680 名前: D two×three×four ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/25(土) 03:55:07
ダメットさんの料理って:前回の聖杯戦争がどんなものだったか聞く。
「今こうして、生きている。貴方は勝ち残ったのですね‥‥‥聖杯戦争を。」
簡素にまとめられた文字列の中に、目の前の男の人生の欠片が埋まっている。
そして過去、言峰綺礼が乗り越えた戦に。今度は自分が赴くのだ。
「‥‥‥素晴らしい。」
胸が高鳴る。それは戦を控えた高揚と、それ以外の何か。
私は、私は彼と共に立ち、共に駈ける権利を得た!
「何、勝ち残ったというには実感に欠ける。戦ったのは私ではないからな。」
「サーヴァントですか。いえ、それでも。
貴方の呼び出したサーヴァントだ。貴方の武器でしょう?」
ふう、と一息つき。
背で組んだ手、遠くを見つめるような眼差しで、訥々と語りだす。
『まるで信徒に対する神父のように。』
第四回、冬木の聖杯の存在が魔術協会やその他の魔術師達に徐々に伝わり始め、
その争奪戦は今までに無く熾烈を極めた。
特に始まりの三家は其々に『今度こそ』と意を決し、
マキリはキャスター(サモナー)として、『髪形を馬鹿にされると怒る学生服の青年』を、
アインツベルンはフリーランスの魔術師を雇い、只管に従順な『サーヴァントのサーヴァント』を、
そして遠坂は、聖堂協会と手を組み二体のサーヴァントを用意した。
亡き師の手には、ライダーのクラスで竜に乗り駈ける赤いツナギの土管工が。
(師が自信満々に召還したそれは、ちょっとした衝撃でさらっと死ぬ最弱のサーヴァント。
『99回生き返る』等という無茶苦茶な宝具を持ってはいたが、
内70程の死因は遠坂邸内ですれ違いざまに肩をぶつけた等だった。)
そして、言わば『召使を持つための召使』として参加したこの私の手には、
アサシン。そのクラスに似つかわしくないシルエットの、金属製の青い狸が。
681 名前: D two×three×four ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/25(土) 03:55:56
それはまったくの規格外だった。
聖杯によって呼び出されておきながら、『聖杯をも超える神秘を容易く使いこなし』。
(私には不思議だった。
戦争に参加するのも自分の意思でなく、聖杯に望む願いも無い。
その私の手に、何故こうも強大な力が授けられる?
従順なサーヴァントは答える。
「それはねぇ、きれい君。
君がまだ気づいていない、大きな願い事があるから、じゃないかしら。
そう、それは冬木の真っ白な聖杯じゃ、叶えられない願いなのかもしれないね。
『ぼくにしか、叶えられない』‥‥‥。うふふふふ。」)
圧倒。
選りすぐりの魔術師と選りすぐりのサーヴァント、
誰も彼も狸の前に『何の問題にもならなかった。』
冠るだけで完全な気配遮断を得る帽子。
千里を一歩にする扉。
時間を遡る船に、当たれば無条件で意識を失う光線銃。
桃色の受話器に向かい一言囁けば、どんな戯言も現実になる。
彼が、否。彼の『宝具』さえあれば、全てが『可能』。
それは聖杯戦争の『目的』を『手段』が凌駕したことに他ならない。
構造的欠陥。
「あんなこといいな、できたらいいな」感覚で存在する、言わば人の夢そのものが、
この世にあっていい筈が無かったのだ。
故に、どうしようもなく『世界から嫌われた。』
敵は最早アインツベルンの主従一組、聖杯の完成が迫ると同時に、
狸の体は急激に光を失った。
聖杯が、世界が、狸の存在を否定したのだ。即ち‥‥‥
「きれい君。こないだから言おう言おうと思ってたんだけど。
――――ぼくは明日、座に帰らなくちゃいけないんだ。」
「!!」
682 名前: D two×three×four ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/25(土) 03:56:44
目前に見える勝利を待たず、狸の体は透けてゆく。
出来る限りの魔力を送ろうとも、消滅の時は迫り来る。
「き、消えないでくれ‥‥」
「そういう訳にも行かないんだよ。
ぼくも、きれい君一人を残して消えちゃうのは心配だけど‥‥‥」
「っ‥‥‥!」
「きれい君?!一人でどこへ行くんだい、きれい君!きれいくーん!」
そうだ、勝利を待たずに消えそうならば、今すぐに勝てばいいだけのこと。
(私一人の力で『衛宮切嗣に勝たなければ』、ドラえもんが安心して座に帰れないではないか!)
