540 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:緊急搬送] 投稿日: 2007/03/08(木) 05:13:55

「た、ただいま、です……」
立っていることすら難しいはずなのに、それでも無理をして微笑んでくれた。
「うん、ありがとう、三枝さん」
「ふ、服は、妹のを、持ってきました」
ヘルメット姿のままバイクの座席下からゆっくりと服を取り出す。
明らかにふらふらしているのに、気遣わせまいとしているのが分かってしまった。

……こんな状態で無理をさせるのはよろしくない。
実によろしくない。
朝まで五体満足だったのに今この瞬間はヘロヘロで。
そんな状態で普段通りさせるのは実に忍びない。
「三枝さん、ちょっと力抜いて」
言われるまでもなくふらふらで足にも力が殆どはいっていない。
「え、衛宮くん?」
足と首に手を回し、持ち上げる。
……顔が赤い、少し熱が出ているようだ、それに目が踊っている。
どうやらかなりの無茶をしたらしい。
「無理はしなくていいよ、なんというか、俺のワガママでお願いしたわけだし」
「え、ええっと、でも、その……!」
このまま布団まで運んでしまおう。
……そうそう、忘れるところだった。
「ライダー……シャリフさん、三枝さんは普通の女の子なんですから、緊急の時以外そんなに飛ばさないでください」
これは言っておかないとならない。
他にこうなってしまったりすると色々と問題はあるし。
昼間にスピード違反で逮捕されたら目も当てられない。
「わかったわ」
こくりと頷く。
意図が伝わったかはどうあれ、分かってくれたらしい。

庭を通って、昨日三枝さんが泊まった部屋……なのは達の部屋へ急ぐ。
とりあえず布団に寝かせて、水で冷やしたタオルとかで頭を冷やして、薬……はいらないな。
それから……全ての前にとりあえずは応援を頼もう。
「みんな、ちょっと手伝ってくれ」
「士郎、突然外に行ってどうし……!」
藤ねえ、絶句である。
他のみんなも似たような反応だ。
驚いたのは分かるけど、割と緊急事態なのです。


541 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:緊急看護] 投稿日: 2007/03/08(木) 05:14:42

焦りが伝わったのか、藤ねえは何か言いたげな表情のまま居間を出る。
洗面器とタオルが必要だって事を察してくれたらしい。
「なのは、フェイト、布団まだ敷いてあるかな? 敷いてなかったら一回敷き直して欲しい」
「は、はいっ!」
二人が立ち上がって走り出す。
「二人はとりあえず、着替えとか持ってないかな? 汗とかが酷いようなら着替えさせないといけない」
氷室と蒔寺にそれだけ言ってなのは達の後ろに付いていく。
靴は庭に放置して縁側に上がる事にする。
「衛宮、一体何があったのだ」
後ろを付いてくる二人に事情を簡単に説明する。
「買い物に行くときにノインの服がないから三枝さんに借りようとして、シャリフさんのバイクに乗せてもらったんだけど……
 ちょっと加減が分からなかったみたいで、多分重度の乗り物酔いとかだと思う」
乗り物酔いは重度になると危険だ。
冷や汗や頭痛程度ならばともかく、痺れや吐き気、それに伴う脱水症状なんて状態になれば点滴やらが必要になる。
「なるほど、そう言う状況を見たことはないが確かに由紀香はそういう面がありそうだ、サイズは少し違うが、私達の服ならあるぞ、取ってこよう」
納得してくれたらしい。
「……幾らアメリカ人でも大雑把すぎるんじゃないか、その……えーっと、シャリフって人」
「面目ない、俺の判断ミスだから責めるのは俺だけにしておいてくれ」
少し考えれば分かるだろうに。
ライダーの騎乗スキルや人知を超えた反射神経をフルに使ったバイクのテクニックは並の人間が繰り出せる範疇を軽く凌駕しているだろう。
ましてあの大排気量バイク。
おっとりとした三枝さんをあんなのに乗せるなんて間違っていたかも知れない……

部屋にはいると、二人が布団を敷き終えていた。
「二人とも、ありがとな」
それだけ言って、ヘルメットを外して横たえる。
「いえ、気にしないでください」
見た限り、汗はそう酷い物ではなさそうだ。
掻い巻きと毛布を掛け直し、藤ねえが持ってきてくれた、水の張られた洗面器にタオルを突っ込み、よく絞ってから三枝さんの頭にのせ、一息ついた。
「その、ごめんなさい……」
掻い巻きに口元を埋めながら三枝さんが謝った。
「いや、悪いのは俺だって、無理言って頼んじゃったし、それが原因でこうなっちゃったし……」

「よくわかんないけど、詳しい話は聞かせてもらうわよ、士郎」
詳しい事情を話したら藤ねえにしこたま怒られた、正座で。
「士郎ってば、目の前で困ってる人を助けるのは立派なんだけど、目の前じゃないところで起こる事に無頓着、と言うよりもちょっと想像力が足りないのが問題よね」
そうかもしれない。
考えればあんな大型バイクに三枝さんを乗せるってのはどうかしているってのは自分でも分かったはずだ。
「反省する……」
向き直って三枝さんに深々と頭を下げる。
「あの……私はもう大丈夫ですから……ノインちゃんと買い物に行ってあげてください」
「いや、そうは言っても……」
「本当に、大丈夫ですから」
む、押し問答になってしまった。


メルセデス:とは言っても、悪いのは自分であるわけで、せめて午前中くらいは看病しよう
クライスラー:こっちが折れないと、余計に気を遣わせてしまうかな?

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最終更新:2007年05月21日 19:46