196 名前: Fate/■■■■■  ◆JtheEeHibM [sage 二日目・夜 ~ 帰宅 - もういちど] 投稿日: 2007/08/12(日) 11:24:47


  こんな時間だし、氷室を家まで送らないと。

 「氷室、お前の家って、どこだ?」

 「私の家、か? 新都の方だが………」

 「バス、だよな。バス停からは、遠いのか」

 「……待て衛宮。何の話だ」

 「なに、って……送らないといけないだろ、氷室を」

  バスから降りても夜道を歩かないといけないようなら、ちゃんと同伴しなければなるまい。
  そう思っての質問だったのだが、

 「………………はぁぁ……………」

  ずいぶんと深刻そうなため息で返されてしまった。
  …………なんでさ?

 「………あのな。
  私が衛宮を送るならともかく、病人が『家まで送る』などと、なにを考えている。
  そもそも、そんな血塗れのままで新都まで行ったら、途中で絶対に職務質問に遭うだろう」

  それは、確かにそう、だけど。

 「動転していたから119番こそしていないが、普通に考えるなら救急車を呼ぶのが妥当では……」

 「―――いや、それはまずい」

  氷室の提案を遮る。
  これは魔術絡みの話だ。目立つわけには行かない。
  だが。事情を知らない氷室が、それに納得してくれるかどうか。

 「そうは言うがな。そんな格好のままではうかつに出歩くこともできんぞ」

 「………まずは着替え、だな」

  新都に向かう前に、一度家に寄らないといけないか。
  この格好のせいで通報なんてされたら、送られる方の氷室もいい迷惑だろう。

 「悪い、一度俺の家に寄って、それからになる。
  遅くなるけどいいか?」

 「遅くなるも何も………本当に送るつもりか?」

  うなずく。
  氷室はわずかに考えるような様子を見せた後、

 「……確かに、ここに居ても始まらんな」

  ひとまずこの場を離れよう、と同意してくれた。




  家に着いたときには、時刻は十時を回ったあたりだった。
  具合が悪く始終ゾンビのような足取りで進んだせいで、いつもよりずっと時間がかかってしまった。
  屋敷には誰もいない。
  桜はもとより、藤ねえも帰った後だ。

 「着替えてくるから、居間の方でゆっくりしていてくれ」

 「ああ、そうさせてもらおう」

  とりあえず氷室を居間に通して、廊下に出る。
  自分の部屋まで来ると、安堵からか、壁に寄りかかって座り込んでしまった。

 「―――はあ、ぁ……」

  頭痛と目眩が絶えない。
  血の巡りが悪いのか、頭がうまく回らない。
  ――――いや、巡りが悪いどころの話じゃない。
  確かに一度、死ぬほど血が流れ出たのだ、足りないのは当たり前だ。

 「……殺されかけたのは本当か」

  それも違う。
  殺されかけたのではなく、殺された。
  それがこうして生きているのは、誰かが助けてくれたからだ。

  意識を手放す直前のことを思い出す。
  視界は暗くなり、音もほとんど聞こえなくなっている状態で、誰かが現れた。
  何を話していたのかもはっきりしないが、二人の女性の声がしていた気がする。

 「……誰だったんだ、アレ。礼ぐらい言わせてほしいもんだけど」

  あの場に居合わせた、という事はアイツらの関係者かもしれない。
  それでも助けてくれた事には変わりはない。いつか、ちゃんと礼を言わなくては。

197 名前: Fate/■■■■■  ◆JtheEeHibM [sage 二日目・夜 ~ 帰宅 - もういちど] 投稿日: 2007/08/12(日) 11:25:43


 「それで、アレの事だけど」

  赤い男と青い男。
  見た目は人間だったが、アレは人ではないと思う。
  正体なんてまるで見当が付かない。
  だが問題はそこじゃない。

  ……殺し合いをしていた二人。
  ……近所の家に押し入ったという強盗殺人。
  ……何かと不吉な事件が続く冬木の町。

 「………………」

  それだけ考えて、判ったのは自分の手には負えない、という事だけだ。
  ……知らず、胸元に手が伸びる。
  縋るように、胸ポケットの弾を掴む。

 「衛宮? 終わったか?」

  弱気になりかけていた思考が、廊下からの声で遮られた。

 「―――すまん、まだだ。どうかしたか?」

 「いや、遅いからまた倒れてはいないかと思ってな」

  思えば、部屋に入ってからは座り込んだまま動いていない。
  心配をかけてしまったらしい。

 「悪い、考え事してた」

 「いや無事ならいい。居間に戻ってるぞ」

  それだけ言うと、足音は遠ざかっていった。

 「―――よし」

  気合を入れて立ち上がる。
  血で汚れた制服を脱いで、私服に着替える。
  もう使えなくなった上着を捨てる……前に、ポケットから『お守り』を取り出しておく。
  今起こっている事とか、自分に何が出来るかとか、そんなことはひとまず後回しだ。
  まずは、氷室を無事に帰すことを考えなければ。



  居間では、氷室がテレビをつけて座っていた。
  番組を見ているのではなく、ただ流しているだけといった感じだ。
  声をかけようとしたところで、


 【Jaded Response】:「ああ、済んだのか」 先に氷室が振り返った。
 【Misinformation】:氷室が手にして、眺めているモノが目に入った。
 【Intruder Alarm】:突然、天井の鐘が鳴り響いた。

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最終更新:2007年08月24日 19:52