874 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2007/09/01(土) 20:05:25


「え?」

 最初に感じたのは、音。
 まるで、太い木の枝を無理矢理へし折ったような、嫌な音が教会の中に響いた。
 次に、背中にものすごい衝撃が走った。
 わけもわからないまま、前のめりに、冷たい床に倒れこむ。
 一体、何が起きたのか……分からないまま、身体を起こそうとして……。
 ……そして、一番最後に、想像を絶するような痛みが私に襲いかかってきた。

「あ……あああああああああああああ!?」

 身体を支えていた腕が崩れ、もう一度床に這い蹲る。
 痛い。
 痛い。
 背中が、燃えるように痛くてたまらない!
 一体何が起こったの?
 なぜ、こんなに背中が痛いの?
 わからないまま痛みに悶えていると、あの男の声が聞こえてきた。

「ほう。
 便利なものだな、人形とは。
 片翼をもぎ取られても、一滴も血が流れんとは」

 え?
 ……今、あの男は、なんて言った?
 強張る身体を無理矢理動かして、頭を地面から起こす。
 後ろを見るのが怖い。
 見るのが怖いが、振り返らずにはいられない。
 恐る恐る、肩越しに背後に視線を送って……。

「い……っ!!」

 無い。
 翼が、無い。
 私の、黒い翼が、片方、根元から、ごっそりと…………!!

「いやああああああああああああああああああっ!!」

 叫ぶ。
 より一層、鮮烈になった痛みと、際限ない奈落のような絶望に。
 私の翼が。
 私の翼が。
 私の、翼が……!!

「さて……どうする、雪華綺晶。
 恐らくもう飛ぶことは不可能だろう。
 早く止めを刺してやるのが、慈悲だと思うが」

 男が何か喋っている。
 その内容を理解するより早く、私の意識は――


α:怒りで白熱化した。
β:ショックで途絶えた。
γ:恐怖で埋め尽くされた。

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最終更新:2007年09月01日 23:10