627 名前: D two×three×four  ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/23(木) 23:36:49

落とせない。 :笑顔で地下室を貸してやった。少し冷えるが構わないだろう?掃除でもしておいてくれると助かるのだが。




地下室。

其処には、凄惨な生きる死体の数々と、それらから発される呻き声が満たされ‥‥‥
ては、いなかった。

「‥‥コレはまた、酷く生活感の無い部屋ですね。」
「生活していないからな。」

丁度10年前の聖杯戦争で、師が無理矢理私に押し付けたアンティーク諸々を乱雑に放り込んである以外には
碌に立ち入りもしない、言わば倉庫のようなものだった。
たっぷり10年分積もった埃が歩くたびに舞い、息を吸う事もままならない。
「とても、その‥‥素敵な部屋だ、ええ。素敵な部屋です。」
「来客用の寝具などは置いていないのだ、申し訳ない。」
「お構いなく、いざと言う時の為、寝袋を持ち歩いています!」

む、しぶといな。
よっぽど追い出してやろうかと思ったが。自覚無しに迷える子羊を、一神父として放り出すわけにも行かず。
ここならば、三日と持たず勝手に出てゆくに違いない。
「む、コトミネ!貴方宝石魔術を嗜んでいるのですか?」
興味深げにきょろきょろと(彼女にとっては舞う埃などまったく問題にならないらしい。)見回している。
時折一人でほう。だのなるほど。だの‥‥
「煌びやかな宝石の数々。とても綺麗ですね!」
「私の物ではないし、私の趣味でもない。余りあさらないで貰いたいな、バゼット。」
「うぐ。」
なにやら一人で頬を染めているが、まあ私には関係あるまい。

「今日の所は休みたまえ。何か用事があれば、昼間は礼拝堂。夜は大方居間か寝室に‥‥」
「伺っても構いませんか?!」
「‥‥控えてもらいたい。特に昼は。」
「むぐ。」
なんだか放っておけば一日中纏い付かれるような、いやな予感がした。
「武運を、バゼット。期待している。」
「はい!」


いやな予感は当たるもので。飛び込みの居候は其れきり宿の手配をしようとせず、
私のものではないと判るや否や、遠坂所縁のあれやこれやを勝手に部屋の隅に追いやって。
どこから持ち込んだのだか、地下室を立派な工房へと造り替えていた。

「こ、コトミネ!何時から居たのです?女性の部屋にはノックをしてから入るべきでしょう。」

我が物顔で。

628 名前: D two×three×four  ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/23(木) 23:37:52

女が居ついて丁度三週目。
「おかえりなさい、コトミネ。外出とは珍しいですね?」
家に帰ると、似合いもしないエプロン姿の出迎えがあった。

「ああ、マキリの出来損ないが召還に失敗して屋敷を吹き飛ばしたらしくてな。
とても報告にいけるような状況でない、兄の方の怪我も酷いので立ち寄ってはくれないか、と連絡が入った。」
「それはそれは、お疲れ様です。
今紅茶でも淹れましょう、夕食が出来ています。それとも先にシャワーを浴び‥‥」
外食が気に入っている為に箸をつけたことが無いのだが、何故毎日二人分用意するのだろう。
今日も同じように丁重に辞退し、肩を落とす女に常々の疑問を投げかける。

「席が埋まるぞ、バゼット。一人で戦うつもりではあるまい?」
む、返事が無い。
「バゼット?」

「‥‥‥し、失念していた‥‥‥!」

馬鹿な。

「まさかとは思うが。よもや来たその日から何の進展も無しという訳では」
「日々の生活に追われていたのです!家事というモノは、存外に難しくてでですね。特に料理など」
「何を言っているか判らんが、今からでも遅くはあるまい。
さっさとサーヴァントを召還し(て、ここから出て行き)たまえ。」
「うぐう。ですが、その。‥‥どうも勝手がわからない。
教会にあった資料はどれも具体性に欠けた。始まりの御三家が秘匿しているようなのです。」

