691 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/08/29(火) 00:42:14


 良く考えたら、女の子を自分の家に連れ込むって大変なことじゃないか……?

「……良く考えなくても大事だー!!」

 頭に稲妻が直撃したかのようなショック!
 え、なに!?
 アレですか、これって所謂ナンパって奴ですか!?
 しかも相手は氷室だぞ?
 陸上部の備品を修理した縁で知り合った程度で、今日たまたま昼飯を一緒に食べただけの相手だぞ?
 ま、まあ確かに購買で抱きかかえたときはとっても柔らかかったけど。
 ……って、思い出すな回想するな再生するな俺ぇ!
 女の子を放課後にいきなり自分の家にご招待、って、そんな慎二じゃあるまいし!

 しかし現実として、俺は氷室と一緒に家路についているわけで。
 …………ぐ。
 最初の衝撃が過ぎ去ると、今度は猛烈な恥ずかしさが襲い掛かってきた。
 拙い。
 なんとか気を紛らわせなければ。
 視線をめぐらせて、後ろの氷室の様子を窺う。
 氷室は相変わらず顔を伏せ気味にしながら、俺の後ろを歩いている。

 何より不可解なのは、氷室がこうして黙って俺についてきていることだ。
 氷室は常人より考えていることが読み取りにくいタイプだが、
 それでも、男の家に連れ込まれようとしているのに、そのまま従うようなことはありえないだろう。
 それなのに、氷室は俺の五歩後ろを黙々とついてくる。

 そう、まるで全て承知の上でついてきているような……。

 ええいやめやめっ!!
 そこまで考えてぶんぶんと首を振る。
 何を考えているんだ俺は。
 そんな男の子に都合のいい話があってたまるか。

 きっと氷室は俺の話を想定して、その上で俺のことを信頼してくれているに違いない。
 そうに決まってる。
 そうじゃなければ……その、俺が色々と困るわけで。

 よぉし、そうと決まれば氷室の信頼は裏切れない。
 行くぞ衛宮士郎、紳士の心構えは充分か!?

「――I am the bone of my gentleman.《身体は紳士で出来ている》」

「さっきからなにをぶつぶつと呟いているんだ?」

「うぇ!? い、いや、なんでもないですよ!?」

 いかん、思いきり氷室から不審な目で見られてしまった。

「……? それより、衛宮。君の家はあの屋敷かな?」

 と、氷室が指差す先には、坂道の上に立つ我が衛宮邸の姿が。
 どうやら悶々としている間にたどり着いてしまったらしい。
 反省。

「あ、ああ。ここが俺の家。ようやくついたな」

 動揺をごまかすように、俺は早足で玄関まで歩み寄る。
 そして玄関の戸に手をかけると――


α:ダッシュで氷室を土蔵まで引っ張り込もう。紳士らしく。
β:待て、まずは家の中の様子を窺ってからだ。紳士らしく。

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最終更新:2006年09月03日 18:37