636 名前: Fateサスペンス劇場 ◆7hlrIIlK1U [sage] 投稿日: 2006/08/12(土) 23:30:51

二、ちょっと今回の旅行について大切な話があるんだ……。あとで俺の部屋に一人できてくれないか……。

 夜も更けてしばし。推理ものでこういう言動をする奴は大抵殺されちゃうんだけどなー、とかなんとか身も蓋もない事をベッドの上に腰掛けながら考えなてると、トントンと控えめなノックの音が響いた。

「ルヴィアか? どうぞ」
「失礼しますわ」

 期待半分、不安半分といったところだろうか。すすめられた椅子に座ったルヴィアは、そんな表情でおずおずと見上げてくる。

「あの、ミスタ・エミヤ……?」
「昼間話した旅行の件だけどさ」
「ええ、なんでしょう」
「ええと、さ……」

 さて、どう切り出したもののか。ルヴィアもこれで遠坂にまけず劣らず意地っ張りだから、寂しいなら一緒においでよ、なんて言えないからなぁ……。

「その、ミスタ・エミヤ。私からもいいですか」
「ん? ああ、もちろん。どうした?」

 ルヴィアは一つ深呼吸して続きを話した。まるで重大な決心をするかのように。

「もしも、もしもですよ。もしもあなたがどうしてもとおっしゃるのなら……、ええ、私としても考えなくもありませんわ」
「ルヴィア?」
「で、ですからっ。シェロさえ望めば一緒に行って差し上げてもよろしいと申してますっ」

 ルヴィアの言い回しはまるで子供のようで、俺はついつい吹き出してしまう。あんまりも楽しかったからしばらく意味の分からないふりをしてると、いじわる、なんて恨めしげな声で呟かれてしまった。

「悪い悪い。もちろんお願いするよ。こういうのは人数が多い方が楽しくなる」
「シェロっ!」
「うわっ、急に抱きつくなってっ」

 がばっと、そりゃあもう大胆に身を預けてくるルヴィア。勢いでベッドのスプリングがギシリときしんだ。胸の辺りに何か柔らかいものが二つも当たっている。その感触に一瞬で天国に行きそうになった。頑張れ理性。ファイトだ俺。この体勢で下半身の息子さんを目覚めさせてしまっては言い訳できない。

「……仕方ありませんわね。私としても不本意なのですが、他ならぬあなたの頼みですもの。ふふふっ」

 そんな俺の努力を知ってから知らずか、無邪気に頬をすり寄せながら妖しく囁くルヴィア。ちょっとは手加減してほしい。あんたは淑女じゃなかったのか。本当にどうなっても知らないぞ……。



「やだっ。そんな……、無理です。無理ですわ。入りませんったらっ!」

 狭い部屋に、ルヴィアの悲鳴が甲高く響く。こんなことは彼女にとって初めての経験らしくて、お互い汗だくになるほど苦労している。

「リラックスして、ルヴィア。力を抜いてくれ。もう一回行くから」
「はぁ……、はぁ……。嘘つき。優しくして下さるって約束だったのに。こんなの乱暴すぎますわ……」

 緊張のせいか強ばる体。白い肌はこれでもかと上気していて、瞳に浮かぶ涙がたまらなく愛しい。だからできる限り優しくしたいのだけど、どうしても無駄な力が篭ってしまう。それでも、それでも俺はルヴィアと……。

一、あきらめる
二、最後まで頑張る

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最終更新:2006年09月04日 16:32