敵は衛宮切嗣だけではなかった。奴の助手に、アインツベルンのホムンクルス、そしてサーヴァント。
途中で心臓を打ち抜かれた気もする。
それでも私は勝った。無我夢中だったのだ。
「きれい君、ここにいたのか!」
「――――ドラえもん、どうして」
「最後の夜だって言うのにきれい君が居なくなっちゃうから、探しに来たんだよ。
それよりも、その傷はどうしたんだい?!」
その時私は、息も絶え絶えに体は傷だらけ、額を切ったのか視界は朱に滲み、まともに前すら見られなかった。
「ドラえもん、ドラえもん‥‥私は勝ったのだ。
「私は一人で大丈夫だ。だから君は、安心して座に帰るといい。」
「きれい君‥‥‥!」
刹那。サーヴァント6体の魂を飲み込み、聖杯は満ちた。
聖杯は唯一つ、世界の望みを叶えるために動く――――
聖杯戦争はシステムに問題がある。
聖杯戦争は危険だ。だから。
『聖杯戦争を消せ、目撃者を消せ、この地をせ』!!!
「ドラえもん、ドラえも―――――ん!!!」
それは業火となり、全てを飲んだ。
町を人を燃やし尽くした炎が消える時‥‥‥第四回、聖杯戦争は幕を閉じた。
683 名前: D two×three×four ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/25(土) 03:57:34
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(注:この物語は神父による脚色が加えられており、フィクションです。実際の聖杯戦争とは一切関係ありません。)
「うう‥‥‥ひっく。いい話です‥‥‥!」
「‥‥‥(信じるのか。)」
~ただいまバゼットさんが泣いているので少々お待ちください。~
「要するに、余りに無茶苦茶なサーヴァントを呼び出すと呼び出すと扱いきれずに後が困る、という訳ですね?」
「うむ、なかなか察しがいいな。件の青狸も『人に仕えるもの』という立場があってこそああだが、
相手は意外性を売りにした娯楽。そうでないものなどいくらでも居る。」
「ほう。」
「そこで、だ。バゼット。君には前回『アインツベルンが呼び出したサーヴァント』を薦めよう。」
「クラス『サーヴァント』の『サーヴァント』‥‥‥!」
「まあ、あれは殊更従順なように出来ている。別のクラスで呼ぼうと支障はあるまい。」
資料をめくる。アインツベルンの項目、図説付きのそれは。
「あまり、強そうではありませんね。」
「確かに前回の聖杯戦争ではさほど奮わなかった。
しかしそのサーヴァントは、前回から今日までの『十年間』を何より味方につけている。」
「つまり、『十年前』とは」
「そう、『知名度が段違い』なのだ、バゼット。」
一つ騙されたと思って召還してみろ。と、続けるつもりだった。
しかしバゼットはその間も開けず、己が工房にしかと描かれた魔方陣の上に、
先ほどまで読んでいた資料のうち1ページをそっと置く。
成るほど、サーヴァントとして呼び出されたその身を『直に写した写真』の載る一枚。
此れほどの所縁の品はそう無いだろう。
「閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ。唯繰り返す都度に五度――――」
バゼットに迷いは無かった。
神父が呼べというなら呼ぼう。神父が確かというなら信じよう。
何処に疑う理由があろうか?私が呼ぶサーヴァントは、『彼と共に戦うためのもの』。
彼女の決意は強く、それ故に。
彼女の想いは初めて、『言峰綺礼に伝わった。』
684 名前: D two×three×four ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/25(土) 03:58:38
