608 名前: はじめてのさーう゛ぁんと(仮) ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2007/07/16(月) 22:10:57


辰:わかめが、漂っていた。





 目を開けたそこには、

「あははははははははははははははははははは! やったぁ! やったぞ!! あっはははっははははははっはは!」

 ゆらぁり。

 わかめが、漂っていた。
 マジかよ。

「そうだよ! 僕だってマキリ何だ! だから召喚ぐらい……出来るんだ!」

 ゆらぁり。

 よくよく、よ~く見てみれば、それはわかめじゃなくて髪の毛だった。
 目の前で良い感じにラリってるクソガキが体を揺らすたびに、一瞬遅れて追従している。

 ゆらぁり。ゆらぁり。ゆらぁり。ゆらぁり。ゆらぁり。ゆら……。

「やかましい。」

 ドゲシ。

「あばびょ!?」

 いつまでもゆらゆらしてゲラゲラ笑っているのがムカついて、とりあえず足蹴にしてみた。

「な、何するんだ! 親父にも蹴られたこと……!」
「お前が俺を召喚したやつ、ってことで良いのか?」

 聞くまでもなく、やつの左手には令呪が表れているのだから、俺のマスターなんだろう。
 瞬間、クソガキの目に、またもや狂喜の光が宿る。

「そうだよ! 僕が喚んだ! 僕は魔術師だ! 僕がマスターだ! 僕が……!?」

 またイッちまった。こいつ、ヤク中か? ダメ、ゼッタイ。

(しかし、『令呪』ってなぁ一体何だ?)

 俺は、呼吸をするように自然に出てきた単語に、内心首をひねる。

(――令呪とは。聖杯戦争における、サーヴァントへの絶対命令権のことだ。合計三回まで使われる)
(うぉ!?)

 俺の心中の疑問に『答え』るように、声が聞こえてきた。

(もしか……しなくてもアンサラーちゃん?)
(そうだ)
(何でこんなところに?)
(お前は英霊になって、たった50年しか経っていない。それに、召喚されるのも今回が初めてだろう? だから、一定期間私がサポートする)

 それってつまり……。

(俺のこと、心配してついてきてくれたのか? アンサラーちゃん優しい!)
(心配とか優しいとかの問題ではない。私の役割だからな)

 何だ……アンサラーちゃんは、どこまでいっても仕事一筋な鋼鉄の女ってわけですか。
 俄然〈〈がぜん〉〉燃えてきた。

609 名前: はじめてのさーう゛ぁんと(仮) ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2007/07/16(月) 22:12:09


(で、聖杯戦争って何だ?)

 燃えては来たが、今は攻める時期ではない。焦らず、じっくり、狡猾〈〈こうかつ〉〉に。

(聖杯戦争とは、簡単に言ってしまえば、どんな願いでも叶える『聖杯』を求めて行われる、魔術師達の戦いのことだ。そのための力として、お前達のような英霊――サーヴァント――が呼び出される。
 参加する魔術師は七人。サーヴァントも七騎。すなわち、セイバー・ランサー・アーチャー・ライダー・キャスター・アサシン・バーサーカー。
 最後の一組になるまで争い、勝ち残った時、そのコンビには聖杯が与えられる)

 要は願いの奪い合いか。全く反吐が出る。ま、それに参加してる俺に、な。

(ん? 待ってくれ。魔術師も、願いを持っているのか?)
(無論だ。でなければ、他人を蹴落としてまで争う理由がない)
(でも、聖杯は一つなんだろ? 『願い』ってのは、二つも三つも叶えられるものなのか? こういう時って大抵願いは一つだけ、何じゃないか?)

 つうか、そうじゃなかったら反則すぎるだろ。

(――…………聖杯は、一つではない)

 マジかよ。何じゃそりゃ。どういうことだよ?

(すまない。今はこれしか言えない)

 そう言ったきり、アンサラーちゃんとの会話がぷつり、と切れた。電話かよ。
 ちっ……隙あらば口説こうと思ってたのに……。

「僕はぁ!! 僕はねぇ!!」

 ……クソガキが、まだくっちゃべってやがった。

「僕はマスターなんだ! 僕は……ひぃ!?」

 俺が足を振り上げると、クソガキは怯えたように身を縮こませた。
 何だ、小物か。

「あー……一応形式だけど言っとくな。
 えっと……『我が力は、汝の力に。汝が己を貫くかぎり、我は敵を貫くだろう。ここに、契約は完了した。』っと」
「あ、ああ。よろしく。ところで、お前のクラスは何だ?」

 何だ。普通に会話できるじゃねぇか。

「俺か? 俺は……アーチャーみたいだ」
「ちっ。何だよ、セイバーじゃないのか。使えないやつめ」
「あぁ!?」
「ひっ……い、い、い、いいのか? 僕はマスターなんだぞ?」

 そう言って、左手の令呪を突きつけてくる。
 犬の牙のような模様が三本。上から二本、下から、上の二本の間を貫くように一本。

「ああ……悪かったよ」

 下手に刺激したら、くだらないことで令呪を使われかねない。そんなことになったら、俺の望みが叶えられない。ここは一つ、穏便に、穏便に……。

「ひはっ、ひゃはははははは! やっぱり、僕はすごいや! おいお前、三回回ってわんって言ってみろよ! あははははははははは!!!!」

 ブッッッッ飛ばしてぇぇええええええぇぇぇええぇぇえぇ!!!?

 俺が拳を握り締めて一歩踏み出すと、

 ざりっ。

 背後から、足音がした。
 振り返るとそこには、紫の髪をした――。





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最終更新:2007年07月18日 03:41