899 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 22:19:06

 あれ、待てよ、何か忘れているような気がするぞ?
 水銀燈を探しに行く前に、何かするべき事があったような?

「えーっと、忘れてること、忘れてること……なんだっけ……?」

 もうすぐ昼食だから、その準備……いや、今日は桜の当番だ。
 食材の買い出し……は、まだ大丈夫なはずだし。
 あ、雛苺のあんみつ……でも、あれはライダーが買いに行ってくれるって言ってたし。

「ううん、どうも食い物関係のことじゃない気がするな……。
 というか、なんで真っ先に食い物のことがこんなに思いつくんだ?」

 セイバーじゃあるまいし。
 最後のセリフは心の中でだけ呟いておく。
 本人が聞いたら実力5割増し稽古確定だしな。

「でも、そうするとなんだ?
 ガラクタの修理は急ぎのものはもうないはずだし、掃除だってこないだやったばかりだし。
 コペンハーゲンのバイトは明日だし……ん? バイト?」

 何か今、引っかかったぞ?
 バイト……コペンハーゲン……店員……就職……。


 ――就職先が決まったことを、ご報告しに行こうかと――


「……あああっ! そうだ、バゼットだ!」

 しまった、すっかり忘れてた!
 バゼットに家で待っててくれって言っておいたんだった!
 あれからもう三時間近く経っている。
 バゼットはもう、とっくに俺の家に来ているに違いない。

「やばいなぁ……今からでも、家に戻ったほうがいいよな、絶対……」

 水銀燈を探すのは午後からになるが、仕方ない。
 水銀燈のことも気になるが、バゼットを放っておくのもなぁ。

 バゼットがかつてウチに滞在していた時期……それは決して長くは無い時間であったのだが、それでも統計的に見て、我が家の騒動発生率はそれまでの平均をかなり上回った、という驚愕すべきデータが残っている。
 ……厳密には、バゼットと、更にもう一人、滞在していたわけだが……それは置いておこう。
 要するに、バゼットがウチに来ると、結構な確率で面白いこと――オブラートに包んだ表現だ、もちろん――になるということだ。
 見ているところで騒動が起きるのも厄介だが、見てないところで騒動が起きるのはもっと心臓に悪い。

「よし、そうと決まればっ!」

 芝生から勢いよく立ち上がると、出口めがけて走り出す。
 走りながら、神とか仏とか英霊とかに、とにかく祈った。

「どうか、皆が余計な騒ぎとか起こしていませんように……っ!」


α:神でも無理だった。
β:仏でも駄目だった。
γ:英霊でも不可能だった。

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最終更新:2007年05月24日 23:23