5 名前: 衛宮士郎/ライダールート 投稿日: 2004/09/13(月) 00:45

地に届きそうな程の長髪を靡かせている長身の女性だということしか分らない。

きん、という甲高い音がして槍が弾かれたかと思うと、次の瞬間。
残像すら残さず、凄まじい速度で女性は槍の男へ肉薄し、

「————はっ!」

突進の勢いそのままに、男の鳩尾へ目掛けて膝蹴りを繰り出した。

「ぐ————!」

咄嗟に槍の腹で受け止め、されど数メートル。庭の中心あたりへと軽く吹き飛ばされる男。
空中で姿勢を正して音も無く着地し、再び槍を構えた男の身のこなしも見事の一言だったが、
なにより、瞬き程度の一瞬で、男の槍を弾き、今の攻撃を繰り出した女性のスピードと力に驚愕した。

「————」

女性は手にした大きい釘のような物を隙なく構えて男を威嚇しながら、その長髪を軽やかになびかせてこちらに振りむいた。

雲間から月光が土蔵内に差し込んできていた。
淡く、青白い月光が女性の全身を照らしあげる。

「……っ」

思わず息を呑む。
女性の纏っている衣裳が、胸と腰だけを隠したような闇に溶けるような漆黒のレザースーツであったこと。
両手足を包む漆黒。顔の半分を覆うかというような巨大な眼帯。額に描かれた何かの印。
その全てに驚いた。

——しかし。なによりも、

「————貴方が私もマスターですか」

無機質な声で俺に向けてそう呟いた彼女の、あまりの綺麗さに、魂を抜かれてしまった。
俺は、

1「え……マ……、スター……?」と、問われた言葉を口にすることしか出来ない。
2「……綺麗だ」茫洋とした意識のまま、頭に浮かんだ言葉をぽつりと呟いた。
3「危ない!」背後から迫ってきた槍の男に気が付いて、大声を上げた。

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最終更新:2006年09月03日 19:30