570 名前: Fateサスペンス劇場 ◆7hlrIIlK1U [sage] 投稿日: 2006/08/12(土) 13:29:12
ここは……、どこだろう。見渡す限り広がる川岸。キラキラと光る水面。どこからか香しい香が立ちこめ、得も言われぬ弦楽が聞こえる気がする。空を覆う雲の切れ間からは、黄金の陽光が差し込んでいた。
「ちょっと、やりすぎですわよ! あんなにガンドを撃たなくても!」
「なっ、あんたのバックドロップがとどめになったんじゃない! って、ああしっかりしなさい士郎!」
「そっ、それはシェロがいきなりあんな事を言い出すから……。きゃ! 泡吹いてますわ、泡を!」
向こう岸から、俺を呼ぶ声が聞こえる。誰だろうか。一番懐かしい誰かの声と、ずっと愛してた彼女の声。どんな事をしても合いたかった人たちがそこにいた。頬を涙がつたっていた。
「渡りたいかい? なら、六文だ」
嗄れた声に振り向くと、渡し守らしいじいさんが船を用意していた。
「六文?」
「おうよ。兄ちゃん向こう岸に行きたいんだろ? それじゃ六文だ。昔からここの渡し賃はそう決まっていてね」
確かに渡りたいのはやまやまだけど、ポケットを探っても日本の、それもそんな昔の通貨はでてこない。
「じいさん、ポンドしかない」
「なんだい。外国の金しかないんかい。それじゃあ6ペンスでいいよ。どうする?」
「シェロ! やだっ、だめですわシェロ! あなたにはまだ何の気持ちも伝えてませんのに!」
「なにやてるのよ士郎! これだけやってるんだからさっさと回復しなさいよね! あんたがいないと、わたし……っ」
向こうで親父が笑っていて、セイバーが嬉しそうに手を振ってる。どうしようか。今渡ると誰かがどこかで悲しんでしまう気もするけど、それでも俺は……。
一、渡る
二、値切る
三、渡らない
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最終更新:2006年09月04日 16:28