493 名前: Fate/■■■■■ ◆JtheEeHibM [sage 一日目・夜の帰宅 - 慎み深く ~ 白い幼女] 投稿日: 2007/07/09(月) 13:25:43
――――俺はもう、『お守り』は持っている。
せっかくの申し出だが断っておこう。
「いやいい。お守りなら一つ、思い当たるのがある。
気持ちだけ受け取っておく」
「なんや、残念やな。面白いもんもあったんやけど」
はやてはちょっと残念そうだ。好意を無碍にするようで、少し心苦しい。
……けど、教会の面白いお守りって一体何だ?
「ま、あるんやったらええわ。
ちゃんと持ってなあかんよー。最近は物騒やから」
「ああ、気をつける。はやても遠くまで一人で出歩いたりするなよ」
「分かっとるって。遅なったらまたお願いな」
「その時にはな」
「また来てやー」
礼拝堂を後にする。
外はとっくに暗くなっていた。
いつまでも居るわけにもいかない。早く戻るとしよう。
夜の町並みを行く。
時刻は夜の八時前ぐらいだろう。
人通りが減る時間帯ではあるが、それにしても外はあまりに静かだった。
「……やっぱり、これは」
深山町の方でも事件が起こっているせいだろう。
つい今朝も、押し入り強盗が発生したばかりだ。
人通りが無いのも、学校の下校時刻が六時になったのも、その辺りが原因か。
「ほんとに物騒な事になってきたな」
これじゃ夜に出歩こう、なんて人が減るのも当然だ。
桜を一人で帰らせるのも危なくなってきた。
藤ねえはともかく、桜の家は反対側の住宅街にある。
今日からでも、夜は送っていかなくては―――
「……ん?」
一瞬、我が目を疑った。
人気が無い、と言ったばかりの坂道に人影がある。
坂の途中、上っているこちらを見下ろすように、その人影は立ち止まっていた。
「――――」
今日は年下の子に縁のある日だろうか、なんて益体のないことを考えた。
銀の髪をした少女はニコリと笑うと、足音もたてず坂道を下りてくる。
その、途中。
「早く呼び出さないと死んじゃうよ、お兄ちゃん」
おかしな言葉を、口にしていた。
《――――年下にはお兄ちゃんって呼ばせたいとか――――》
《――――その、己の底にある嗜好を満たしたいのなら―――》
「――――っ!!」
振り返ってみても、人影は見当らなかった。
まるで、始めからそんな少女など居なかったかのように。
「………」
疲れているんだろうか?
それとも、あの神父の言葉が思った以上に残っているのか。
どっちにしろ、ここで呆けていたって仕方がない。
さっさと帰って気分を切り替えよう。
494 名前: Fate/■■■■■ ◆JtheEeHibM [sage 一日目・夜の帰宅 ~ 夕食後 - お疲れ様でした] 投稿日: 2007/07/09(月) 13:27:32
居間では、すでに夕食が終わりかけていた。
藤ねえの皿はほぼ全て空っぽで、左手は何杯目かのおかわりを差し出している。
推測するに、メインはホワイトソース系か。
「お帰りなさい先輩。お先に失礼して……って、わぁ」
桜が気付き、途中で俺の手荷物に目がいったようだ。
「すごい量ですけど……どうしたんですか」
「ちょっと荷物運びを手伝ったら、お礼にって」
「むむっ、なんかアンコの匂い。
ねー士郎、その中身なに?」
さっそく気付く冬木の虎。
というか藤ねえ、匂いで感づくのはどうかと思うぞ。
「たい焼き。たくさんあるから食後にな」
聞くかどうか五分五分だが、一応言っておく。
まあ、先に食べられても俺の夕食の無事につながるのでいいだろう。
「んー、わかった。あ、お帰りー士郎」
「ただいま」
挨拶よりもさきに食べ物なのが、藤ねえらしいといえばらしいところか。
―――さて。早く手を洗って、食卓に加わるとしよう。
夕食を終えて一息ついたら、時計はもう九時を指すところだった。
物の少ない自室を見渡す。
夜の鍛錬までは、まだ時間がある。
「何をしたもんかな」
ここは―――
【Drake Familiar】:桜を送っていく。
【Slumbering Tora】:藤ねえと遊ぶ。
【Lull】:大人しく休む。
投票結果
最終更新:2007年08月24日 19:31