「それが君の願いか。」
「――――唯満たされる時を――――なんですって?」
「つまらないな。バゼット=フラガ=マクレミッツ。」
エーテルがその小柄な体躯を編み上げたその時。
召還者から切り落とされた腕を確かに掴んだ神父は継げる。
「主替えに賛同しろ、■■■■■。」
「何故です、コトミネ。何故‥‥‥」
『戦うこと自体が目的』?彼女は、武器を持つに値しない。
別段欲しかったわけでもないが、兎に角そう、判断した。
「気が変わったというのが適当かな。」
「悪い夢だ。嗚呼、どうか嘘だと言って欲しい。『貴方が望んだならば、譲ったのに』‥‥!」
「君の、そういう所が。『実に不快』だよ、バゼット。」
「‥‥‥ッ、何故!」
直ぐに始末してしまってもよかった。
然しだ。教会の中、傷を抱え泣く女性を前にして、優しい言葉の一つもかけないのでは、神父としていかがなものか。
「最後に、何か?」
「コトミネ‥‥‥」
涙に濡れる瞳が私の冷笑を映す。それでも尚、縋るように、祈るように。
「『貴方は私を裏切らなかった。』
『貴方は私の敵ではなかった。』――――教会に属する貴方なら、出来ないことでは、無い。」
ふむ。
「君はつくづく最後まで、判らない奴だな?」
そも、記憶操作というものは。
一般人相手ならば簡単なれど、少しでも魔術に抵抗を持つ魔術師相手に、そう旨くいくものではない。
『記憶を差し出されでもせぬ限り』。
685 名前: D two×three×four ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/08/25(土) 03:59:42
意識を失った彼女に、(『敵ではない』のだからこそ)傷の手当てをしてやった。
少々気まぐれを起こして師の残した宝石を仕込んでみたが、治癒に支障は無く、以外にも勘付かれもしなかった。
適当に人が住めそうな場所を見繕い寝かせてきたのだが、
どう言うわけか目を覚ました彼女は再び教会を訪れ‥‥‥
「どうやら『敵に不意をつかれ』、サーヴァントを失ったようなのです。
ですが私は『戦いたい』。」
何か良案はありませんか?そう問われた。
親切な監督者は笑顔で答える。
「サーヴァントを持つ魔術師を仲間につけるか、サーヴァントを『召還しうる』魔術師を仲間につけるか、
‥‥‥『令呪ごと奪うか』、だろうな?」
追憶は終わる。
金色の鉢は、つい先刻まで、『バゼットの見る景色』を湛える水面にうつしていた。
然し今、それが写すのは白い天井と照明のみ。
「『右腕を奪った』段になって、つまらん感傷に浸るからだ、バゼット。」
嗚呼、『死に逝く人間の最後の景色』が見られるとは、中々に貴重な体験をしたものだ。
深夜を回り、丘の上の教会に。神父は一人、くつくつと知人の死を哂う。
神父自重しろ。:その頃、衛宮邸では。
むしろ作者自重しろ。:その頃、遠坂邸では。
(神父が暴走したもので選択肢を入れる隙が無く、長くなった。反省はしている。
参考にしようと思って帰ってきた青狸のコミックス読んだら目から変な汁が出たよ!)
以下3票で決。どのサーヴァントのことを詳しく知りたい?
アーチャー(ガンナー):衛宮さんとこのレヴィちゃん。
不明一号:ワカメの忘れ形見、赤いあにまる。
ライダー:選択肢で女性だってバレちゃったぜ!
不明二号:士郎が最初に出くわしたあの人。男。
不明三号:マキリはまだまだ終わらないぜー!
(今後の展開に、微妙に関係するような気がしなくも無いよ!
ぶっちゃけアンケートだね!)
投票結果
最終更新:2007年08月26日 23:08