477 名前: D two×three×four ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/20(月) 19:41:19
SHIT:いっつびゅーちほー。奇跡?片腕の男装麗人が軽自動車の横っ腹を蹴り飛ばした。
一閃。
ちかちかと俺を睨み付けていた鉄塊が、横からの衝撃に地上を二転と半分、腹を上にして倒れこんだ。
――――――‥‥‥‥。
確かな殺気を放っていた軽は、宛ら生き物が死ぬかのように、ふとその気配を散らしてゆく。
エンジン音は止み、右後ろのタイヤはごろりと外れ、無傷だった車体には幾つもの傷とへこみが浮いて出る。
最後に、小気味よい音を立て窓ガラスが割れ、それきり動かなくなった。
傷は、横槍による蹴り一つでできた物では無いように思われた。
もちろん蹴り飛ばされた横っ腹はクレーターのように凹んではいるが、
それ以外の傷はどうも、俺を追い掛け回した折についた『はず』のこすり傷などが目立つ。
先ほどまでは、新車のごとく無傷だったのに。なんでさ?
何より恐ろしいのは、割れたフロントガラスの向こう。
運転席に人影が、無い。
「おい、なあ。何だったんだよ?」
「‥‥‥何だろうな。」
まあいい。異常は、危険は去った。
先刻までそれが怪車だったとしても、今はどう見たって二度と動かないただの廃車だ。
もう野ウサギみたいに逃げ回る必要は無いのだ。
「なあ、アレ、何なんだよ?何で人が車を蹴り飛ばせるんだよ!」
‥‥‥無いのだ、と思いたい。
びゅうと吹き荒ぶ木枯らしが、間桐家の柱のかけら(辛うじて形を残していたそれは、先刻慎二とまとめてとどめを食らった)
をからからと転がしてあたりに散らす。
家主はすっかり縮み上がって俺の一歩後ろで喚いている。
額の辺りを切ったらしく、気付けば血まみれ。後で手当てをしてやろう。
「あー、ありがとう。助かった。」
片腕の女性は、無言で俺の後ろを睨み付けながら、慎重に一歩ずつ近寄ってきた。
俺よりも背が高く、短髪にスーツ姿。ともすれば男と間違えてしまいそうだが、きりりとした美貌と
その顔に特徴的な泣き黒子、大振りの片ピアスが上半身に視線をひきつける。
外国人らしく目鼻立ちのハッキリした、それはもうちょっと動揺するぐらいの美女だ。
「いえ、気にしないで下さい。それよりも。」
478 名前: D two×three×four ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/20(月) 19:44:33
立ち止まる。あるいは、彼女にとっての『間合い』は、この距離なのかもしれない。
スムーズに攻撃を加えられる距離。彼女から‥‥‥慎二まで。
「貴方の背後の『マスター』、こちらに引き渡していただきます。」
息を呑む。聞こえる。何も把握できない俺を残して、慎二には心当たりがあるらしく。
「此処は『マキリ』の根城だと聞いています。先の『アレ』が貴方の『サーヴァント』という訳では無さそうですが‥‥」
「オマエ、『サーヴァント』なのか‥‥?」
「? なあ慎二、そのマスターとかサーヴァントとかって何だよ?」
慎二は答えようとしない。
半身をずらして俺を完全に盾にして、「なんで僕の方に」やら「ついてない」やら呟いている。
長身の女は俺を透かすようにして慎二を睨み、おかしな素振りを見せれば今にも噛み付かんばかりでいる。
しかし、動かない。
互いに無言で牽制しあい、一歩も動かない。
「なあ。」
「よくわかんないけど。あんたは手荒な真似はしないよな?」
「スマートな取引を予定していますが、相手によります。」
「ならしないんだな。俺はしないから。」
「後ろの男、おとなしく引き渡すのですね?」
慎二が驚く。「衛宮?」
「いや、慎二はわたさないつもりだ。っていうか、話が読めないし。」
そうだ。うん。
学校を一歩でてから色んな事がありすぎて、もう何がなにやら判らない。
俺に必要なのは、説明だ。
俺が熱い友情を胸に、怖そうなお姉さんに向かってハッキリとNOを告げるか、
それとも如何せんお姉さんが怖いから、こんな奴でよければと悪友を売り飛ばすか、
この状況を少しでも掴んでから判断したっていいはずだ。そうだろう?
だから俺は。
さっきの事が気になる。:その『マスター』って何だ?あの車のこと、あんた何か知ってるのか?
今の事が気になる。:慎二、『マスター』、『サーヴァント』について吐け。きりきり吐け。
綺麗なお姉さんが大好きです。:俺、衛宮士郎って言うんだ。あんたは?
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最終更新:2007年08月21日 12:04