226 名前: 運命夜行  ◆ujszivMec6 [sage 恋人の逆位置] 投稿日: 2007/08/13(月) 06:00:02

「バゼット、とにかくアンタの事を藤ねえに説明しなきゃならん。
 だが、藤ねえは魔術の世界の事は知らないんでな、そこには注意しといてくれよ」
「彼女は一般人なのですね。わかりました」
「そこで、だ。オレが適当な説明をでっち上げるから、アンタはオレの話に合わせてくれ」
「ええ、よろしくお願いします」
「それと、一緒に来た遠坂って女、多分聖杯戦争のマスターだ」
「遠坂……冬木の管理者ですね?」

 ……あー、やっぱアイツ魔術師だったのか。しかも結構お偉いさんらしい。
 とりあえず今はそれは置いとくとして。

「……どうやらオレと士郎がマスターかなんかだと疑われてるらしい。
 誤解されると色々面倒なんで、アイツの前でも魔術の話はナシで頼む」
「ええ、了解しました」
 と、軽い打ち合わせをして、玄関を出た。

「あ、杏里! 誰なのよその女の人!」
「杏里、俺も藤ねえを押さえとくのは限界だ! はやく説明してくれ!」
「杏里! あんた藤村先生私たちに押し付けといて何やってたのよー!」
 オレたちが出た瞬間、藤ねえたちは限界を通り越して爆発した。

「お、落ち着けって、今説明するから!
 ……えーと、オレの彼女のバゼット・フラガ・マクレミッツさんです」

 ……その瞬間、藤ねえも士郎も遠坂も、ついでにバゼットに赤いのまで凍りついた。

「……ってなんだその反応! おかしいか!? オレが彼女作って家に連れてきたらおかしいのか!?」
「……いや、お前が彼女作った事というか、その女の人がお前の彼女だって言うのがおかしいだろ」
「そうよね、こんな美人で大人で外人なおねーさんが杏里の彼女なわけないじゃない」
「杏里くん、嘘ならもっとマシなのつきなさいよ」
 うわ、完全に信用されてねえ!
 何でだ!? 完璧な言い訳だと思ったのに!

「……それで、本当は杏里とどういう関係なの?……えーと、バゼットさんだっけ」
「はい、事故にあったところを彼に助けてもらったんです。恋人ではありません」
 うわ、バゼットにもきっぱり否定された!?
「事故に?」
「はい、その事故で左腕を失ってしまいましたが、彼のおかげでなんとか命だけは助かったのです」
「……そうだったんだ。杏里もたまにはいい事するじゃない」
「それで、この家を訪ねたところ、彼は士郎君を迎えに行くというので、彼が帰って来るまで留守を預かっていたのです。
 貴方を侵入者と間違えてしまったことは謝罪します。すみませんでした」
「あ、いえいえ、わたしの方こそお客さんとは知らずに、ごめんなさい」
 どうやらバゼットの説明で、藤ねえは納得したようだ。
 まあ、一部ぼかしてるだけでほとんど事実だからなあ。

 士郎、藤ねえ、遠坂が家の中に入ったところでバゼットに話しかける。
「バゼット、打ち合わせではオレの話に合わせるはずだったろ?」
「……アンリ。ごまかすならもっと現実味のある内容にしてください」
「現実味がないって、ひでえなオイ」
「実際、誰にも信用されてなかったではないですか。
 ……まあ、アンリの話でクッションを置いたことで、私の説明が受け入れられ易くなったという点では効果的でしたが」
 つまり、オレの話があまりに突拍子もなかったため、それなりに説得力のあるバゼットの説明はあっさり受け入れられたらしい。
 もしも、いきなりバゼットをオレが助けた話をしたとして、信じてもらえるかどうかは五分五分だっただろう。

227 名前: 運命夜行  ◆ujszivMec6 [sage 恋人の逆位置] 投稿日: 2007/08/13(月) 06:05:23

「それで、晩飯は鍋にするのか」
「ああ、今日は二人も客がくるなんて思わなかったし、
 もうあまり時間がなかったからな。下ごしらえだけでいい寄せ鍋にしたんだ」
 ふむ、鍋ならそれなりに豪華に見えるし、遠坂やバゼットも文句はないだろう。
 士郎が食材の下ごしらえをしている間に、オレはカセットコンロの用意をする。
 準備が整ったところで何もしてない女性陣を呼び集めた。

「やったー! お鍋だー!」
「ふーん、お鍋か。まあ客人に出す料理としてはギリギリ及第点ってところね」
「ナベですか……実際に食べるのは初めてです。なんでも二秒で食材が煮える素晴らしい調理法だとか」
「……藤ねえ、いい年して恥ずかしいから万歳はやめろ。
 遠坂、そっちから押しかけといてなんだその偉そうな態度は。
 バゼット、それは多分寄せ鍋じゃなくてシャブシャブのことだ。
 つーかお前らもちょっとは手伝え」
「……杏里、藤ねえはともかく遠坂とバゼットさんは一応お客さんなんだから『手伝え』はないだろ」

 さて、飯食ってる間に改めて状況を整理してみよう。

 まず、この冬木市で聖杯戦争が起こってるってのは間違いない。
 オレとしては、できればそんなややこしい事に関わりたくないのだが。

 さっきから何気なく肉ばっか食ってる遠坂は、魔術師で、バゼットによると冬木の管理者とかで、しかもマスターの一人。
 霊体化したまま遠坂の背後霊やってる赤いのは、クラスはわからないが遠坂のサーヴァントだろう。
 そして、コイツらはオレと士郎が聖杯戦争の関係者じゃないかと疑っているようだ。
 適当にごまかすか、はっきりとオレたちは聖杯戦争とは無関係だと言っとくべきか。

 シャブシャブ方式で生煮えの肉とか野菜ばかり食べているバゼットも、魔術師で既に敗北した元マスターだ。
 令呪とサーヴァントは誰かに奪われたとか言ってたっけ。
 ……そういえば誰にどんな風にやられたとか、奪われたサーヴァントはどんな奴だったとかってのは全然聞いてねえな。
 一応、聞いといた方がいいのかね?

 甲斐甲斐しくおさんどんやってる士郎は魔術師だが、マスターじゃないし、そもそも聖杯戦争の事を知らない。
 聖杯戦争の事知ったら、士郎の性格からして、また自分から首突っ込みに行くんだろうなぁ。
 ……でも、教えとかなくても勝手に巻き込まれそうな気もするんだよなぁ。
 聖杯戦争のこと、黙っとくべきか教えといて釘を刺しとくべきか。

 遠坂と対照的に堂々と肉ばかり食ってる藤ねえは、魔術師でもないし聖杯戦争のことも知らない……はずだ。
 実は親父の弟子でしたー、てなオチでもない限りはだが。
 まあ、そんなサプライズがあったら、いくらなんでも十年間の付き合いで気づくだろ、常識で考えて。
 とにかく、藤ねえは聖杯戦争に関わりのない一般人だ。

 さて、食後の行動だが―――

 節制の正位置:遠坂と赤いのを牽制しとこう

 隠者の正位置:バゼットからいろいろ話を聞こう

 正義の正位置:士郎にいろいろ話しとこう

 愚者の逆位置:藤ねえと遊ぼう

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最終更新:2007年08月14日 06:17