ふむ。
この女の『望み』にはそれなりに興味があったし、
「いやあ、のどかですね」等と言いながら花壇に水をやる姿も見飽きていた。
「少し待っていろ。前回の始終をまとめた書類がある。参考にするといい。
所で‥‥‥君はどの程度知っているのだ。聖杯戦争について?」
「はい。」



細部は省略するが。
始まりの三家が協力し合い、聖杯を呼ぶ儀式として作り出した聖杯戦争。
それは伝承として伝わる英雄を聖杯の力で呼び出し、
お互い戦わせることで、効率的に『聖杯の力』を溜め、同時に『聖杯を得る者を絞り込む』バトルロワイアル。
遠坂、マキリ、アインツベルンが『一体づつ、計三体』の英霊を使役し戦う――――

「待て、バゼット。君の持つ情報は古い。其れは第一回での話だろう?」
「はい。ですが、書類として残っているのは此れだけです。」

そう。
英霊を呼び出す聖杯戦争。其れは『過去の話だった。』

629 名前: D two×three×four  ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/23(木) 23:39:37

聖杯の神秘があれば、強大な力を持つ英霊をこの地に下ろす事も可能、
聖杯を満たす贄も二つ三つの魂で事が足りた。
だが。
時に一人で竜を討ち、時に一人で神に背き。
其れほどまでの力を持った、英霊という存在を。
「ただの魔術師ごときが奴隷として扱うなど、出来るはずも無かったのだ。」

第一回目の聖杯戦争は、失敗も失敗、見るも無残な結果となった。
三家が三家とも呼び出した英霊に背かれ、戦にすらならなかった。
(私達が根源へ到る為、どうぞ再び死んでください。‥‥頷く方がおかしいと言うものだ。)

「では、どうしたのです?」
「簡単だ。呼ぶモノの程度を落とした。
自分達の産まれるより以前、言わば『人間を産んだ』ような存在を使役しようというのが間違えだった。
つまり、使役しようというならば。
『人間が産んだもの』を呼び出せばいい。」

そう、それは英雄というほど大それたものではなく、そも『過去に命を持ったことも無い』。
物語の中の、架空の存在。
そのあり方は、英雄と非常に似通っていた。
時に一人で竜を討ち、時に一人で神に背き。そんな力を持っていながら、『今を生きる我々に圧倒的に従順。』
そう、彼らにとっては『人間こそが神なのだから。』

インスタントの英霊と呼んでも構わないだろう。
書物に、フィルムに、そして人々の心に。呼び出されるものの設計図はある。形にするのは至極簡単。
聖杯が『クラス』と呼ばれる枠に組み込み、能力を底上げしてやれば、
英霊と違わぬ働きをすることも可能だった。
ただ、その存在は英霊と比べ余りに軽く、『聖杯を満たすには七つの贄が必要だった。』

そうして、この冬木では。『創作物のキャラクターを呼び出し戦わせる』、聖杯戦争が続いている。
第二回や三回辺りでは映画や小説などの登場人物が呼ばれたが、
サーヴァントの強さは冬木の地での知名度に左右される事から、
最近では穂群原やその他小中学校に影響され、漫画やゲームなどのキャラクターの方が強いようだ。

「うう‥‥‥私はそういう娯楽には疎い。何を呼び出したものやら」
「前回のサーヴァントはどれもなかなかに優秀だった。
10年という時代のズレはあるものの、そう能力に変動は無いだろう。」
「ではこの中から選べと?」
「所縁のものなど、探せばいくらでも手に入る。」

渡された書物には、簡素に事の顛末と、参加者の名前、判り得る限りのサーヴァントの真名が記されていた。
「ほう、コトミネ。貴方も参加者だったのですか!」


ダメットさんの料理って:前回の聖杯戦争がどんなものだったか聞く。
なんとなく不味そうだよね。:面倒だしお勧めのサーヴァントを聞いてちゃちゃっと呼び出す。
(バゼット勝手に新妻状態。偏屈神父はいい迷惑です。
 >>618ごめん。でも死ぬって判ってて乙女バゼット書いてる俺だって辛いよ!)

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最終更新:2007年08月24日 19:02