17 名前: Fate/■■■■■  ◆JtheEeHibM [sage 二日目・夜 - 運命の夜(鐘)④a] 投稿日: 2007/08/07(火) 13:38:15


  何か、よくわからないモノがいた。
  青い男と赤い男。
  時代錯誤を通り越し、もはや冗談とすら思えないほど物々しい武装をした両者は、その見た目に違わず本当に斬り合っていた。

 「――――――――」

  現実離れした動きに、意識がついて行かない。
  凶器の弾けあう音が、視覚できぬほどの遣り取りが紛う事なき殺し合いだと知らせてくる。
  ただ、アレが人間ではない事だけは一目で判った。
  魔術を習っていなかったとしても、あんなものは見れば判る。
  あんな動きは人間に出来るものじゃない。
  つまるところ、あれは関わってはいけないモノだ。


  向こうの殺気に身動きが取れずにいるうちに、剣戟の音は止んでいた。
  二つのソレは、距離を置いて対峙している。
  終わったのかと安堵した瞬間、

 「っ………………!」

  先にも増して、強烈な殺気が放たれた。

  青い方に、魔力が流れ込む。
  吐き気がするほどの魔力が、手にある槍に凝縮されていく。

 「…………っ、は――――」

  ……殺される。
  赤いヤツは殺される。
  あれほどの魔力を使って放たれる一撃を、どうやって防げよう。


  ―――死ぬ。
  ヒトの形をしたものが、目の前で殺される。
  それは。
  見過ごしても、いい事なのか。


  その迷いのおかげで、意識がソレから離れる。
  硬直していた身体が緩み、大きく息をついた瞬間。

 「誰だ――――!」

  青い男が、隠れているこちらを凝視した。

 「…………っっ!!」

  青い男の体が沈む。
  それを見届けることなく、足は走り出す。
  逃げなければ殺されると、無意識のうちに理解していた。

18 名前: Fate/■■■■■  ◆JtheEeHibM [sage 二日目・夜 - 運命の夜(鐘)④a] 投稿日: 2007/08/07(火) 13:39:08


  どう逃げたのか、気が付けば校舎の中にいた。
  自分の行動に舌打ちする。
  なんで人気のない方へ、しかも校舎の中なんて逃げ込んだのか。

 「ハァ――――ハァ、ハァ、ハ――――ア」

  追ってくる気配はない。
  聞こえるのは階段を登る自分の靴音だけだ。

 「ァ――――ハァ、ハァ、ハァ」

  なら、これでようやく止まれる。
  限界を超えて走り通しだったせいで、酸素がまるで足りていない。
  軋む心臓をなだめつつ、廊下のかどで立ち止まり、やっと一息つくことが出来た。

 「……ハァ、ぁ……なんだったんだ、今の……」

  校庭で、ヒトに似た、ヒトではないモノが争っていた。
  思い返してみても、それ以上のことはわからない。
  ただ、見てはいけない光景だったのは確かなことだ。
  あの場に居合わせたこと自体が不幸だが、他に誰もいなかったのは不幸中の幸いだろうか。
  もし氷室なんかが居合わせたりしていたら―――

 「そうだ、氷室は」

  言ってから、思い出す。
  陸上部の部室のほうに行ったから、校舎からは離れているはずだ。
  直接アレを見てさえいなければ、ひとまずは大丈夫だろう。
  ここに逃げ込んだのは失策だったが、彼女を巻き込むようなことにはならずに済んだらしい。

 「大丈夫、か。とりあえずこれで―――」

 「追いかけっこは終わり、だろ?」

  その声は、目の前から、した。

 「よぅ。割と遠くまで走ったな、お前」

  そいつの、親しげな声を聞いて。
  漠然と、これで死ぬのだな、と実感した。

 「すぐに楽にって思ったんだが、変な注文が来ちまってな。
  多少長引くようにしろ、だとよ。
  お前に愚痴っても仕方ねぇとはいえ、趣味の悪い話だよな」

  槍が無造作に引き上げられる。

 「運が無かったな、坊主。ま、見られたからには死んでくれや」

  何の抵抗も無くあっさりと、男の槍は、衛宮士郎の頸を切り裂いた。


  【Broken Fall】:Interlude 『落下中断』
  【Deliver】:Interlude 『救難』
  【Time Stop】:Interludeをスキップします

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最終更新:2007年08月24日 19:48