729 名前: もしハサ ◆yfIvtTVRmA [sage] 投稿日: 2007/07/24(火) 05:10:26

パックを開け納豆の上に乗せてあるビニールを半分だけ持ち上げ、中身を小皿に移す。残りは食べずに晩に取っておく。
箸できっちり二百回かき混ぜてから一粒ずつ口へと運ぶ。醤油か卵が欲しいところだが心の贅肉だと自分に言い聞かせる。

本日の朝食はこれで全部。しめて8円の食費也。彼女、遠坂凛は今日も赤貧だった。
今は亡き父時臣が彼女に残した物、魔術刻印、魔術師としてのプライド、常に優雅であれという家訓、
当時十歳に満たない彼女に背負えるわけの無い多額の借金。正直最後のは受け継ぎたくなかっただろう。

8円の食事が終わり、じっと手を見てため息を付く。働けど楽にならない暮らし、ため息の理由には
それも含まれてはいるが、今一番彼女を悩ませているのはその手に刻まれた円形に近い模様である。

遠坂凛の右手に現れた模様は令呪と呼ばれる代物であり、彼女の貧乏暮らしの間接的原因でもある。

『令呪』、『聖杯戦争』の参加資格であり『英霊』を自在に動かす鍵。

『聖杯戦争』、遠坂凛が住んでいる冬木市で行われる儀式。あらゆる願望を叶える究極の聖遺物である聖杯を巡り
7人の魔術師が己の召喚した『英霊』を戦わせ、最終的な勝者が聖杯を手にする。

サーヴァント
『英霊』、令呪を持つ魔術師のみが召喚をし、自在に操る事の出来る戦士。使い魔の一種だが、人々の持つ幻想が
具現化した存在でありその戦闘力と制御の難しさは一般的な使い魔の比ではない。


令呪が現れたという事自体は問題では無い。遠坂は聖杯戦争の儀式の当事者の家系であり、過去4回行われた
戦争全てに参加している。ならば遠坂凛に令呪が現れるのもむしろ当然である。

彼女のため息はやはりその貧しさから来るものだった。
英霊を召喚する際には令呪だけでは足りず、原則として英霊にゆかりのある品を触媒としなければならないのだが、
そのような貴重な物を用意する経済的余裕なぞ十年前ならともかくいまの遠坂には存在しない。

誇りに掛けて絶対に参加し、そして優勝しなければならない聖杯戦争だがこのままではスタートラインにすら立てない。
彼女に残された手段は三つ、知り合いに頭を下げてでも触媒を手に入れるか、触媒なしで何が出るか分からないギャンブルに掛けるか、

あるいは―――――触媒のいらない例外の英霊を選ぶか。


          プロローグ

『もしもマスター全員がハサンを召喚しようとしたら』

[選択肢]
イ.イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの召喚理由
ロ.バゼット・フラガ・マクレミッツの召喚理由

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最終更新:2007年07月27日 23:16