742 名前: はじめてのさーう゛ぁんと ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2007/07/24(火) 21:30:59
八相の構え:気分転換に、公園にでも行こう。
得にやることもなく、昼近くまでぼんやりしていたが、とうとう我慢できなくなった。
「どっかに気分転換に行くかー」
さて、どこに行こう? ゲーセン、映画、喫茶店、デパート……金がねえ。
しょうがない、ここは一つ、金がかからない方法でいこう。となると……公園?
「マジかよ……ま、しょうがねーか」
俺はクソガキの家を出て、ぶらぶらと歩き始めた。
「へぇ……こいつは良い所じゃねぇか」
俺は適当に見つけたベンチに腰掛けて、深呼吸した。
煙草でも吸えば様になるのかもしれないが、生憎俺は嫌煙家。肺にも環境にも悪いからね。
目の前には、穏やかで広い川があり、こちらとあちらを赤い大きな橋が結んでいる。ここは、その橋の下辺り、川沿いにある公園。
子供を連れた母親や、ひなたぼっこをしている老人、大学生らしいカップルなど、様々な人がちらほらと視界に入る。その顔は――全員、笑顔。
その空気中にまで漂う暖かい感情を、周りの魔力《マナ》と一緒に、ちょっとだけ貰う。
(サーヴァントは、人間の源感情や魂を魔力に変換し、糧とすることができる。
源感情とは、人間が本来持っている感情、すなわち喜びや安らぎなどのことである。その感情が強ければ強いほど、サーヴァントにとってより良い糧となる。
故に、死の恐怖が一番効率的な糧となるのである。簡単に喚起させ、最も強い感情を放つからだ)
「っかしまぁ、俺も悪ぶってたつもりだけど……以外と善人だったりしてな?」
たはは、と頬を掻きながら、一人ごちる。『恐怖』よりも『喜び』の感情の方が、体にしっくりくるからだ。
でも同時に、『それは違う』という思いが沸き起こる。
俺は善人なんかじゃない。いや、善人になれっこない。もし仮に、俺が善人に見えるとしたら、それはきっと『奴』の――。
ゆっくりと、目を閉じる。
瞼《まぶた》の裏を見る、という擬似的な闇の中には、
かつての■が、
■■■を構えて--。
――。…………、…………?
「んぁ?」
間抜けな音が口からあがる。どうやら、眠ってしまっていたらしい。
「んぐ~~~……!」
立ち上がって伸びをすると、変な姿勢で固まっていた関節がばきばきと鳴った。
魔力量を見てみる。さすがに、少量の源感情と少量しか扱えない魔力《マナ》では、充分とは言えない。だけど、普通に『存在する』だけなら支障はないようだ。
空を見ると、夕暮れの一歩手前、という曖昧な時間だった。
「あー……帰るか」
俺はもう一度伸びをして、心底嫌だがクソガキの家へ……。
743 名前: はじめてのさーう゛ぁんと ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2007/07/24(火) 21:32:11
「なぁー、ちょっとぐらい良いじゃんかよー」
「あ、あの、急いで、ますから!」
爽やかな公園に相応しくない、下卑た感じの声と、怯えた声。そこには、典型的なナンパの構図があった。
女の子一人を、男が三人囲んでいる。
(マイナス一ポイント)
心の中で、ナンパの点数をつける。
「だからぁ、そんなに時間取らせないって言ってるじゃん」
「そうそう、俺達とちょっーとお茶飲んで、ちょっーとケー番交換すれば良いだけなの」
(マイナス五ポイント。赤点だな、こりゃ)
「本当に、急いでますから……それに私、携帯電話は持ってません」
(真面目だなー。こんなのに答えなくて良いのに)
「今時珍しいねー。あ、もしかしてお嬢様って奴?」
「マジかよ、ますます気に入っちゃったぜ!」
(マイナス十ポイント。補習確定)
野郎どもに見るとこなし、さっさと助けちまおう。俺は、無造作にその集団に近づいていく。
「本当に急いでますからぁ……!」
女の子が、男達の囲みを抜けようとする。
「ちょっ、待てよ!」
男の一人が、それを阻もうと手を伸ばす。しかし、その手は女の子を掴まず、肩を押すだけにとどまった。
だが。
「あぅっ!?」
女の子はバランスを崩し、倒れてしまう。
持っていたカバンが落ち、荷物が散乱する。
(……あ)
「ちっ、お前は黙ってついてくれば良いんだよ!」
業を煮やしたのか、男は女の子を掴みあげようとする。
その手を逆に掴み、捻りあげる。
「いててててて!! な、なにしや、ぎゃ……!」
「マイナス一億八千万ポイント。留年・落第通り越して、死刑だ」
捻りあげた男を突き飛ばして、俺は高らかに宣言する。
「はぁっ!? 何言ってやが、」
「まず一つ! ナンパの基本は『平等』! 女の子が一人ならこちらも一人、女の子が三人ならこちらも三人! 男が多かったら脅迫になっちまうし、女が多かったら余らしちまう! どちらも失礼だ!!」
「い、いきなり出てきて何を、」
「もう一つ! 俺らは女の子の時間を奪うのだから、それに見合うものを与えなければならない! こちらの尺度で『ちょっとだけ』とか言うな厚かましい! さらに! 相手が金持ってそうだから気合いが入る、というのはなってない! 『俺、その金で遊ぶんだ』ってヒモかお前はっ!?
そう、お前らに足りないのはぁ――平等、対価、誠実さ! そして何より――」
744 名前: はじめてのさーう゛ぁんと ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2007/07/24(火) 21:32:56
倒れて茫然としている女の子を指差し、
「――『思いやり』が足りねぇー!!!!」
ズバビシィッ!! と、決めてやった。
野郎どもは呆気に取られていたが、ゆっくりとその顔を憤怒に染めた。
「ふざけてんじゃねぇ!」
「こんのエエカッコしいが!」
「ぶっ殺すぞ!?」
野郎どもは愚かしいほどに真直ぐ、俺に向かってくる。
「あびゃっ!?」
一番手近にいた男を、右フックでぶん殴る。英霊舐めんなよ。
「てめえぎょっ!」
真直ぐ突っ込んできた男の顔に、無造作に片足を伸ばして、ぶつける。股下90cm舐めんなよ。
「ひっ……ひぃぃいぎぎゃべ!」
逃げようとした最後の一人。その背中に飛び蹴りをかます。あー……ナンパ師舐めんなよ?
最後の仕上げに、一人ずつ川に投げ込んで、視界から不愉快なものが消え去った。
「これでよし、と。
……大丈夫か?」
俺は倒れている女の子に、声をかけた。
その子は――。
究極奥義:栗色の髪、ほにゃっとした雰囲気……。「ゆ、由紀香ちゃん!?」
当たったら:おかっぱ風の髪、小動物のような目……。「ふむ、70点ってところか」
死ぬかも:黒髪さらさらロング、ゴスロリ服を着た……。「おお わかめ よ。 こんな ところで なにを しておる?」
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最終更新:2007年07月27日 23:19