90 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・昼:桜の服を買おう] 投稿日: 2007/03/27(火) 05:15:30

「わかった……」
着飾った桜というのも見てみたいと思ったが……桜がそう言うのなら仕方がないか。
桜の言葉を尊重して派手ではない服を見て回ることにしよう。

ふと上の棚を見ると、一着の服が目にとまった。
「それじゃあ、あれなんかどうだろう?」
その服を指差し、そこに視線を向けさせ、手を伸ばしてハンガーから外す。

それはエプロンのような、割烹着のような、そんな服である。
控えめでありながら、没個性ではない色彩。
前面は丈が長く大きなポケットが一つ付き、逆に背面は少し短めで、下部を紐で止める形になっている。
胴体部分と肩から先の部分は違う布地らしく、取り外しの可能なようで、夏冬、暑さ寒さに対応でき、外した袖は肘当てにもなる。
ポケットの縫製は頑丈に縫いつけられており、飾りポケットではないようだ。
それに……長めの丈は屋外での林檎狩りや苺狩りの時に便利そうでもある。
「ほら、これさ」
桜に手渡してみる事にする。

受け取った服をじ、と真剣な眼差しで見つめる桜。
ややあって、にこりと微笑んで。
「これ、買っちゃいますね」
そう言ってくれた。
「あ、うん、こういうので良いのかな? その、まるで自信がないから、変だったらそう言ってくれた方が嬉しいぞ?」
頭を軽く掻きながら言っておく。
「私に似合うかどうかは分かりませんけど、でも気に入っちゃいました……それに、先輩に服を選んで貰うのって初めてですから」
桜が胸元に服を抱きしめて目を閉じる。
その顔はとても嬉しそうなので、安堵する。
「気に入ってくれたのなら、よかった」
思わず笑顔になって、桜の頭を撫でる。
「わ……」
桜の顔が赤くなるのがちょっと嬉しくて、顔を近づけていく。
そのまま唇を……
「二人とも、ラブラブな空気を出すのは良いけど、人前だからね?」
その言葉で我に返ってさっと飛び退く。
……忘れていた。
周りを見渡すと、若奥様と言った人があらあらと楽しそうに、頬に手を当ててこちらを眺めていた。
「あ、ああ……どうしたんだ名城?」
少し混乱しながらも、現れた名城に聞く事にする。
「あの二人の試着が終わったから呼びに来たのよ……別に続けててもらってもいいんだけどね、あの二人が不機嫌になりそうだから」
「あ……わかった、すぐに行くよ、行こう、桜」
桜の手を取って歩き出す。
「はいっ!」
桜の声は弾んでいた。


……二人の服はとんでもなく似合っていた。
ノインはフリルの沢山付いたドレスのような朱色の服を着込み、髪型は猫耳を思わせるような形をしていた。
一方、イリヤはもうそのまんまドレス姿である。
動き回れるようにスカートこそ短めになってはいるが、その埋め合わせの如く上半身は豪奢さに埋め尽くされている。
イリヤから自然に溢れ出る気品と、服装から溢れる気品の融合である。

そして服装そのものもとんでもなく似合っているのだ。
白い肌と殆ど同色の白いドレス。
それを形容する言葉は見あたらない。
愛と言う言葉を愛以上の言葉で表現できないように。
その姿が似合っている、という言葉以上に似合っていたのだ。


ソラマメジマ:その視線に気付いたのか、ノインの頬がむくれた
キメンハントウ:その視線に気付いたのか、桜が頬を抓ってきた
アララサンミャク:各人の反応を楽しんでいるのか、後ろで名城が含み笑いをしていた

投票結果

ソラマメジマ:5 決定
キメンハントウ:1
アララサンミャク:1

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年05月21日 20:21