308 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・昼:玄関前の出来事] 投稿日: 2007/04/11(水) 04:48:06

「ああ……気にすることはないぞ、何しろ血の繋がってない妹達だからな」
その時己がどんな表情をしていたのか、柳洞一成自身には分からない。
平素と変わらぬ挙措から今の言葉に聞き間違いも言い間違いもなさそうだ。
眼鏡を一度外し、眉間を揉み、さらに両の米神を押さえ、先の言葉で一気に持って行かれた意識をはっきりとさせる。
続いて頭の中に浮かんでいく可能性をピックアップし、有り得そうな状況を幾つか想定していく。
「衛宮――!」
一番無さそうだが否定しきれぬ……心労が祟って危険な薬に手を出してしまったと言う状況。

何しろ遠坂もこの家には通っている。
それだけで心労は激しい物となる。
さらに生活まで共にしているとすればその苦しみ、生きながらにして六道輪廻にも至りかねん。
これは著しい偏見だとある程度は自覚しているが、一面の真実である事は疑いようがないと言う程度には確信している。
だとすればここ暫く会っていなかったとは言えその兆候に気づけなかった己の失態でもある。
あの遠坂をこの衛宮の家に通わせることはやはりあらゆる手段を講じて防ぐべきだったのだ。

とにかく薬断ちのためにもお堂にでも閉じこめて座禅を組ませねばと思い、衛宮の服を掴もうとした瞬間。
「あ、士郎さん、お帰りなさい」
金髪の少女が現れた。
慣れぬ手つきで巨大な洗濯籠と、そこに満載した洗濯物を抱えているが、その足取りは確かだ。
「ああ、ただいまフェイト……怪我の方はもう良いのか?」
「はい、ご心配おかけしました、もう大丈夫です」
幻覚でも幻聴でもなさそうである。
「フェイトちゃん、どうしたの? ……あ、お兄さんのお友達ですか? こんにちはー」
「あ……ああ、こんにちは」
その後ろからは栗色の髪の少女が現れる。
彼女も同様に巨大な洗濯籠を持っている。
「二人とも、残りを運ぶのは俺がやるから、とりあえず居間で洗濯物を分けるのやっててくれるか?」
「はい、わかりましたっ」
……察するに、彼女達が件の妹なのだろう。
「彼女たちが、その、妹達、なのかね?」
「そう言うことになる、とはいえ二人だけじゃなくて」
「実は私もなんだけどね」
そう言って可笑しげに笑う女性を見る。
控えめな立ち位置から間桐さんの友人かなにかだとも思ったのだが、この女性も衛宮の妹であるという。
どうにも理解の範疇を超えた事で、己の想像力では突破できそうもない為、正解を聞くことにした。
「……衛宮よ、この件は俺の土産話よりも優先する話だと思うのだが、どう思う?」
「誤解される可能性が極めて高い事だし、説明は必要だろう……
 一成に限ってそれはないだろうが有ること無いこと言われても困るしな」
うんうんと笑顔で頷く衛宮。
理解が得られて嬉しい限りだ。
とはいえ有ること無いこと言いかねない状況なのは間違い有るまい。
なにしろ玄関に集まった女性陣で全員だったとしても一般家庭と比して男女比率に開きが有りすぎる気がする。
その辺りのことも、少しくらい問い質しておくべきだろう。


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最終更新:2007年05月21日 20:25