814 名前: 白い少女と赤い騎士 ◆S3SdXBudUU [sage] 投稿日: 2007/05/21(月) 14:35:22

「――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ――」
雪が深々と降る山の中に少女の声が木霊する。
それは人ならざるモノ、いや人を越えたモノを呼び出すための呪文。
「――誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者――」
体の全てが熱くなる。身体中を魔力が駆け巡り、少女の体は耐えがたい程の苦痛に晒される。
体の端々から血が滲み出て、白い衣服を紅く染めていく。だが少女はそんな事は意に介さないように呪文を紡ぎ続ける。
「――汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」
最後の一節を紡ぎきる。少女の姿は既に傷だらけになっていた。その小さな体駆ではこれほどの魔術を行うには無理があったのか。
――いや例え小さくとも少女は優秀な魔術回路であった。故に失敗など有り得ない。なにせ千年の悲願の結晶である。それなのに無理がある筈などないのだから。

部屋が光に包まれ、中から一人の人影が現れる。それは真っ赤な外套を纏う、長身の男だった。彼はあたりを見回すと私を見ながら
「――まさかとは思うが、そんな可能性は皆無に等しいとは思うのだが――よもや君が私のマスターという訳ではあるまいな?」
などと言い出した。
「な、なによ!私がマスターじゃ不服だっていうの!?」
私は両手を上げ、がぁーっ!と怒りを露にする。
赤い男は額を押さえ、溜め息をついた。
「いや、少々驚いただけだ。なるほど良く見ればその体に似合わず優れた魔術師のようだ。私を呼び出せるのも当然という訳か」
「レディーに向かって小さいとは何よー、小さいとはー!」
「レディー……ねぇ。まあいいだろう。訂正しよう」
「ふん、分かればいいのよ。で、あなた名前は?」
「――」
「?」
男は答えない。何か険しい顔をして考え事をしているかの様だった。
「どうしたのよ?自分の真名でしょ?」
「――済まないが思い出せないようだ。良くみれば聖杯戦争はまだ先、だというのに英霊を呼び出したツケが回ったという事かも知れんな。クラスは――アーチャーのようだが」

815 名前: 白い少女と赤い騎士 ◆S3SdXBudUU [sage] 投稿日: 2007/05/21(月) 14:40:53

「な、なんですってー!?どうするのよ!何処の英霊だか解らないんじゃ作戦の立てようもないじゃない!」
信じられない。自身の真名が解らないなど前代未問だ。だがそれ以上に信じられないのは、赤い騎士が自身たっぷりと
「そんな事は些末な問題だよ。君は恐らく今回最高の魔術師と言っても過言ではないだろう。その君が呼び出した英霊なのだ。最強でないはずがあるまい?」
と、言い放った事だった。
「へえ、解ってるじゃな――ってそんな言葉に騙される私じゃないんだから!」
この身は聖杯聖杯のみに特化した魔術回路。最高なのは当たり前だ。当たり前だというのにそ何故か、その言葉に素直に嬉しいと感じている自分に戸惑いを覚える
「本心のつもりなんだがね。それに聖杯戦争までには時間があるのだ。その間に思い出せるだろう。幸い私はそんなに魔力供給を必要としない。君の負担もすくなくて済むだろう」
「――はぁ。まあ仕方ないわよね。もう決まってしまったんだし、私が正体が解らないなら他のマスターにも解らないだろうし」
私は諦めるかのように溜め息をついた。頭が痛い。いや今痛いのは寧ろ体か?
「痛っ!」
そうだ。身体中に裂傷が出来ているんだった。
意識をした途端痛みが脳を焼くかのように襲いかかってきた。
それと同時に浮遊感が体を襲う。
「大丈夫か?ええと、そういえばまだ名前を聞いていなかったな」
赤い男は私を抱き抱えそう言った。

A:文句を言って暴れる
B:唖然とする
C:なんだか優しさを感じた

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最終更新:2007年05月22日 00:35