲労からか、残っていた誘眠香の残滓からか、昼近くまで眠った後、布団から起きだし。
最終更新:2007年05月21日 00:39