68 名前: はじめてのさーう゛ぁんと ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2007/08/08(水) 21:38:51

パトロール:食器を洗って一息ついて、「――よし。見回りに行くか」木刀片手によいこらせ。





 今日の夕飯に使われた食器を洗い、良くすすいでから逆さまにして盆の上に置いておく。
 土蔵に行き、木刀と竹刀袋を持ち、

「――よし。見回りに行くか」

 最後に戸締まりを確認してから、家を出た。

 今日から、見回りをする予定だった。理由は簡単。身近な人達――三枝と氷室――に被害が及んだから。遠坂や美綴や慎二、桜に被害が及ぶかもしれないと思うと、いてもたってもいられなくなった。
 とは言え、犯人は間違いなく、ただの変質者ではなく魔術師。魔術師として半人前な俺一人が出しゃばったところで、何が変わるとも思えない。

「だけど、ただでやられるつもりもない」

 俺は、背中の竹刀袋を背負い直して、その中の木刀の感触を確かめる。いざとなったら、これと、俺に唯一使える魔術で……。

「っと。着いたか」

 目の前には、間桐家の家。
 別に、『マトウ』が犯人だとは思っていない。ただ後々考えたら、桜を送った方が良かったという後悔の念から、見回るならいの一番にしようと思っただけだ。見上げると、部屋の明かりがちょうど消えたところだった。
 どうやら、色々な意味で杞憂だったらしい。
 じゃあ、街の見回りでも行くか……。

「――ふむ。わしの家に何か用向きかね?」

 振り返った背中に、突如枯れ枝のような声がかかる。弾かれたように振り向くと、庭のところに老人がいた。

(い、いつの間に――!?)

 さっきまでは、確かに誰もいなかった。だと言うのに、老人は当然のようにそこにいた。

「む? 答えられぬのか? まさか『おし』でもなかろうて。疾《やま》しいことがある故の黙《だんま》りかの? さてはお主、この家に盗みに来た盗人じゃな?」

 驚愕に立ち尽くした俺を見て、何を勘違いしたのか、泥棒扱いされそうになる。

「あ、いや、違います! 俺は衛宮 士郎って言って、その……あ、怪しい者じゃないです!」
「エミヤ……士郎。
 おお、そうかそうか。お主が桜の言うておった『先輩』か」

 言って、呵々々《かかか》と笑う老人。
 と言うか、桜を知っている?

「おお、わしの名乗りが未だであったな。わしは間桐 臓硯《ぞうけん》。桜の祖父じゃよ」
「お祖父さん? 桜にお祖父さんがいたのか……」

 てっきり、桜には慎二しかいないものと思っていた。

「呵々々……まあ無理もあるまい。わしは見ての通り、普段は寝たきりの老体。己の醜態を晒《さら》すだけの身内を、進んで口の端に乗せようとは思うまい」
「そんなことは……!」

 何がどう『そんなこと』なのか。俺にも分からないまま、老人の――臓硯さんの淋しそうな声を遮《さえぎ》っていた。
 一瞬の気まずい沈黙。それを破ったのは、臓硯さんの笑い声だった。

「呵々々々々々々……いやいやどうして、桜の言うておった通りの小僧よ! 中々の好漢よの! 呵々々々々々々!」
「えっと、あの?」
「呵々々……。いや、失礼した」

 臓硯さんは、二、三度咳払いをすると、居住まいを正した。

「本来なら家に招き入れて、茶の一つでも振る舞うべきであろうが……時間も時間じゃし、そうもいかん。許せ、士郎殿」
「いえ、いいんです。俺もお邪魔するつもりはなかったので……夜分にすいませんでした。桜によろしくお伝えください」
「しかと」

 頭を下げあう俺達。そして、俺は今度こそ間桐邸を後にする。

「――そうそう、」

69 名前: はじめてのさーう゛ぁんと ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2007/08/08(水) 21:40:04


 その背中に、臓硯さんの声。

「このところ、夜になると慎二が出かけるのじゃが……行き先を知らんかね?」
「!?」

 再び、弾かれたように振り向いた。しかし、そこには老人の姿はなかった。狐に摘まれたような感覚。
 だけど、気になる言葉を残していた。

「慎二が毎晩出かけている?」

『マトウ』。
 矢が残したメッセージが、不吉なイメージとなって、俺の頭にこびりつく。それを振り払うように、俺は駆け出した足に力を込めて――。

「――おおお、おおおおお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」

 ドガアアアアァン!!

「!?」

 突然響いた、裂帛《れっぱく》の気合と破砕音。ともすれば聞き逃してしまいそうな小ささだったが、確かに聞こえた。

「くそっ、またなのか!?」

 音の聞こえた方へ、ほとんど勘で走り出す。音の具合から、ここから現場まで結構離れているだろう。もしかしたら、辿り着いたところで、死体を見ることになるかもしれない。

 だけど――。

 だとしても。それを黙って見過ごすなんて出来ない!
 俺は誓ったのだ。切嗣のような正義の味方になるのだと――!!

「……でも、何で……なんだ? 協力……」
「……お前こ……るんだ。……は……ぞ? なら、…………」

 言い争うような話し声が聞こえる。まさか、まだいるのか!!?
 俺は竹刀袋から木刀を取り出して、十字路を曲がる。そこには果たして――。

「遠坂!? 慎二も!?」

 学園のアイドルと、親友がいた――。

   【interlude out】





追求:「何でこんなところに? それに……」少年は、矢継ぎ早に質問してきた。
誤魔化し:「――かっ、カレイドルビーのプリズムメイクが、始まるわよ!!!!」凛ちゃんは、この場を何とか誤魔化そうとした。
ネタばらし:「よう、また会ったな、少年」俺は、親しげに片手を挙げた。

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最終更新:2007年08月10日 02:02