451 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage五日目・昼:瓦礫の戦場] 投稿日: 2007/05/01(火) 04:32:37
彼は、岸部露伴は命を賭けている。
恐らく、死への恐怖など克服している。
彼に対する過大評価になるかも知れないが、彼を庇いながら戦うと言うことは、彼への侮辱に繋がることかもしれない。
だったら、目の前のこいつを倒すことに全力を傾ける。
「……命の保証は、できませんからね」
それだけを言って、意識から彼の存在を消し、目の前の敵に集中する。
敵は一人、恐らく御同業<<サーヴァント>>
だとすれば互いにマスターは居らず、一対一の状況。
崩れた廃墟は隠れることを容易にし、取り回しの効く拳銃は屋内戦闘に於いては射程距離の制約は無く、また威力の点でも申し分ない。
そして己の武器は高速展開が可能とはいえ、所謂『祈願型』ではなく、自動防御は不可能。
かといって一面を吹き飛ばしてしまえば、『人』を巻き込む。
だがあの防盾はさして強力な代物ではなく、魔法――この世界で言う魔術――による補正があったとしても、貫通は可能だろう。
何しろ、あの盾の原型は恐らく一般的な防盾――浅間山荘事件ではライフル弾が貫通し殉職者を出した代物だ。
現在は強化プラスチックに改良されているはずだが、それでどれほどの効果を生むというのか――
そこまで考えた瞬間、気配が変わるのを理解した。
素早く物陰から物陰に移動しながら銃弾を連射する。
敵の攻撃と同時に即座に防御壁を展開し、反撃する。
そこまで思考し、高速で魔法を編み上げる。
敵の攻撃に対し逆ベクトルの射撃を行う攻勢防御魔法だ。
そして拳銃弾が予定通りのベクトルでもって魔術に着弾する。
「ッ!」
防御壁に激しい振動が発生する。
その一撃、拳銃弾にあらざる程の一撃に驚愕した。
貫通はないが、反撃の一瞬を逃すほどの一撃だった。
「射撃中止、銃弾解析……!」
相手の位置を知るために敢えて開けた場所へと走りつつ反撃を中止し、銃弾とそこに込められた概念の正体を解析する。
概念は『殺害』
その銃弾に貫かれた人間は死ぬ。
岸部露伴を貫いた銃弾とは別種の、必殺の銃弾。
予め準備していたのか、戦闘状態に入ったという精神状態がこの銃弾を生み出すのか、とにかく、この銃弾に貫かれれば死ぬらしい。
飛来する銃弾を時に防御魔術で弾き、時にS2Uで叩き落としながらながら互いの位置と、そこから推測される行動パターンを解析する。
戦闘の主導権を奪われぬよう素早く動き回っているが、それでも攻撃の主導権は奪われたままだ。
牽制の魔法弾は、一見何の変哲もない防盾に弾かれて吹き飛ばされる。
その事から察し、あの防盾にはなんらかの防御関連の概念が付与されている
これは彼の推測でしかないが、対魔力ではなく、攻撃全般に対する絶対防御の概念だろう。
でなければ降り注いだ数十キロの瓦礫を受け止めて尚防盾に傷一つ無いことに説明が付かない。
つまり、こうしている限りは手詰まりであり、なんらかの手段を持って盾を突破しなければ勝利はない。
「非常識だな……この世界の英霊ってのは!」
これまでもそうだったが、多くの存在が彼の理解を超えていた。
『死んだ直後に復活する』『音速で走る』『無数の部下を召還する』等々、召還されてから驚くモノばかり目にしている。
本来『神秘を競い合う』事がこの戦争の真髄だと聞いていたが、それは最早神秘と言うよりも非常識にしか思えない。
まして敵となるのはこの世界のどこかで信仰されてきた英霊という存在である。
仮に魔法と戦術を持って追い詰めたとしても、宝具という逆転の手段を有している以上撤退する相手に深追いも危険すぎる。
故にこれまでの多くの戦いで勝利したことすら稀で、敵の撃破は一度もない。
ただ、空中への追撃能力を持つ相手は昨日目撃した戦闘機部隊以外に存在していないようで、こちらの撤退だけはスムーズに行えたのは幸いだった。
今更ながら、彼自身が提案した『座を捏造して世界を騙し、正規の手段で聖杯を入手する』というのは無謀な策であったと思い始めていた。
だが、後悔している暇はない。
生き残るためにも、この戦争に勝利するためにも、人を巻き込まないためにも、この敵は排除しなければならない。
エフレム・クルツ:手詰まりの戦闘を続行しながら対象の解析を続行する
イサドラ・ダンカン:砲撃魔法を打ち込み防盾の限界を見極める
アルトゥール・ニキシュ:相手の銃を狙い攻撃能力を奪う
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最終更新:2007年07月25日 17:50