575 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・夕:友情の確認] 投稿日: 2007/05/11(金) 04:31:44

顔を伏せ、眉間を揉み、一通りの話を聞き終えた。
曰く、『彼女達』は衛宮士郎の養父である衛宮切嗣氏の実子である。
更に、先程玄関で見た少女二人は遠坂の親戚の養女であると同時に切嗣氏の実子である。
つまり、衛宮と遠坂の両家は親戚関係にあると言うことである。
それはそれで驚いたが、それについてどうこう言う事ではないのだが。

「……随分と無軌道というか、破天荒な人物だったのだな、衛宮の父君は」
顔は伏せられているがかつて無いほど難しい顔をして居るであろう事は、彼を知るものからすれば明らかだった。
彼自身の一般的なイメージと言えば『生徒会長』であり、他に『厳格』や『堅物』等もあるだろう。
実際付き合ってみれば――予想外な事態に直面すると取り乱すなど――そうでもないことは分かるが、友人として、衛宮士郎は柳洞一成という人物の性格を知っている。
だからこれまでの経験からして、柳洞一成という人物はこういったことに納得できる人物ではない。

また当然、友人として、柳洞一成は衛宮士郎の人柄をよく知っている。
だからこそ自信を持って『好ましい人物である』と言える。
だが――血が繋がっていないとはいえ――その衛宮士郎を育てた人物がそのような人物だとは思わなかった。
思わなかったと言うよりも、考えられなかったと言っても良いだろう。
存命の間に会うことは適わなかったが、時折友人より語られる衛宮切嗣という人物は聞いた者が『穏やか』という印象を抱かざるを得ない、聖人君子のような存在である。
多少の美化、記憶違いはあるにせよ、まさか世界を股にかけて様々な女性と浮き名を流す、どころか子を為すような人間だとは思いもよらなかった。

とはいえ、その一事をして衛宮士郎の人柄を疑うほど浅い付き合いでもない。
そして、未だ修行至らぬ身とはいえ宗教に関わる身である。
「生まれた命をどうこう言うようなことはしない、生まれた以上人の命は祝福されて然るべきだ」
故に衛宮士郎の新たな家族も受け入れるし、そして出来るならば友好的な関係を築きたいと思う。
「それに、一目見ただけだが悪い人物は居ないように思える、そうだろう?」
顔を上げて笑みを見せる。
視線の先には縁側で仲良さげに微笑み会うなのはとフェイトの姿があった。
「ま、納得しきれる物ではないが……それで衛宮を悪く考えるようなことはせん、そもそも衛宮本人の所行でもないしな」
気難しい顔から一転して破顔した。
「――そっか、ありがとな、一成」
友人の気遣いが、頭を下げてしまうほど有り難かった。
「礼を言うこともあるまい、友人として当然のことだ」
「そっか……でもそれなら遠坂とももう少し仲良くしても良いんじゃないか?」
「……あれはさすがに例外だ、人として認めてはいるが、あれと仲良くできるとは思えぬ」
顎に手を当ててうんうんと頷く。
これまでの遠坂との事を考えていたのだろう。
苦み走ったり笑みを浮かべたりと表情が変わっていくのが見えるが、どの表情も一致して生き生きしている。
遠坂凛、という存在、そして彼女との対決というのはやはり彼にとって非常に大きいのだ。
「――さて」
話はそこまで、と言う風に一息入れ、
「とりあえずこれをどうにかしてしまおう」
卓袱台の上に山積みされた鯛焼きを指差した。
既にノインは食べ過ぎたのかグッタリしている。
勿論、食べて貰う分には作った側として嬉しいのだろうが、食べ過ぎは身体に良くない。
「ノイン、大丈夫か? 目を回したりしてないか? 吐き気とかそういうのは大丈夫か?」
「んー、大丈夫、無理はしない程度だから、夕飯の時間には夕飯だって食べられるー」
「そっか、それなら良かった」


「それじゃあお茶煎れますね」
不安げに座っていた桜が、和んだ空気にホッとして立ち上がる。
ちょっとしたすれ違いでも、互いに疎遠になってしまう事はある。
まして今回のことは聖杯戦争という途方もないイレギュラーの結果故に、全ての事情を語り尽くすわけにも行かない。
それが分かっているから、二人の仲が保たれたと言うことは、彼女にとっても嬉しかった。

気付けば時計の針が半周している。
長話、と言うほどでは無かったが、概ね受け入れてくれたようで嬉しい限りだ。
「それじゃあ俺は……」


茶葉は玉露:桜を手伝おう
体調経過観察:三枝さん達を呼んでこよう
夜戦に向けて:そういえばルヴィア達はどこに行った?

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最終更新:2007年05月21日 20:28