499 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage五日目・昼:発射] 投稿日: 2007/05/05(土) 05:02:41

『必殺』という概念は、先の解析の際に術式言語に変換されている。
対象が術式ならば、それを打破する術式は構築可能だ。
概念から術式へ編纂し、術式を打破した後に概念に『返す』ことで敵の必殺の概念を無効化する。
無論、彼一人でそのような事は――平時ならば可能だが――戦闘中には不可能。
だがそれが可能なだけの処理能力を、彼のS2U<<ストレージデバイス>>は保有していた。
無論これを行えば戦闘におけるS2Uのサポートは使用不可能になる。
だが、手詰まりを続けている間ならば彼一人でも戦うことは十分に可能であった。


そして見せかけの壊走の直前。
『compile complete<<術式編纂終了>>』
そんなメッセージが耳に届く前から、既にクロノは覚悟を決めていた。
敵となるのは英霊と呼ばれるような伝説の、もしくは伝説となる存在。
ならば死ぬことさえ避けられれば十分、負傷は覚悟の上だと。
そう、敵を倒し、生き残れるならば問題はないのだ。


例えどれほど不利な状況だろうと、英霊はその矜持にかけて思いも寄らぬ反撃をしてくる。
故に逃げることはしない。

魔力刃の展開は既に済んでいる。
だが予想を違え、敵の体勢は崩れていない。
更に銃を構え、まさに引き金を引こうとしている。
その銃口の前にあって、跳びだした己の体は余りにも無防備だ。
即死を避けるためには呪いの中和にS2Uの全力を傾けなければならない。
つまり、この攻撃魔法と銃弾に対する防御魔法、そしてそれに続く戦闘の主導権を握るための連撃は己の技量のみで行わねばならない。

総合すれば、先制したにもかかわらず圧倒的に不利。
それとて、構わない。
攻撃を続行するのみだ。
「――Execution Shift!」
言葉と同時、刃が対象に向けられ、そして全弾が放たれた。

500 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage五日目・昼:発射] 投稿日: 2007/05/05(土) 05:03:26

放たれた魔力刃を『彼』にどう見えたのか。
それはただの一本でも『人』を殺して余りある物だ。
それでもこの『盾』ならば、盾の持つ概念に守られている限りはこの身を貫くことはない。
この盾は、数百キロの爆発物による爆発も、ヘリの空対地ミサイルも、戦車主砲をも防ぎきった。
それは完全防御の概念を生んだ。

一度だけ引き金を引き絞る。
狙いは遠距離狙撃と同様、対象の中心線。
排莢すら確認する暇はない。
即座に盾を構え、逃げるようにその陰に隠れる。
数十の刃が盾ごと対象を抹殺するべく殺到する。
だが既に刃は対象に向けて放たれている。
弾着直前に放たれた拳銃弾の弾道は簡単に見切れ、既にその弾道を回避している。
故にその一撃は意識の外へ追いやる。
続く一撃は一瞬の溜めも必要としない。
発動してしまいさえすれば対象を粉砕するは必定。
その一瞬とは、魔力刃の爆発によって巻き上げられた砂煙が晴れた直後、『敵』が反撃のために盾の構えを解いた瞬間である。

一度だけ浅く呼吸を入れ、そして呼吸を止めてその煙の先を睨んだ瞬間。
激痛が背中を貫通した。
認識よりも早くS2Uが最速で起動し、概念を中和していく。
『しまった……!』
口中に広がる鉄の味と共に、崩れそうになる体を必死で叱咤する。
止めた呼吸は再動し、睨んだ視線は下に落ちる。

何故意識の外に追いやっていたのか。
激痛の正体は跳弾だ。
瓦礫や残骸が多量に存在するこの場所での跳弾箇所など幾らでもある。
その中の一つに跳ね返り、そして無防備な背中に直撃したのだ。
「概念の中和は8割終了、弾は……抜けていない」
この痛みからすれば肋骨を掠め、内臓に直撃して止まったのだろう。
だがS2Uの解析と中和は確実に為せたようで、全身に広がりかけた死の感触は既に停止し、収縮を始めている。
片膝は崩れ、倒れかけている。
だが、それでも良い。
怪我など幾らでも治せるが、失われた命は戻らない。
そう、生きているならば、まだ戦える。
崩れた膝に力を込め、視線を上へ、敵のいる場所へ。

煙が晴れ始める。
構えた盾が鬱陶しかった。

盾の覗き穴から周囲の状況を探る。
そして覗き穴がクロノを睨み付けた。
両者の距離は数十メートル。
さらには直進できないような数十センチの瓦礫の群れ。
『これまで見せた』機動性ならば確実に拳銃が早い。
そう判断した。

盾の構えを解く。
拳銃を構える。
それこそ待っていた隙。
「Sonic Move」
その瞬間、クロノの視界から色が失せた。

クロノはこの戦いの中考えていた。
銃弾を当てることで対象を殺害する。
盾を構えることであらゆる攻撃を防ぎきる。
ならば何故盾を構えた間、足を止め続けるのか。
何故盾を構えながら攻撃をしないのか。
恐らく、盾の防御概念の発動条件は『構えた間外部への接触を行わないこと』もしくは『他の行動を行わないこと』
ならば銃を構えている間は、防御概念は発動しない。

自ら立てた予測に基づき、高速移動魔法で、数十メートルあった距離を瞬時にゼロにする。
その勢いを殺さず、敵の左胸にS2Uを突き立てる。
並の人間ならばこれだけで心臓が破壊され死亡する。
だが敵は英霊となった者。
ならば確実にとどめを刺す。
「Break Impulse」
心臓から全身に粉砕の振動を叩き込んだ。

クロノの視界に、急速に色が戻る。
それと同時に、壁を突き破り廃工場の外に転がり出た。
数瞬のタイムラグの後、男を捜すと、男は地面に倒れていた。
男は、一撃の知覚よりも先に吐血し、その力を失っていた。
僅かの後、敗北を受け入れたように目を閉じ――そして満足げに微笑むとからだから霊的な力が消えていった。

それを見届け、クロノは内心で安堵し、
直後に吐血した。
内臓を負傷した状況で高速移動魔法を使ったクロノも無事で済むはずがない。
S2Uを治療に専念させ、呼吸を整える事にする。
意識を飛ばして思い切り休みたかったが、それは出来ない。
まだ自分にはやるべき事があると己の叱咤し、立ち上がろろうと全身に力を込め


トロヤ点:S2Uを杖にして歩き出した
ハロー軌道:「キャスター君!」己のマスターの声を聞いた
ラグランジュポイント:「ヘブンズドアアァァーッ!」そんな声を聞いた

投票結果


トロヤ点:0
ハロー軌道:1
ラグランジュポイント:5 決定

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最終更新:2007年05月21日 20:27