393 名前: Fate/■■■■■  ◆JtheEeHibM [一日目・言峰教会 - 二人の言峰 sage] 投稿日: 2007/07/04(水) 15:05:28


  ちょっとぐらい遅くなっても大丈夫か。
  藤ねぇはまた文句を言い出すかもしれないが、お土産としてたい焼きを差し出せばなんとか治まるだろう。
  ……少しは、はやてにプチ復讐されるという『同居人』の心配もあるのだが。

 「ならお言葉に甘えて。
  みやげ物は家でも喜ぶ人がいるし、甘いものもそう嫌いじゃないしな」
 「問題なしやな。ほな、一名様ごあんなーい」

  少女に先導され、教会の扉を押し開けた。



  広い、荘厳な礼拝堂だった。
  これだけの席があるということは、普段から訪れる人も多いということなのだろう。
  これほどの教会を任されているのだから、ここの神父はよほどの人格者と見える。
  ……ただ。ここに来るまでにはやてから、悪党だの性悪神父だの言われていたのが非常に気にかかる。

 「なあ、はやて。言ってた同居人ってここの神父さんだよな。
  一体どんな人なんだ」
 「ん~、どない言うたらええんやろ。
  話せば長うかかるし、会うたほうが早いかも知れへんな」

  何だか会う前から不安にさせる返事だ。
  はやての方はさっさと奥に向かっているが、こっちはもう少し確認したいことがある。

 「あと、何で『同居人』なんだ?」

  そう、それも気にかかる。
  普通に考えればそんな表現はせず、父親とか、穿った表現でも保護者ぐらいになりそうなものだ。

 「ああ、それな? 深い意味はあらへんよ。
  綺礼は一応保護者なんやけど、家事全般わたしが受け持っとるし。
  どっちかっちゅーとパートナーとかダメ亭主とかの方がしっくりくる感じやな」

  ひどい言い様だ。
  だがはやてが楽しそうに説明するのを見て、少し不安は解消した。
  愚痴ってはいるが、その関係が気に入っているのだろう。
  ……切嗣(オヤジ)が生きていた頃の俺も、こんな感じだったのだろうか。
  相手の神父さんもそう悪い人じゃないだろう。

 「キレイって言うのか、その人」
 「せや。
  名前は言峰綺礼。わたしの保護者で、こうなったらあかんっちゅー大人の極端な例や」

 「―――そっくり返そう。お前こそは放蕩娘の象徴だ」

  かつん、という足音。
  俺たちが来た事に気付いていたのか、その人物は祭壇の裏側からゆっくりと現れた。

 「勝手に出て行ったと思えば、変わった男を連れてきたな。
  ……大方、買いすぎた荷物を運ぶ手伝いといったところか」
 「ただのお手伝いやのうて、ちゃーんとしたわたしのお客さん。
  護衛も兼ねて送ってくれたお礼にお茶にさそったんや。あ、綺礼も一緒に参加やで」
 「ふむ。茶会をするような趣味はないが、一応その少年には感謝しなくてはな」

  綺礼と呼ばれた神父は、ゆっくりとこちらに視線を向ける。

 「――――」

 ……知らず、足が退いていた。
 ……何が恐ろしい訳でもない。
 ……この男に敵意を感じる訳でもない。
 だというのに、肩にかかる空気が重くなるような威圧感を、この神父は持っていた。

 「私はこの教会を任されている言峰綺礼というものだが。
  君の名はなんと言うのかな、親切な少年よ」
 「―――衛宮士郎」

  腹に力を入れ、重圧に負けまいと神父を睨む。
  結果として返事は乱暴なものになってしまう。
  だが反応は意外なものだった。

 「衛宮――――――士郎」
 「え――――」

  背中の重圧が悪寒に変わる。
  神父は静かに、何か珍しいモノに出会ったように注視してきた。

 「な? ちゃーんとおもてなしせなあかんお客さんやろ?」
 「なるほど、確かにそうだ。
  ――――礼を言う、衛宮。よくはやてを連れてきてくれた。
  君がいなければ、アレは数日は帰ってこなかっただろう」
 「……さすがに帰っては来るだろ」

  重い空気に抗って、どうでもいいところに言い返す。
  そうでもしないとこのまま呑まれそうな気がしてならない。
  いや、それより。


 【Foster】:この二人は親子なのか?
 【Sins of the Past】:なんで俺の名前でそんなリアクションを取るんだ?
 【Show and Tell】:言峰家の教育方針に物申す!

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最終更新:2007年08月24日 19:25